第24話

「本当になんてお礼をすれば」


「いえ、たまたまでしたから」


ノースさんの孫娘、シーラさんが何度も頭を下げてくる。それからノースさんに向き直ると怒ったように頬を膨らませている。


「もう、心配したんだからね、おじいちゃん」


「ごめん、ごめん。気をつけよう」


「無事だったから良かったけど、気を付けてよ」


「ははは、もちろんさ。本当にありがとうございました」


「いえ、いえ。無事で何よりです」


そこでシーラさんはこちらに向き直り、尋ねてきた。


「所で、あなた達の名前を、お伺いしていませんね。聞いてもよろしいでしょうか?」


「失礼致しました。シオン=アサギリです」


「う、ウィルローナ=ユーグベルトです…」


「シオンさんにウィルさんですね。街では見かけない格好だったので気になっていました。あなた達は観光で来られたのでしょうか?」


「いえ、ノヴァ学園の受験で来ました」


すると、おじいさんが驚いたように目を丸くする。


「なんと、あの学園に…。となると、あなた達は転生者なのでしょうか?」


「転移者の息子ですね」


「て、転生者の子孫です…」


「なるほど、お強いはずだ。それに場慣れしている。何度も戦場に行かれたのでしょう」


「あ、いえ、村にいた頃、ゴブリンやスライムの相手をしていたぐらいです。本格的に戦ったのは、先日が初めてです」


「なんと、でしたら天性の才能でしょうか」


「そんな大したものじゃありません」


すると、ノースさんは何かを呟いていた。


「ふむ。…となると、やはりこの子は…。…そして、ユーグベルトの姓、つまり彼女は…」


「おじいちゃん?どうしたの?」


「すみません。何でしょうか?」


ノースさんは僕達の視線に気付いた様で、緩やかに首を横に降る。


「いえ、こちらの話です。それよりも何かお礼をしたいのですが」


「お気になさらず。本当にたまたまでしたから」


「そうですか。では、今後出会う事があれば、お二人の力になりましょう」


「ありがとうございます」


「何となくですが、近々出会う気がしますよ」


「?そうなんですか?」


どういう事だろうか。


「ふふふ。まぁそんな話は置いておくとして、長々と引き止めてしまい、すみません」


「いえ、特に予定は無かったので大丈夫ですよ」


「ふふふ。ではお会いしましょう」


「そうですね。また、お会い出来たら嬉しいです」


ノースさんの家から出ると、アルトが待っていてくれた。


「お前達は色々な事に巻き込まれるな」


「あはは、確かに」


「まぁ、ご老人が無事で何よりだが。それよりも、あのイルマとか言う奴なんだが」


「アイツがどうしたの?」


「アイツは、街の人に聞く限り、最近この街に来たそうだ。横暴な奴で、街の住人も嫌がらせを受けているらしい。あのご老人と同じようにな」


「アイツ、転生者って言ってたよ。アイツも受験するのかな」


「可能性はある。十分警戒しておけ。お前達なら問題はないだろうが、ああいった手合は何をするか分からんからな」


「分かった。気をつけるよ」


「さて、そろそろ、オーラも回復しているだろう。戻るぞ」


「うん。あ、あの出店美味しそう。りんご飴だって。買おうよアレ」


「まだ食うのかお前ら…」


「お腹すいたし。ウィルはどう?」


「私もお腹すいたかも」


「てな訳で行こうよアルト」


「…お前らの胃袋は底無し沼か」


アルトはげんなりした表情で後ろをついて来る。オーラさんのお土産含めて、六個購入。僕とウィルで二個ずつの計四個。アルトは一個。オーラは一個の内訳になった。アルトも、オーラさんも一個で足りるのか心配になるけど、それでいいと言われたので、そのまま購入。意外に食が細いよね二人とも。



































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る