第13話

撤退を含む目的で、俺たちはアリスの部屋で作戦会議を開いた。


誠は意外にもすぐに気を取り直し、現時点での情報を再度まとめた。


「今わかっている情報は、敵が二人の男子侍者、ジルとウルリヒだということ。前者は雨を操る能力を持ち、外の大雨も彼の手段である可能性が高いが、個々の戦闘能力は中学生程度。接近戦では注意が必要だ。後者の能力や戦闘力はまだ未知数だ。」


「諒、ジルをどう対処するか考えたか?」


「少しは手がかりがあるけど、二人同時には対処できない。」


「じゃあ、ウルリヒは僕とアリスで対処しよう。アリスの右手があれば、なんとかなるはずだ。」


アリスは目をきょろきょろさせて、発言した。


「彼らと戦うとなると、外では戦わないほうがいいし、水が近くにない場所がいいよね。」


誠はうなずいた。


「そうだな、それに加えて窓のない部屋が望ましい。でもウルリヒの能力がわからない以上、狭い空間での戦いが有利になる可能性も考慮しないといけない。アリス、この家にはそんな部屋があるか?」


「うん、書庫がいいかも。そこは広くて、窓がない。」


「書庫か、それはいい選択だ。どこにある?」


書庫なら、本棚の陰で隠れて漢と連絡を取ることもできるから、確かにいい選択だ。


「部屋を出てまっすぐ行って、右側の二つ目の部屋だよ。」


「よし、行こう!」


「ちょっと待って!」


誠は真っ先に部屋を飛び出し、彼らの待ち伏せを全く恐れずに書庫へと向かった。


こいつ、一体何を考えているんだ…


俺はドアを出たばかりのアリスを呼び止めた。


「アリス、魔女って何?この村では以前何が起こったのか、教えてくれる?」


止の奇妙な死に方にも大きな疑問がある。あれこそが誠の以前の異常な態度の鍵となるような気がする。


アリスはうつむき、何かを躊躇しているようだったが、廊下の方向を一瞥してから、ゆっくりと口を開いた。


「実はね、アリスもよくわからないの。魔女が何なのか、アリスもママもなんでそう呼ばれるのか、全然わからない。ママは、ただアリスがみんなと楽しく遊べるようにしたかっただけなのに、どうしてこんなことになったのかな。ママもおばさんも、みんな見えなくなっちゃって、アリスだけが残されたの…」


そんな悲しげな目の表情は、どんな理由であれ子供の顔に浮かんではならないものだ。


「…アリス」


俺が何を考えているのか察したのか、アリスはいつものように微笑んで、嬉しそうに俺に言った。


「だからね、アリス、本当に、本当に嬉しいんだ。お兄ちゃんに会えて、誠に会えて、本当に良かった。アリスはもう一人じゃないんだ。へへへ」


「おい!何してるんだ?早く来いよ」


来て、行こう。アリスは俺の手を引いて、部屋を飛び出した。


誠の家の書斎とは違い、法源寺邸の書庫には本の古臭い匂いはなく、代わりに紙の香りと皮革の香りが漂っていた。侍者たちはここを頻繁に掃除しているのだろう、床は塵一つない。


書庫は広くはなく、下のダイニングルームに比べると小さい。部屋全体には六つの本棚が二つのミ字に配置されており、人が通るスペースは本棚の間隔しかない。本棚は人の背丈より少し高く、天井までにはまだ距離がある。窓がないため、照明はすべて天井の電灯に頼っている。本棚には本がぎっしりと詰まっており、本と本の間は隙間もないため、さらに薄暗く感じられた。


部屋に誰もいないことを確認した後、誠とアリスは再び集まって新しい罠の作り方を議論していた。彼らは本当に熱心だな。


俺はその間に右上の本棚の後ろに隠れて、こっそりと玉佩を取り出して漢と通信した。


「先ほど誠に遠慮して言わなかったが、処刑人についてどう思う?」


のんびりとした声が返ってきた。こいつ、本当に危機感がないな。


「これは明白だろう。針刺しと鉄の処女が出てくるなんて、答えはすでに書かれているようなものだ。」


「『魔女狩り』」


俺と漢は同時に口を開いた。


「これは東亜に常住している俺でさえ知っているヨーロッパの大事件だ。中世後期から始まった、魔女とされた者に対する大規模な迫害と処刑、それは本当に悲惨なものだった。」


「うん、多くは宗教的対立や権威を示して社会を統制するためのものだった。間違いなく暗黒の一面だ。」


「こんなことはどの時代でも起こり得る。『巫蛊の祸』『滅仏』『文字獄』、統治者は国家の統治において、常に同じ道を選ぶものだ。人間性が変わらなければ、歴史は繰り返されるだけだ。人間性とはそういうものだ。」


「…じゃあ、俺の場合は?どうして俺を選んだんだ?」


「…お前?ふん、たまたまお前に出くわしただけだ。百年ぶりに同郷の者と接触したから、お前を選んだに過ぎない。」


「へぇ…嘘が下手だな。」


「この野郎!」


冗談もこれくらいにして、本題に入ろう。


「その連中をどう対処するか、どう思う?順番に言えば、ジルは水刑、ウルリヒは絞首刑だろう。」


「うん、その判断は正しい。お前を無傷で対処できる自信がある…今回はお前を死なせない。」


……漢


「じゃあ、誠はどうだ?何か手段はないのか?」


「ない。お前を守るだけで精一杯だ。お前は速戦速決を考えろ、お嬢ちゃんと誠が殺される前にハーフアップマレットを解決するんだ。先に言っておくが、平頭が加わったら勝てる保証はないし、他人に見られたくないから、静かな場所でハーフアップマレットと一対一で戦うのがいい。」


「…彼らに任せるしかないな。じゃあ、そうしよう。」


気になることがも一つあるけれど、それは後でにしよう。今は第三のゲームが優先だ。


立ち去る前に、古びた皮表紙の厚い本を見かけた。


俺は立ち止まり、その本を取り下ろした。


「?」


本棚は新しいが、この本はすでに古びており、表紙の文字は読みづらいが、内容からタイトルを推測した。


「ねえ…冥婚って知ってるか?」

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