第15話
「仁夜さん! こっちです!」
静音ちゃんが通う学校の門に着いた所、校舎の方から聞き慣れた声がしたので振り向いた。
「こんにちわ。静音ちゃん。今日はお兄ちゃん呼びはしてくれないんだね?」
「うぅ・・流石に皆の前でお兄ちゃん呼びは恥ずかしいよ。」
「それは残念。」
「もう! からかわないでくださいよ!」
「ごめん。ごめん。」
(どういうことだ! 雨宮さんが男と仲良くしてるぞ!)
(あり得ないだろ!? 今まで何人振られたと思ってんだよ!)
(でもさぁ・・目茶苦茶仲良さそうだぞ?)
(わかる。あんな雨宮さん見たことないな。)
「それじゃ、行きましょ!」
(うわあぁぁぁーーー!!!! 雨宮さんが腕を!!)
(不味いなこれは、嫉妬と羨望で死人が出ても可笑しくない。)
(南無。)
「私のクラスの出し物、メイド喫茶何だ。一緒に行こう。でも、その前に髪を整えてあげるね。仁夜さん、わざと地味目にしてるよね。服装も」
「棗ちゃんが言うには、俺がちゃんとすると録でもない人が寄って来るから良く無いって言われてね。」
「フフ、何ですかそれ!」
「何だろうね?」
「それじゃ、整えますね・・・えっ!?」
静音ちゃんに前髪を上げられ、俺の目と静音ちゃんの目が合わさった。
※※※※※※※
ドキッ!!
えっ! 嘘ォォ!! 仁夜さんってこんなにイケメンだったの!!
私は仁夜さんの優しさが凄く大好きで、例えイケメンじゃ無くても惹かれていたんだけど・・・中身だけじゃなく外見まで良い何て反則過ぎる。
そこで思い出す。棗さんが言った言葉を
棗さんは一度家で会った事がある。一つ年上で綺麗な女性だ。最近では、仁夜さんのマンションで一緒に暮らしているらしく、お姉ちゃん達と凄く仲が良い。
私は仁夜さんの髪をそっと元に戻した。
「うん。やっぱり仁夜さんはこっちの方が良いね。」
そう誤魔化して、より目立たなくした。
「あれ! 静音ちゃんは午前中だったよね?」
「そうだよ。今回はお客として来ました。」
「そうなんだ。それでそちらの方は?」
「フフフ、私の大切な人だよ!」
ざわざわざわざわ
一気に周りが騒々しくなった。何ごと?
「あ~あ、静音ちゃんが変な事言うから大変な事になったじゃない。静音ちゃんはもっと、自分の人気を自覚した方が良いよ。」
静音ちゃんは学校で人気者何だな。そりゃあそうか、こんなに可愛いもんな。
「迷惑かけたようでごめんね。」
「い・いえ」
「静音ちゃんも余り変な事を言って、友達を困らせるのは良く無いよ。御詫びに静音ちゃん経由で差し入れ入れるから、文化祭が終わったら皆で食べてね。」
「もう! 本当の事なのに! 結衣ちゃんごめんね。仁夜さん、行きま・」
ガシャーン!!
「や・やめてください・・・」
「何言ってんだよ! そんな格好して誘ってんだろう!」
「ーー違います」
何かが割れる音が響き、音の鳴った方を伺うと柄の悪い男4人が女子生徒を囲んでいた。
「不味いんじゃないか。誰か助けてやれよ!」
「そんなの無理だよ!」
「誰か先生を読んでこいよ!」
怖いのか誰も助けに入る気は無さそうだ。そうこうしている内に男の一人が女子生徒に抱きつこうとする。
「静音ちゃん、どうしよう。綾瀬ちゃんが」
「ごめん。静音ちゃん、ちょっと行ってくる。」
抱きつこうと手を伸ばした男の手首を掴み捻ってスペースをあけて、女子生徒を男達から離した。直ぐに静音ちゃんがその生徒を安全な場所へ誘導してくれた。
「痛たたた!!」
「何すんだてめぇ!」
ガシッ!
殴りかかってきた拳を受け止め軽く握ってやる。
「い・痛ぇ!! クソッ! 離しやがれ!」
「そこの二人も動くなよ。動いたらコイツらがどうなっても知らんからな。」
少し殺気を織り混ぜる。
ガタガタガタガタ
「なぁ、お前らだってわかるよな。この日の為に皆頑張って準備して来たんだ。それは、この日を皆で最高の日にするためだ。それをお前らが壊して良いわけがない。違うか?」
「す・すいませんでした!!」
握っていた手を離すと、4人は土下座をして謝った。
「ヤンチャしたい年頃なのはわかるが、あまり周りに迷惑をかけるもんじゃない。遊ぶのは大いに結構、ただし己に恥じぬ生き方をしろ。」
『己に恥じぬ生き方・・・』
「そして、己を誇れるよな人になれ。人生は始まったばかりだ、腐らずに頑張れ。」
『あ、ありがとうございました!』
「おう! 迷ったり、悩んだら相談に乗ってやるからいつでも来い。」
男達は何度も頭を下げて謝り、足早に帰っていった。
「あらあら、仁夜くん、格好いいわね。おばさん惚れちゃいそうよ。」
「晴香さん!? アハハ、お恥ずかしい所をお見せして申し訳けありません。」
「格好良かったわよ。そうだ、これからおばさんとお茶にしましょう。」
「お母さん! 仁夜さんは私とお茶するの! だからお母さんは駄目です!」
「あら? 静音も居たのね。それじゃ、3人でお茶にしましょうか。」
「晴香さん、ちょっと待って貰って良いですか?」
「えぇ、問題無いわよ。」
「生徒の皆さん、それと保護者の皆様方、騒々しくしてしまってごめんなさい。嫌な思いをした人も居るでしょうが、それに負けずに今日と言う日を名一杯楽しんで下さい。失礼します。」
思った事を言いきって教室を出た。
※※※※※※※※
「綾瀬ちゃん、大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。」
「静音ちゃん! なんなのあの人、凄く格好いいんですけど!」
「あ~あ、あまり知られたく無かったんだけどな。」
「えっ! 静音ちゃんはあの人と知り合いなの!」
「そうだよ。だって、仁夜さんを誘ったの私だしね。それより、お母さんに仁夜さんを取られるから行くね。また、後でね。」
そう言うと、静音ちゃんは教室を出て行った。
「何か不思議な人だったね。」
「うん。」
「もしかして、綾瀬ちゃん惚れちゃった?」
「うん。 あっ! 違うんだよ! ただちゃんとお礼出来なかったなって」
「助けて貰ったもんね。それなら、静音ちゃんにお願いしてみたら?」
「うん。聞いてみる。」
夕方になると一般公開が終わり生徒だけの時間になる。静音ちゃんは大量の差し入れを持って帰って来た。
「仁夜さんが皆に迷惑をかけたから皆で食べて下さいだって。」
「静音ちゃん!? これ『TOWAIL』のケーキだよ! 凄く人気で手に入らないし、結構お高いんだよ!」
「そうなの? でも、仁夜さん皆に食べて欲しいって言ってたから後夜祭前に皆で食べよ。」
クラス全員にケーキが行き渡り全員で一斉に口に入れた。
「これ凄く美味しい! 人気があるのも頷けるね。」
「今まで食べた中で一番かも」
「俺、甘いの苦手だったけど、これ凄ぇ好き。」
「でもあの人、男から見ても格好良かったな。若そうに見えたけどいくつ何だろう?」
「高校1年生だよ。既に親元を離れて自立して、自分でお金を稼いでる。それも、お金持ちらしい。」
「マジで! 2つしか変わらないの?」
そんなに年が変わらないと知って落ち込むクラスメイト。
「うん。お姉ちゃんの同級生だよ。少し前にお姉ちゃんが家に連れて来た時からの付き合い何だ。」
「お姉さんの彼氏?」
「まだ、そうじゃないみたい。お姉ちゃんはベタボレだけどね。そう言う私も同じだけど」
「えっ!? 静音ちゃんも好きなの」
クラスの女子が一気に盛り上がった。
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