第25話

ブランの街に来て翌日。


今日は、試験勉強をウィルとすることに。最後の詰め込みである。お互いに問題を出し合う形にして得意、不得意な部分を照らし合わせる。二人の方が捗るかと思って提案してみた。


「シーくん、この問題分かる?」


「これは、こうして…」


「正解。シーくん勉強得意なんだね」


「ウィルには負けるよ」


「そんなことないよ。私勉強は得意じゃないから」


「え〜?嘘だ〜。さっきから全問正解だけど?」


「受験の為に頑張ったからだもん」


「てことはウィルは頭が良いんだね。よしよし」


「ふわぁ…。シーくんに頭撫でられると、ふわふわする…幸せ…ふへへ」


「あら可愛い。よーしよし」


「ワシャワシャされるのも好き…」


何かイチャついているように見えるが、気の所為である。僕達は勉強をしているのだ。決して恋人として、イチャイチャしている訳では無いのだ。これは、そう!スキンシップだ!


ちなみに図書館を借りて勉強している。周りに人が居ないとはいえ、小声で会話している。…司書の女性がこちらを何とも言えない表情でこちらを見ていた。『何イチャイチャしてやがる、コイツ等追い出してやろうか?』という視線は僕が自意識過剰だけだと思うことにした。


「ウィル、この問題は?」


「それは、火魔法の燃焼効果だね」


「正解。やっぱりウィルは頭良いな。僕も頑張らないとね」


「ふへへ。ありがとう。でもお世辞抜きにして、シーくんも凄いよ。全部覚えているんだもん。」


「アルトに教本全て暗記しろって言われているからね。あれは苦労した…」


「あ、私と同じだ。お姉ちゃんが脳筋だから全部覚えれば問題ないって」


「まさかの同じ。こんな所まで共通点があるとは」


「ふへへ。本当にキツかったよ」


「分かる。地獄だった」


同じ体験をして、話が盛り上がっていると、司書の女性に声を抑えていただけますか?と注意されてしまった。しまったな。小声のつもりだったんだが、つい、普通に話していた。迷惑をかけた事に反省。


そうこうしていると、お昼時になった。近くのお店でご飯を食べる事になった。


定食屋『ヒマワリ』


どうやら転生者が良く食べに来るお店のようだ。ニル村では見ない米や味噌といった食材を使うとのこと。オススメは何かと聞くと日替わり定食だと聞いたので、日替わり定食Aを注文。ウィルは日替わり定食Bを注文した。


日替わり定食Aは白米に味噌汁、サバの味噌煮、卵焼き、サラダというメニュー。

日替わり定食Bは白米に味噌汁、カレイの煮付け、キンピラゴボウ、サラダというメニュー。


料理が出来ると、二人で近くの席に座る。


「いただきます」


「いただきます」


白米を食べてみる。白い宝石みたいだ。ツヤツヤしているというか、キラキラ?そんな感じ。口に含むと、アツアツ、ホカホカ。噛んでいるとわずかな甘みを感じる。砂糖とは違う甘さ。なんだか、心地良い甘さだ。


「美味しい」


初めて食べたけど、米って美味しいんだ。ニル村で作れないかな。


ウィルも美味しいと感じているらしく、頬を緩めている。幸せそうな表情だ。


そのままおかずを食べる。味噌と言う調味料を使った魚の煮物。柔らかくい。食べてみると、口の中に、甘くて香ばしい香りが広がる。濃い目の味付けだが、ご飯が進む。白米はおかわりは自由なので二杯目突入。濃い目の味付けの煮物とほのかな甘味の白米。よく合う。箸が止まらない。


ウィルは三杯目に突入している。相変わらず、美味しそうに食べる。見ているこちらも幸せを感じる食べっぷりだ。


そうしていると、ウィルが何かに気付いたように、顔を上げる。どうしたのだろう。


「はっ!美味し過ぎて忘れてた!」


「どうしたの?」


するとウィルはモジモジし始める。顔を赤らめ、俯く。少しして、意を決したように、おかずをスプーンに乗せると差し出してきた。


「は、はいシーくん。あーん」


「ウィル?」


「あぅ…。恥ずかしい…」


どうやらウィルはあーんがしたいようだ。僕も恥ずかしいけど、ウィルをに恥をかかせたくない。


「あ、あーん」


「お、美味しい…?」


「うん…。美味しい」


「ふへへ…。一度やってみたかったんだ」


「じゃあ、僕も。はい、あーん」


「ふぁ!?シーくん!?」


「ダメかな?」


「だ、ダメじゃない…あ、あーん…」


「美味しい?」


「うん…。美味しいよ。シーくん…」


僕達は顔を赤くした。妙な空気が広がる。嫌じゃないけど、恥ずかしい…。周りの人も何だか微笑ましい表情を浮かべて、こちらを見ているので尚更だ。


そんな空気でお昼を過ごした後、少し休憩してから再び勉強することになった…のだが、


「スゥ…スゥ…」


「寝ちゃった」


休憩している内に眠たくなったのかウィルは静かな寝息を立てながら僕の膝の上で寝てしまった。


心地良い重みを感じながら、そっとウィルの頭を撫でる。


「ふへへ…シーくん…」


「ふふ。幸せそうな寝顔」


ウィルが起きるまで穏やかな時間を過ごす。たまには良いよね。こんな時間も。






























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