第27話
「ガアアアア!!」
「ガアガアうるせぇ!アヒルかてめぇは!」
ローグさんはイルマの攻撃をヒョイヒョイっと躱しつつ、大鎚で脚を攻撃している。筋骨隆々の身体だが、身軽なようだ。
僕も、イルマの攻撃を捌きつつ、弱点を探る。硬いが、スカーレットドラゴンに比べれば、柔らかい方だ。それにハッキリ言って隙だらけだ。
「《凍路》」
「ガア!?」
どうやら学習能力がないらしく、また引っかかった。剣を抜き、目に突き刺す。
ズクッ!柔らかい何かを貫いた感触が手に伝わる。返り血を雑に拭って、更に一歩踏み込む。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
振り回す腕を回避し、後ろに下がる。よろけたオーガの背後からローグさんの渾身の一撃が頭蓋骨を砕く。鉄が砕けるような音がした。オーガの身体が地面に倒れる。
「良い腕じゃねぇか!お客さん!」
「ローグさんも戦い慣れてるね!」
即席のコンビネーションだが、悪くないようだ。それに、スカーレットドラゴンの時と違い、ウィルが自由に動ける。ハッキリ言って負ける気はしない。
「《火矢:連》!」
ウィルの魔法陣から無数の火の矢が打ち出される。一つ一つが人の二倍はある。火の矢はオーガだけに集中し、あっという間に火だるまになるっていた。
「ガアア!!コロス!コロス!!」
「それしか言えないのか、お前は!」
ウィルの火魔法が終わったのを確認し、次の一手を打つ。
土魔法 《土楔》
身体を地面に固定する楔を作り出す。続いて
土魔法 《岩牢獄》
地面から半球型の岩の壁を展開。オーガを閉じ込める。壁の一部に窓を作る。空気を通す為だ。
「ウィル!」
「任せて!《豪炎》!」
僕の意図を察して、ウィルが魔法を発動。イルマの使ったものより遥かに強力な火が、岩の牢獄内部にいるオーガを焼き尽くす。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
オーガは断末魔を上げ暴れているようだが、関係ない。そのまま蒸し焼きになってろ!
そのまま焼き続けること五分後。ようやく静かになった。
◆◇◆
「生きてんのか、コイツ」
「みたいですね。生命力だけは大したものです」
「オーガに変身した事で、生命力が上がっていたんだと思います…」
既に人間に戻ったイルマを三人で調べる。左目は潰れ、頭からは出血し、全身大火傷を負っており、衰弱しているが、確かに生きている。
「どうする?殺すか?」
「憲兵に突き出しましょう」
「だな。そうするか」
「シーくんどうする?治癒魔法かけようか?」
「ん〜。じゃあ、軽く掛けてくれる?」
「分かった」
ウィルが治癒魔法でイルマを治す。いつ見ても綺麗だな、ウィルの治癒魔法。
「さて、馬鹿の相手は終わったし、本題と行こう」
「はい。ブレスレットは完成したんですよね?」
「そうだ。今持ってくるよ。待ってな」
そう、本来ならブレスレットの受け取りだけだったのだ。まさかこんな事になるとは思わなかったが。
「ほらよ。お客さん。これでどうだい?」
「お〜!」
「綺麗…!」
そこにあったのは、炎が円を描くような作りの真紅に輝く二つのブレスレットだった。
二人で付けてみる。手首に仄か温かさを感じる。
「何か温かいね」
「うん。安心出来る。シーくんと抱き着いた時に似てる」
「あ〜。何か分かる。ウィルとハグしてる感じに似てる」
「喜んでくれて何よりだけどさ、イチャつくなら別の場所でやってくれない?」
ローグさんにジト目で見られながら、ウィルと手を繋ぐ。温かいな。
「コロス…コロス…コロス…殺す」
〜〜
高野ヒロです。
いつも読んで頂きありがとうございます。この物語ですが、この話でストックが切れてしまい、三日か、四日に一度の更新になるかと思います。ご迷惑を掛けて申し訳ございません。
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