第8話

4人は遊戯室で女子会を開くらしい。俺は晩飯の準備をしながら美里ちゃんに勉強を教えていた。


「ここはこうして、こうすると良いよ。」

「あっ! 本当だ! お兄ちゃん、教えるの上手だね。」

「そうかな? それじゃ、わかんない事があったらドンドン聞いてね。そうだ! 美里ちゃんはすき焼きは好きかな?」

「えっ! 今日すき焼きなの! ヤッター! 凄く大好きだよ!」

「それは良かった。楽しみにしておいてね。」


大きめの皿にすき焼き用の具材を多めに盛り付けていく。すき焼き用の割り出しも準備して、肉はこの前貰ったのが一杯あるから消費してしまおう。


「美里ちゃん、夕飯まで時間あるから、運動しに行かない?」

「運動? 行く!」


勉強が終わって寛いでいた美里ちゃんを誘ってジムへと向かう。


「更衣室で今日買った服に着替えよう。」


二人がジムで運動出来るように、運動用の服とシューズも一緒に買っていたのだ。専用のロッカーも割り当てたので、各自ロッカーに着替えを常備している。


「先ずは体操から行くから、俺の動きを真似してみてね。そう、ゆっくりで良いよ。意識して伸ばして行く、そうそうそんな感じ。体操ってね地味だけどね、運動する上で凄く大事な事何だよ。」


俺が毎日欠かさず行っているストレッチや柔軟体操をメインに教えていく。一生懸命に俺の真似をしている美里ちゃんにアドバイスを送りながら、俺は筋肉トレーニングを初めた。


「お兄ちゃん、凄い身体だね。」


ペタペタ


美里ちゃんが俺の腹筋や胸筋をペタペタと触りなが褒めてくれる。何かくすぐったい。


「そうかな? 一応身体には気をつかっているけど、男の人は大体こんな感じじゃない?」

「えっ!? そうかな? 担任の先生とか同級生の男子の身体はプールの時に見ることあるけど、全然違ってたよ?」

「同年代の子と比べたこと無いから良くわからないな? うちの親父や兄貴はこんな感じだったから普通だと思ってたんだけどな?」


その後、二人でランニングマシーンで汗をかき、軽くシャワーで汗を流し夕飯の仕上げにうつった。


※※※※※※


『待って! 訂正しても良いかな?』

「クスクス、良いわよ。」

「うぅ、棗は絶対年上よね。」

「うん。私もそう思うよ。琴音ちゃん、私から先に言うね。私は仁夜くんが好きです。きっとこの思いは棗ちゃんにも負けない。だから、これから宜しくね、棗ちゃん、葵ちゃん。」

「全く・・先越されたわね。私も仁夜くんの事は好きよ。勿論、美佐に負けないくらいにはね。だから、棗、葵にも負けるつもりは無いの。」

「まぁ、二人が仁夜様に好意を持っているのはバレバレでしたけどね。」

「そうですね。気づいていないのは仁夜くんぐらいだと思う。」

「あぁ、貴女達は仁夜様の事情は知らないものね? でも、貴女達には話しておくわね。仁夜様は人を好きになると言うことが理解出来ないの?」

「どういう事ですか?」

「仁夜様は今まで特殊な環境で生活していたの。それこそ、高校に入るまで同年代の知り合いはたまにあう私くらいだったと思います。だから、異性との距離感とか接し方が同性と変わらない。要するに恋愛という概念が無いの。」

「だから、他の男性のような厭らしい視線が感じないのか。納得した。」

「仁夜様を悪く思わないでね。これからが少しずつ教えてあげるつもりだから」


煽るよな棗の笑顔を宣戦布告ととらえて言い返す。


がね!』


「こういう関係も面白いわね。そうだ! 折角ですからそれぞれ仁夜様の事を好きになった時の話しが聞きたいわ。」

「良いけど、多分私と美佐は一緒だと思うわよ。不良に脅されて、そのぅ・・如何わしい事をされそうな時に助けられたの。それで、仁夜くんに大丈夫って言われた時には好きになっていたと思うわ」

「私も大体同じかな? 認識したのは手を握られた時だったな。私、男性が苦手で声をかけられたり、触れられるのが凄く嫌だったの。だけど、あの時は凄く嬉しかったんだよね。家に送ってくれる間、もっと家が遠ければ良かったのにって思ってた。」

「わかるわ。帰っている間、ずっと私達を気にかけてくれているのがわかって、ずっとニヤニヤが止まらなかったもの!」

「二人とも・・・そんなベタ惚れで良く友達って言えたわね?」

「だって、初恋だったから恥ずかしくて・・」

「私も初めての経験で・・」


二人は顔を真っ赤にして俯いてしまった。


「私のは少し重たい話しで申し訳け無いのですが聞いて下さい。」

「フフ、気にしないで話して下さい。どんな話しでも私は葵を嫌いにならないわ。」

「うん。私も同じ気持ちだよ!」

「そうよ!」

「ありがとう。私ね高校に入って直ぐに、先輩から告白されて断ったの。そしたら次の日から虐められるようになって・・それと重なるようにお母さんが倒れてしまった。日に日に虐めがエスカレートするし、成績もみるみる落ちて、私特待生枠で奨学金で通っていたから今の成績だと奨学金が受けとれなくなると先生から言われてどうして良いかわからなくなって気づいたら学校の屋上から飛び降りていた。でも、不思議な事に気づいたら屋上に居て隣に仁夜くんが座っていたの。何故か初めて会った仁夜くんに事情を話していた。仁夜くんが言ったの迷惑かも知れないけど、お節介させてくれないかって。私には今の状況を変える術が思いつかなくて、助けて! って叫んだの。直ぐに任せろって言ってくれて、多分この時に惹かれたんだと思う。」

「頑張ったのね、葵。」

「うぅ・・許せない! 振られたからってその仕打ちは酷すぎる!」

「虐めてた奴も絶対に許せない!」

「それでどうなったの?」

「仁夜くんがね、理事長に直接虐めの事で抗議してね。学校が動かないなら俺が動くけど良いって理事長に伝えて、理事長は私が動くから仁夜くんは動くなって、それからはどうなったかわかりません。それから、棗さんに手伝って貰ってお母さんを病院に入院させてもらって、アパートを引き払って仁夜くんのマンションに引っ越した感じです。」

「クスクス、葵の気持ち良くわかるわね。私も経験者だもの。離れたくない、触れ合いたい、もっと、もっとって溢れて来るのよね。」

「うぅ・・恥ずかしいです。」


頭から煙が出そうな程に真っ赤になり俯いてしまった。


「最後は私ね。私、小学生の時に誘拐されているの。ほら、家ってあれじゃない。だから、ヤバめの連中に誘拐されて、見せしめに殺されるところだったの。その当時は歳が近いと言う理由で一度だけ仁夜様と逢う機会があって、一言だけ挨拶を交わすだけの関係だった。正直当時は仁夜様の事は怖くて凄く苦手だった。でもね、誘拐されて絶望のドン底で震えるしか無かった私を仁夜様は一人で乗り込んで来て助けてくれたの。当時小学生の仁夜様が大人相手に無双して、私に向かって助けに着たって笑顔で言ったの。もう、好きにならない方が可笑しいでしょ。それから、仁夜様はその組織を潰して、麻薬、銃器売買、それに関わる録でもない組織を一掃して、裏の世界の管理を天竜会に一任してくれたの。それから、毎日のように私の所に来て気にかけくれ、仁夜様の優しさを知ってもっと好きになったわ。」


あんなにクールな棗ちゃんも仁夜くんの話しになると顔がニヤけるから、ギャップが有りすぎて可愛い過ぎます!

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