第6話

その時、俺たちとアリスの三人は、五人の黒い服を着た侍者の子供たちに囲まれて、庭の門を出発し、後山の奥へと続く曲がりくねった小道をゆっくりと歩いた。道の両側には木々がますます密集していきたが、空はピンク紫色だけど、視界はまだはっきりしている、彼らの案内があるので山で迷う心配もしない。


光が木の葉の隙間から漏れて地面に降り注ぎ、斑模様を作り出していました。足元の小石が細かな音を立て、俺と誠の低声のやり取りが続いていました。


「誠、さっき言ってたゲームの参加者が戻ってこなかったって、どういうことだ?」俺は低声で尋ねました。


「…ああ、君は何も知らずに参加するんだな。」


「ごめんごめん、教えてくれないか?」


「本当に君ってやつは…。僕たちが今から参加するゲームの名前は「オレンジとレモン」だ。」誠は無情に俺を一瞥し、俺の左側をちらりと見ました。「そしてゲームの主催者が、君の左側にいるあの「妖女」だ。」


そういえば村の入口でもオレンジとレモンを見たような気がする。


彼の目線を追うと、「妖女」アリスは楽しそうに歌を口ずさみながら、跳ねるように歩いていました。純白のワンピースと腰まで伸びる銀色の長髪が、体の動きに合わせて揺れていました。白い姿はこの森の中でひときわ目立ち、彼女が純真無垢に見え、「妖女」の様子は全くない。


「うーん?何ー?」アリスは俺たちの視線に気づき、こちらを見ました。


「いや、何でもない。」


「ふーん、まあ_______いいや。ど_________うせアリスはざん_________ざん__________気にしないし___________。」


これは普通の子供じゃないか!?俺がそう言うと、誠は命知らずだなという顔をして俺お見た。


「君が人を信じやすいだけだよ。彼女は見かけだけで、本当はどうやって俺たちを殺すか考えてるに違いない。これから彼女に対抗するには、絶対に注意が必要だ。だって…このゲームは、まさに殺人ゲームだからな。」


殺人…ゲーム?


「一ヶ月前、彼女が同じようなゲームを開催し、村の少年たちに招待状を送った。そして二人の少年が喜んで参加した。」


「その結果、森に入る彼らの後ろ姿が最後の目撃情報だった。彼らはそうしてこの山の中で迷子になり、二度と戻ってこなかった。」


ちょっと待て、その理屈はおかしい。たとえ彼らが山に行って失踪したとしても、それがゲームの問題だとは限らないじゃないか。


「でも、それが「妖女」と何の関係があるんだ?彼らが山で迷子になって、何らかの事故で死んでしまった可能性もあるし、死体がちょうど落ち葉に隠れて見つからなかっただけかもしれない。」


「確かにそうかもしれない。しかし、まず第一に、この山の木々は多いが、人を隠せるほどの落ち葉が積もるには秋まで待たなければならない。今はまだ夏だ。第二に、皆が聞いた、三度の打更の音だ。」


!?


「まさかその時の空もこんな感じだったのか?」俺は粉紫色の雲が広がる空を見上げました。


「…そうだ。今日のように最初の打更の音の後、空が変わり、今と同じ不快な色になった。もちろん、僕たちは村を出ようと試みたが、逃げることはできなかった。世界が変わったのだと思い始めた頃、第二の打更の音が聞こえ、第三の打更の音の後、しばらくして空は元の状態に戻った…今日まで。」


「でも、それでもゲームの問題だとは限らないじゃないか?」


「打更の音。」俺に答えたのは誠ではなく、さっきから俺たちの会話をこっそり聞いていたアリスた。


「…うん。」


「それがどういう意味だ?山から聞こえたとしても、誰かが故意に山に持って行った可能性もあるじゃないか…」


「この村には打更の習慣がないんだよ、お兄ちゃん。」


「え?」


「彼女の言う通りだ。前代の村長が隣の村と仲が良く、そこから水時計というものをたくさん買ってきて、各家庭や田畑に設置した。そして、村民同士の関係が良く、外部の人間がいないので警戒する必要がなく、だからもう夜回りは必要ない。」


「さらに、かつて打更に使っていた木棒と竹梆子が突然なくなった。ずっと問題なく使っていたのに、君たちが来てからなくなった。君たちの仕業じゃないか!」


「だから、あそこに住んでいるアリスが———!」


「フフフ、そうなの?そんなこと言うなら、誰でも盗めるでしょ。だって無防備に自分の庭に置いてあるだけなんだから。もしかしたら、君たち家族がなくなったと言い張ってずっと隠し持って、私たちに罪をなすりつけようとしているのかもね、フフフふ。」


「君!」


誠は今、アリスを睨みつけるほどの勇気を持っているが、アリスも負けずに彼を冷笑していました。


彼らが打更の音について激しく言い争っている間、俺はその理由を理解できない。それはまるで何かの異常が起こることを他人に知らせるための報時のようなもの、それに何の意味があるか。アリスが言うように、誰かが彼女を陥れようとしているか?


いや、違う。簡単に思いつく論理に囚われてはいけない。


その時、遠くに洋館の輪郭がぼんやりと見え始めました。俺はうなずき、歩調を少し早めました。このゲームの目的が何であれ、俺は勝ち抜いて、ここから抜け出さなければなりません。


周りの木々はますます高くなり、俺たちの前進を見守っているかのようでした。


ただ、アリスが怒って顔をそむけた瞬間、彼女だけが見ていました。林間に隠れて俺たちを盗み見していた、黒いマントを着て大きなカラスの仮面をかぶった影が。


こうして俺たちは話しながら、この神秘的な建物に近づいていた。


「——————普通!」


誠は驚きの声を上げましたが、確かに普通の洋館た。


諒が小屋の屋根裏部屋から見た家と同じで、やはり、「妖女」の家とはこの洋館のことでした。しかし、火災の廃墟から突如現れた不気味な洋館とは違い、この洋館はどこまでも普通た。


2階建てで、各階に四角い白い枠の窓がありました。壁は赤レンガと黒い石でできており、屋根は黒い瓦で覆われていて、いくつかの小さな煙突がありました。


建物の両側には弧を描く小さな部屋が突き出ており、外側にはフルレングスの窓がありました。部屋の上には2階の小さなバルコニーがあり、正門の直線的な形状とは対照的です。


俺の「東亜地区」の経験からすると、このような欧風の建物が何のスタイルかは分かりませんが、そこでは普通の建物としか言えない。まるで飛行機で提供される無料のコーヒーのように、インスタントの甘いコーヒーでも、素人には美味しく感じるようなもの。


唯一珍しいのは、洋館の入口にそれぞれ石のライオンが置かれていることです。この邸宅を守っているのでしょう。


村の奇妙な生物の彫刻が施された門や建物を見慣れた後では、石のライオンがあっても不思議ではありませんでした。


ティサンは一歩前に出て、洋館の正門の前に立ち、俺たちに向き直り、完璧なお辞儀をして、ゆっくりと、丁重に俺たちに言た。


「それでは、皆さん、ようこそ——————法源寺邸へ。」

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