第6話

午後20時、天神高等学校には夜遅い時間にも関わらず、全教員が集めたれていた。部活の顧問も例外では無い。


「私はね、貴方達を信用して極力学校側に口出しはしてこなかった。だがそれは私の思い過ごしだったようだ。校長先生、今日皆を集めた理由がわかるかね?」

「すいません。わかりません。」

「君達はどうかね。思いあたる者が居るのではないかね?」


・・・・・・


「ハァ~情けない。これは全教員の雇用を見直す必要がありそうだな。」


この学校は公立とは違い私立の学校だ。そして、雇用については理事長に権限がある。不当な解雇で無ければ、今直ぐにでも実行にうつせる力を持つ。


「今日の放課後、学校の屋上から一人の生徒が飛び降りた。」


『!!?』


「幸いにも、私の知人がその場に居合わせて助ける事が出来た。知人から連絡を受けて、知人とその生徒から詳しく話しを聞いて驚きを通り越して怒りが込み上げよ。その女子生徒は酷い虐めにあっていた。もう一度聞く、この事実は何処まで共有されていた。校長先生?」

「虐めについては、今理事長から伝えられて初めて知りました。教頭先生!」

「私も同じです。申し訳ありません。」


ここで緊張したように、一人の女性教員が手をあげた。


「遠慮する事は無い。知っている事があれば言いなさい。」

「私の受け持つ生徒がある日から教科書を忘れるようになりました。初めは気にしていなかったのですが、最近は流石に可笑しいと思い、担任の先生にもそれとなく伝えていたのですが、もっと私が早く気づいてあげられていれば!」

「ふむ。そう言っているがどうかね? 1年D組担任の室井隼人くん。」

「それは・・生徒同士のいざこざに大人が関わるのは」

「それを判断するのは君じゃない。まずは学年主任か教頭、校長に相談するのが常識だと私は思うのだがどうだろうか?」

「はい。その通りです。生徒に何か問題があった場合には連絡が来る体制は構築していたのですが・・」

「担任で報告が止まったと言うことだな。」

「はい。」

「だがな、そんな言い訳は聞きたく無いんだよ!」


バサッ!!


理事長から校長に資料が投げつけられる。


「簡単に調べたらこんな物が見つかった。これは天神高等学校裏掲示板って言うんだろう。天神高等学校の生徒が意見を言い合う場を造る為に、数年前に生徒会が立ち上げ、学校側が承諾したものらしいな。勿論、学校側も存在を容認し、管理者は生徒会顧問が行っている。なぁ、校長。その書き込みを見てどう思う? 何の為の管理者なのかね。それに特待生で優秀な生徒がこの短期間にこれほど成績が落ちて、何故誰も可笑しいと気づかない? 私は今回の件は重く受け止め、第三者を入れて監査を行う。虐めの主犯各は退学処分とし、1年D組担任の室井隼人教員を本日付けで解雇処分とする。」

「えっ!? 何故私が!」

「君が生徒に教える資格が無いからだよ。虐めを受けている生徒が勇気を出して、担任である君に相談したそうだね。君は気のせいだと言って取り合わなかった。その生徒が絶望するのもわかる。君のような者を雇った我々にも責任があるがな。君はもう退出してもらって構わない。明日から学校に来る必要も無い。」

「荷物を持って帰りなさい。後日郵送で書類は送るから確認しておくようにな。」


有無を言わさず会議室から男性教員が追い出されていった。


「虐めの主犯各はこの書き込みで把握している。今回は見せしめも込めて退学処分とする。ここで軽い処分にすることは生徒の為にならない。それと教員側にも厳しい罰を与える。気にいらない者は辞めてもらって一向に構わない。順番になるが全員に特別講習も受けてもらう。部活の顧問の先生方も例外じゃない。部活では虐めや暴力が起きやすいからな。この機会に学校を一新させる。」



翌日、問題のあった生徒とその家族が集められた。


「何故うちの子が退学何ですか!」

「もう少しで卒業何ですよ! スポーツ推薦で大学も決まっているのに!」

「推薦の件は白紙になりました。大学側にもきちんと説明させて頂きました。」

「えっ!?」

「君が虐めの主犯なのは調べがついています。今回の件は学校側は重く受け止めており、既に退学処分が決定しております。」

「まだ子供何ですよ! 幾ら何でも退学はあんまりです!」

「私はそうは思いません。教育委員会にも相談し理解を得られています。説明は以上です。」

「待って下さい! 謝りますから退学だけは勘弁して下さい!」

「謝って済む話しでは無いんです。退学処分は変わりません!」


・・・・・・


「摩美・・あんた何てこと・・・」

「これは虐めじゃなくて、遊んでいただけで・・」

「どう考えても遊びでは片付けられません。よって、学校側としては退学処分とする事に決定しました。」

「退学処分!??」

「娘は退学になるのですか?」

「そうなります。摩美さんと一緒に虐めていた生徒も停学又は退学が検討されています。」

「先生! 嘘だよね? 私が退学何て・・部活も私が抜けたら!」

「摩美さんが優秀なのは認めますが、顧問の先生も今回の決定は認めています。」

「嘘だよ! そんな!」

「摩美はまだ高校1年生何です! お願いします! チャンスを頂け無いでしょうか。今回の件は親である私の責任です。この娘には、自分が何をして何をしてしまったのかしっかり反省させます。なので、1度だけ娘にチャンスを下さい。お願いします!!」

「それは」

「良いでしょう。1ヶ月の停学の後にお母さん抜きで面談を行います。その結果、反省の色が見えなかった場合は退学処分とします。後悔しないようにきちんと話し合って下さい。」

「ありがとうございます!」

「親御さんに渡すつもりは無かったのですが、彼女が掲示板に書き込んだ一覧になります。最後の機会なのでお役立て下さい。」


ワナワナワナワナ


お母さんが一覧に目を通すと、お母さんは泣き初めてしまった。遊び半分で書いた書き込みだったけど、お母さんの涙を見て、やっとことの重大性に気がついた。


「本当に申し訳けありませんでした! 娘の退学処分になるのも頷けます。こんな娘に最後の機会を与えて頂きありがとうございます。それと、教科書、体操着、上履き、制服も全て弁償させて下さい! 出来れば謝罪もさせて下さい!お願いします!」

「謝罪は難しいですね。もう少し彼女が落ち着いてからの方が良いでしょう」

「わかりました・・・」


主犯の男は退学、虐めに関わっていた女子生徒5名は停学の後の面談で判断。掲示板に誹謗中傷を書き込んだ生徒は推薦取り消しと1ヶ月の停学が言い渡された。

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