第5話 猫が助けてくれた話

 私は不眠症の睡眠障害持ちなもので、金縛りは基本、霊現象である事は殆ど無いと思っています。

 数え切れないくらいやってますし、身体が押さえつけられるとか、たまに見えるお化けらしきものも大抵は脳が見せるエラーです。

 回数をこなしている故に解き方のコツも分かっています。

 私はそれを「寝るのに失敗して金縛りになった」

 と言っています。


 その中でも「いやこれは流石に怖いわ」という物が幾つかありましたので、一つ書いてみようかと思います。


 結婚して、今のマンションに越してからの事です。

 私と夫はベランダが隣接する和室で布団を並べて寝ています。

 その日は蒸し暑かったので、窓を開け、網戸だけ閉めて寝ていました。

 夜中、眠れずにモゾモゾしていると、物凄い耳鳴りがして、直後ビキッと金縛りになりました。

 ここまでだと、「寝るのに失敗したのかな」という金縛りです。

 嫌だなあ、とりあえず解こう……

 そう思っても、指先一つ動きません。


 何時もの「入眠失敗の金縛り」は無理やり力を込めて、力づくで寝返りを打ち、身体を横にして丸くなり、ついでに夫の身体になんとか触れると、そのまま再度金縛りになる事無く入眠できます。

 ちなみに金縛りは仰向けだとかかりやすいらしいです。

 夫に触れるのは他の人の体温というか、呼吸に同調すると解ける気がしているからです。これはおまじない的なものです。


 んで。

 その日はどんなに頑張っても、全く何処も動かせませんでした。

 あれ?何か違うぞ?

 と思っていたら、ベランダ(八メートルくらいある長い細いベランダ、隣室とは区切られている)から、明らかに「ザッザッザッザッ」っとコンクリートを歩いて近づいてくる大きな足音がしました。

 やべえ、と思いました。窓は開いています。入ってくる気かこれ。

 どうしよう、と思った瞬間、猫が聞いた事ない様な大きな声で鳴きました。

 瞬間、金縛りが解けました。

 見ると一番気の強い、当時そこまで慣れていなかった保護猫が、私の足元でじっとこちらを見ていました。

「……ありがとう!」

 そう言いながら、私は必死に窓に駆け寄り、施錠して、障子を閉めました。

 そして猫にお礼として、遅い夜食をあげました。


 猫は魔除けと良く言います。

 流石、神様が仕事選びすぎた可愛すぎる猛獣です。

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