第23話 おじいさんを助けました。

「てめぇ、クソジジイがどこ見て歩いてやがる!」


「すみません。つい、フラフラしてしまって…」


「あぁ!?オレを誰だと思ってんだ!伝説の転生者のイルマ様だぞ!?」


鍛冶屋から出た僕達を待っていたのは、喧騒だった。それも良くない感じの。おじいさんが青年に絡まれている。これは不味い。助けに行こう。


「あの、どうかされたんですか?」


「あぁ!?何モンだよ!首つっこんでんじゃねぇ!」


「何があったのかは知りませんが、おじいさんの首を絞めるのはダメでしょう」


「ハッ。こんなジジイが死んだ所で何も変わらねぇだろ?だったら殺したっていいだろ」


「良いわけ無いだろ。どんだけ自己中心なんだよ」


「だったらテメェから死ねよ!クズが!《豪炎》!」


頬を火が掠める。いきなり魔法撃つか普通。


「《凍路》」


「うげぁ!?」


地面の凍結に気づかず踏み込んだ瞬間、転んだ。…うわ、顔面から行ったな。あれは痛い。


「でめぇ、なにじやがる」


テメェ何しやがると言いたかったのだろうが、鼻の骨でも折れたか、何かが詰まった声で聞き取り辛い。そのまま起き上がろうとすると再び転倒。額を打ったらしく、顔面から血が滴っている。


「何あれダッサ」


「偉そうに言ってアレかよ」


「てかイルマって誰だよ。知らねーよそんなの」


周囲からクスクス笑われている。うわ〜顔が真っ赤。恥ずかしさやら、怒りやらが渦巻いているんだろう。


「おぼえでおげ!ぜっだいごろず!」


捨て台詞を吐きながら走り去って―行こうとした瞬間、またコケた。周囲は笑いを隠す気もないようだ。あちこちで笑い声が聞こえた。


あんな小物臭がする捨て台詞本当にあるんだ。っと、いけない。今はあんなんより、おじいさんが大事だ。


「大丈夫ですか?」


ウィルが治癒魔法をおじいさんに掛けている。大した怪我はなさそうでホッとした。


「ありがとうね。君のお陰で助かったよ」


「無事で何よりです。立てますか?」


「あぁ…すまない。腰が抜けてしまった…」


「では、背負いますね。失礼します」


おじいさんを背負い上げる。足腰弱っているようだし、こっちの方が早い。


「本当にありがとう」


「どういたしまして。どちらに向かわれますか?」


「じゃあ、私の家までお願いできるかな?」


「お任せください。どちらでしょう?」


「あの赤い屋根の家だ。よろしく頼むよ」


「それじゃ、行きましょうか。ウィルも行こう」


「そうだね。道中の護衛は任せて!」


ウィルはフンス!っとやる気満々だ。頼もしい。


◆◇◆


おじいさんの名前はノースという名前らしい。孫娘と二人暮らしのようだ。


「このお家ですか?」


「そうだよ。ありがとう」


ノックして、誰かいるかを確かめる。すると、中から、誰かが歩いてくる音が聞こえた。


「はいどちら様でしょう?」


「すみません。ノースさんのお宅でよろしいでしょうか?」


「そうですが、祖父は出掛けています」


「いえ、ノースさんをお運びしましたので開けていただいてよろしいでしょうか?」


「今開けます。おじいちゃんどうしたの?」


孫娘さんがこちらを見て目を丸くしている。


「そうだね。家の中で説明しよう。よろしければ、あなた達も休んでいってください」


「お邪魔します」


「お、お邪魔します…」


そうしてノースさんの家にお邪魔させてもらうことになった。















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