第3話


友達が出来て初めての土曜日。約束していた通りに友達の家に遊びに向かう。今日は雨宮さんの家で明日が姫島さんの家で遊ぶ予定である。人気菓子店で購入した手土産を持って訪問する。


「スゲェ緊張するな。」


ピンポーン!


インターホンを押して返事を待つ。直ぐに返答があり、雨宮さんと姫島さんが出迎えてくれた。二人に連れられて家に入ると、雨宮さんの家族からお礼を言われてしまった。お礼は気持ちだけ頂く事にした。


「今日はお招き頂いてありがとうございます。つまらないものですがどうぞ。」

「あらあらまあまあ。気を使わせてしまってごめんなさいね。今度からは気を使わずに気軽に来てくれると嬉しいわ。」

「恐縮です。それなら次回からは気軽に来させて頂きますね。」

「フフフ、いつでも歓迎するわね。」


通されたのはリビングで雨宮さん家族に加え姫島さんと楽しく会話を楽しんだ。


雨宮さんの家は父の雨宮信吾あまみやしんご、母の雨宮晴香あまみやはるか、妹の雨宮静音あまみやしずねの4人家族。信吾さんは幾つもの会社を経営する社長さんで、お礼の為に忙しいなか時間を作ってくれたようだ。本当に申し訳け無い。


「あっ! そうだった。俺姫島さんに謝りたかったんだ。姫島さんが男性に対して苦手意識を持ってるの知らなくて、手を握ったり肩を貸したり配慮が足らなくてごめん。これからは気をつけるので引き続き友達として仲良くしてくれると嬉しいんだけど・・」

「男性に苦手意識を持っているのは事実だけど、そのぅ・・天馬峰くんは大丈夫って言うか全然問題無いので大丈夫です! なので気にしないで下さい。」

「良かったぁ~。初めて出来た友達だったから嫌われたら嫌だなって。それに二人と友達になったお陰で良く声をかけられるようになったんだ。意味は良くわからないけど〈我らが女神に近づくな〉とか、〈女神になれなれしくするな〉とか、姫島さんが男性が苦手だから無理していると教えてくれる人もいてね、これは新しい友達が出来ちゃうかもって期待しているんだ。これも二人のお陰だね。」


・・・・・・


「あのね、仁夜お兄ちゃん。私も友達になってあげるね。」


あれ? 何か皆の目が哀れんでいるような?


「静音ちゃんが友達になってくれるなら俺も嬉しいけど良いの?」

「うん。私も仁夜お兄ちゃん大好きになったし、これからもいっぱい遊んで欲しいな。」

「ヤバ、滅茶良い娘だ。俺も静音ちゃんが大好きだから困った事とかあったらじゃんじゃん俺に相談してね。それにしても、雨宮さんが羨ましいよ。格好いいお父さんと綺麗なお母さん、終いにはこんなに可愛い妹まで居るんだもん。俺は今一人暮らししてるんだけど、雨宮さんの家に向かう前に友達の家に行って来るって連絡入れたら両親と兄貴が大号泣して仕事があるのに着いて行くって大騒ぎだった。優しい人達だけど過保護過ぎて本当に困る。」

「でも、優しい御家族なのね。今度お逢いしたいわ。」

「いや・・ほんと変な家族なので、ご迷惑になりますから。」


和やかな時間はあっという間に過ぎて、そろそろ帰ろうかなと思い始めた頃に雨宮家に来客を知らせるベルが鳴る。


ピンポーン!


「は~い、どちら様でしょうか?」

「休日に申し訳けありません。天竜会の若頭を務めさせて頂いております東藤真毅とうどうまさきと申す者です。家の会長がどうしても直接謝罪したいと言っておりまして、これから少しお時間を頂け無いでしょうか?」


天竜会の突然の訪問にさっきまでの和やかな雰囲気が凍りついた。


「どうしましょう、アナタ。」

「会わない訳には行かないだろうな。4人は隠れて居なさい。」

「絶対に嫌! 私もここに居る!」


結局、全員で立ち会うことになった。俺は怖がって震えている静音ちゃんの頭を優しく撫でながら落ち着かせて後ろに控えた。


「天竜会組長の天童陸弥てんどうりくやだ。この度は家のもんが大変迷惑をかけた。本当にすまんかった。」

「天童陸弥の娘、天童棗てんどうなつめです。家の教育不足のせいで、お嬢様方に許されざる行為を働いたこと大変申し訳け無く思っております。本当にすいませんでした。」


二人は深々く頭を下げた。


「顔を上げて下さい。確かに娘にした事は許せませんが、幸い娘達は無事でしたので謝罪を受け入れます。」

「同じくらいの娘を持つ身として、今回の件は重く受け止めております。関係者にはそれそうおうの罰を与えました。真!」

「つまらない物ですが、お納め下さい。」


人気菓子店のプレミアム詰め合わせセットがあんなに!


グスッ 俺の手土産が霞んでしまうじゃねぇか!


「陸弥さんのせいで俺の手土産が霞んでしまったじゃ無いですか! 初めての友達の家にお呼ばれされて、一生懸命考えて選んだのに! 何も同じ、いやグレードアップした手土産で被せて来る何て酷いじゃ無いですか! 俺泣きますよ!」

「!?? 仁夜くんが来ているとは驚いたよ。手土産については他意は無いよ。そもそも、仁夜くんがこの前家に来た時に棗に友達が出来ないって相談しに来ただろ。その時に同年代子達が貰って嬉しい物をって、あのお店を紹介された訳だ。そしたら必然的に手土産が被るのもしょうが無いと思わ無いかね。」

「グッ・・そうだけども。そうだ! 棗ちゃんのアドバイスのお陰で3人も友達が出来たよ。ありがとう。」

「仁夜様のお役に立てて嬉しい限りです。そうだ! 今度仁夜様のマンションに遊びに行かせて頂きますね。」

「遊びにか・・別に良いけど、俺の部屋何も無いんだよな。それは後で考えるとして、バイトが無い日ならいつでも遊びに来て良いよ。」

「ちょっと待ってくれ? 仁夜くんがバイトをしているだと!?」

「コンビニ、ファミレス、新聞配達、工事現場、夏は海の家、珠に家の手伝いでボディーガードなどやっています。流石に親のお金で友達のプレゼントとかお礼は買いたく無いですし、色んなバイトをするのも楽しいんです。」

「ご両親は知っているのかい?」

「言えば絶対に毎日バイト先に来そうなので言ってません。だって、今日だって雨宮さんの家に来るって騒いで大変だったんですから」


ビクビク


天竜会の面々が震えあがる。


「仁夜くん・・本当に来ないよね?」

「多分?」

「ハハッ! ご迷惑だしそろそろ帰ろうか。」

「それでは予定が決まったら連絡を入れますね。」

「おう! 何か遊べそうなの考えておくよ。」


両親の話をしたからか、迅速に車に乗り込み帰っていった。

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