第6話 お稲荷さん……?
先に申し上げます。
この話は何も怖くないです。
幽霊もお化けも何も出てきません。
面倒でしたら飛ばしちゃってください。
母方の祖母の家は代々農家で、田舎の大きなお家です。
我が家は貧乏でして、長期休暇の折にレジャー施設なんてものには連れて行って貰えなかったので、夏休みだのの長期休暇は必ずと言う程祖母の所に行きました。
畑、田んぼ、柿や栗の木、近所の神社、先祖のお墓。
私が住んでいるのは関東平野ですが、祖母の家のあたりは低い山もあり、家もまばらで、気温も違います。
幼い私からすると、祖母の家は別世界でした。
サマーウォーズという映画がありますが、あんな感じのイメージです。
法事と言うと大勢の親戚が集まる、そういう大きな家です。
ちなみに祖母はまだ健在で、長生きして欲しいです。
前置きが長くなってしまいました。
祖母の家の裏手に回ると、小さなお社が祀ってあり、私の記憶が正しければ、小さなお狐様のお人形が二つ、飾って在りました。
記憶の中では、ごく小さな鳥居もありました。
私は立ちションをしようとする幼い従兄弟に「神様が居るからここでするんじゃない!」と怒った覚えがあります。
大人になって思ったのが、
「祖母が亡くなって空き家になってしまったら、お稲荷さんをお返ししないといけないな」
という事でした。
小さなお狐様のお人形は、稲荷神社の御神体というのもその頃には分かっていました。
そうすると、お社のお世話が出来なくなるのは良くない。
あれは何処の神社から分けてもらった神様か、祖母は分かるかしら。
祖母はほぼ一人暮らしです。
まだ元気なうちに確認しないといけません。
分からなかったら遠いけども、伏見稲荷にお返ししていいか聞くしかないかな、神社さんに電話してみようかな……
そこまで考えていました。
コロナ禍が少し落ち着いて、緊急事態宣言も解除された頃、私は夫と母と一緒に、祖母の家に行きました。
大人になるとどうしても疎遠になってしまうもので、祖母に会ったのも従姉妹の結婚式以来でした。
幸いお元気で、ほっとしました。
私はお土産の他に、お墓に備えるお花とお榊を持ってきていました。
生憎の強い雨で、お墓は祖母宅の近くに住んでいる叔母が後日行ってくれる事になりました。
仏壇にお線香をあげて、私は雨の中、家の裏手のお稲荷さんにお榊をお供えしに行きました。
ありませんでした。
何も無かった、という訳ではなくて、記憶と全く違いました。
鳥居も無く、簡素な木製のお社の様なものに、棒に括り付けた
本当にそれだけ。
お稲荷さんはありませんでした。
私は「あれ?お返ししたのかな」と思って、とにかくそのお社にお榊をお供えします。挿せる瓶も無かったので、左右に寝かせて置きました。
私は祖母たちの所に戻って、
「家の裏、お稲荷さんあったよね?」
と聞いてみました。
母も叔母も祖母も首をかしげています。
聞けば、家の裏にあるのは昔からあの紙垂の入った神棚?だけで、お稲荷さんなんて無いよ、との事。
私は何でお稲荷さんが祀ってあると思っていたんでしょうか。
はっきりと記憶にあるあの光景はなんだったんだろう。
家の裏、飛び石は記憶と変わらずに、ただお稲荷さんのお社だけが、全く記憶と違うのです。
勘違いの一言で済む話ですが、私の中では未だ、あの小さなお社が、はっきりと記憶にあるのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます