第11話

美里ちゃんの通う学校はマンションから歩きで大体20分くらいかかる。元々、葵さんのアパートが俺のマンションの近くだったので、学校までそんなに変わらないようだ。


小学校が近付くにつれて、小学校へと通う子供が多くなる。


「美里ちゃん、男の子から凄く見られてるね?」


すれ違う男の子が美里ちゃんに見とれて、何かボォーとしている。


「うん。凄く気持ち悪い。」

「そうだ、美里ちゃんにプレゼント。」

「プレゼント?」

「美里ちゃんの携帯電話だよ。俺の連絡先を入れておいたから、こうやってここを押せば俺に繋がるから何かあったら連絡してね。」

「えっ!? 貰って良いの?」

「今時の小学生は皆持っていると聞くし、美里ちゃんと連絡手段を作っておきたかったんだ。じゃんじゃんお友達と連絡先を交換して友達を多久さん作っておいで。」

「お兄ちゃん、ありがとう。大好き!」

「どう致しまして。また、終わる頃に迎えにくるから勉強頑張ってね。」

「うん!」


校門が見える位置まで来ていたので、その場所で見送ることにした。



※※※※※※※


教室に入ると、私の姿に驚いて仲の良い友達が駆け寄って来た。


「うわぁ~美里ちゃん服もそうだけど髪も凄く可愛い! どうしたの? いつもと全然違うね。」

「え~とね、大好きなお兄ちゃんに服と髪やってもらった。」

「美里にお兄さんっていらっしゃったかしら?」

「本当のお兄ちゃんじゃ無いんだ。それで、二人には話し聞いて貰いたくて、昼休み時間無いかな?」

「私は全然問題無いよ!」

「私も話し相手くらい問題無くてよ。」

「いつもありがとね。深仍ちゃん! 茜ちゃん!」


私の家は裕福では無い。お母さんが倒れてからは食べるのがやっとで、新しい服や靴も買う余裕はうちには無かった。だからいつも、お姉ちゃんのお古や年期の入ったぼろぼろの服を来て学校に行くのが当たり前だった。


子供はそんな異分子の私をいつも馬鹿にして、貶して、嘲笑う。だから私はそんな学校が余り好きでは無い。だけど、そんな子ばかりでは無かった。いつも私を気にかけてくれる優しい藤巻深仍ふじまきみよちゃんと口調は厳しめだけど、とても優しい東城茜とうじょうあかねちゃんは私の大切な友達である。


「うわぁ! 橘が変な髪型してる。変なの!」

「ククク。そんな綺麗な服何処から盗んで来たんだよ!」


いつも私を馬鹿にしてくる男子がいつも以上につっかかってくる。お兄ちゃんと比べるとほんと猿にしか見えない。


「もうわかったから、話しかけないでくれる。私、貴方達が大嫌いだから話すのも近付かれるのも本当に気持ち悪いの。私を馬鹿にするのも良いけど自分の顔も鏡で確認すると良いよ。不細工で気持ち悪い顔してるもの。」


普段は黙って耐えていたけど、もう我慢するのはやめる。私は強くなるんだ!


『・・・・・・』


男子はまさか言い返されるとは思ってあらず、女子に大嫌い、気持ち悪い、不細工と言われて酷く落ち込み呆然としていた。


「いつまで其処に居るの? 邪魔だから消えて!」

「その・・ごめん。」

「謝罪はいらないから二度と声をかけて来ないで。」


完全な拒絶に男子は落ち込み、その場を離れていった。美里は美少女だった。男子はそんな美里の気を引きたくていつもちょっかいをかけていた。そして今日、可愛い服とオシャレな髪を見ていつも以上にからかってしまった。その結果が好きな子からの完全な拒絶。男子に深いトラウマを植え付けるが自業自得の何物でもない。


そして、昼休み


「ククク、朝は笑わせて貰いましたわ。男子もあれで気が引けると思っていたのかしら?」

「私もスカッとしたな。前から思っていたけど男子って馬鹿だよね。」

「フフン、私もスッキリした。」


屋上で笑いあった。


「昨日色々あったんだ。前々からお母さん体調悪くて寝たきりで病院に入院するお金無いし、お姉ちゃんも家の事と学校の事で限界だったんだって。それでね、お姉ちゃんが限界で助けを求めたのが、大好きなお兄ちゃんなんだ。昨日家に訪ねて来てね、お母さんを病院に入院させてくれて、アパート代滞納してたみたいで追い出されそうだった私とお姉ちゃんを自身のマンションに住まわせくれてるんだ。それにね、新しい服を沢山買ってくれて、勉強や運動とか色々教えてくれるんだよ。朝もね忙しいのに髪をセットしてくれて凄く良い人なんだ。」

「ちょっと待ちなさい! そんな大変な事になっているのに相談してくれなかった事には怒りたい所ですが、本当にその人大丈夫? 騙されていない?」


うん。茜ちゃんが言いたいことは良くわかるよ。でもね


「うんとね。そんな大変な事になってるの教えられたが昨日なんだ。お姉ちゃんが泣きながら教えてくれた。それでね、正直昨日会ったばかりだからお兄ちゃんの事は良くわからないんだ。わかっているのはお兄ちゃんはお姉ちゃんの同級生って事だけ。」

「えぇ~! そんな人と同じマンションで生活しているの? 変な事されてない?」

「私はお兄ちゃんになら変な事されても全然嫌じゃ無いんだけど全然そんな事無いの。それに私ねマンションとか良くわかんなくて、茜ちゃんなら詳しいかも知れないけど本当に凄いもんね。部屋もいっぱいあるし、プールもあったし、でっかいお風呂、運動出来るジムって言うのもあってマンションって凄いよね。」

「美里、普通のマンションにそんな物は普通無いわよ?」

「そうなの? そうだ! 今日朝にね、お兄ちゃんにこれプレゼントして貰ったの! ジャジャーン!!」


私は鞄から朝貰った携帯を取り出して二人に見せる。


「使い方良くわからないけど、連絡先交換しよ!」

「美里、良いの買って貰ったわね。それ結構お高いものよ。」

「えぇ!? それ本当!」

「それは良いわ。それより、教えるから連絡先とグループLIMEを登録するわよ。」

『うん!』


茜ちゃんに教わりながら登録を済ませる。登録が終わったタイミングでお兄ちゃんからLIMEが届く。


〈遠慮しないで、お友達を家に連れて来ても良いからね。俺も美里ちゃんの友達なら歓迎したいからね。〉


「フフフ。」

「どうしたの、美里ちゃん。急に笑って?」

「え~と、放課後何だけど家に遊びに来ない? 無理なら全然良いんだけどね。」

「美里ちゃんが遊びに誘ってくれるの嬉しい。でも良いの? そのお兄さんの家何でしょ?」

「私の友達なら一緒に歓迎したいって、だから遠慮しないで良いからって連絡が来た。」

「今日は習い事は無いから問題無いわ。」

「それなら私も行きたい!」

「それならお兄ちゃんに連絡するね。」


ピコーン!


〈楽しみにしてるね。後、友達の御家族には家の場所を必ず伝えてから来てね。住所は※※※※※〉


「お兄ちゃんが家族の人に必ず家の場所を伝えておいて下さいって。住所がこれだって?」

「えっ!? 美里、この住所本当なの?」

「多分そうだと思う。ほら、彼処に見える大きいビルあるでしょ。彼処に住んでいるんだ。」

「ホエェ~!?」

「確か彼処は有名な企業が沢山入っていて、マンションでは無かったと思うのだけど・・・」

「お兄ちゃんが学校まで迎えに来てくれるから学校終わったら一緒に行こう!」


一応、友達の家に遊びに行くと伝え、教えられた住所を添付しておいた。絶対に後で聞かれますわよね。

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