第22話 鍛冶屋に依頼しました。
「凄く賑やかな街だね」
「うん。あ、シーくん見て!紅牛の串焼きだって」
「美味しそうな匂い…。アルト、買って良い?」
「お前達よく食うな…。あれだけおかわりしたのに」
お昼ご飯が美味しすぎて、沢山おかわりしてしまった。4杯ぐらいは食べただろう。ウィルはもっと凄い。細身なウィルだが、僕よりおかわりしていた。5杯はいったはずだ。あの身体の何処に入るのだろう…。
「良いじゃん別腹だよ」
「お前達の胃袋は、亜空間なのか…?」
アルトがげんなりした様子で答える。ちなみに、アルトもかなり食べていた。オーラさんは
「うっぷ…。よく食べられるね…。俺はもう、無理…」
との事で宿で休んでいる。食が細いのかな?一杯しか食べていなかったから心配だ。
「そろそろ、鍛冶屋に着くぞ。後で買ってやるから、先に製作依頼しておこう」
「はーい」
残念。お預けだ。楽しみは後に取っておこう。
◆◇◆
「おう、いらっしゃい。買うか?作るか?」
鍛冶屋に入った僕達を出迎えたのは、筋骨隆々のドワーフだ。歳は壮年といったところだろうか。刈り上げた白髪混じりの茶色の短髪。髭を蓄えた強面に、目元に傷跡の残るツリ目。身長は、150cmぐらいか。ドワーフ特有の背は低いが、筋肉質な身体。腕が僕の脚より太い。
「製作だ。こちらの素材を使ってブレスレットを2つお願いしたい」
「おん?ってこりゃあ、ドラゴンの核か。色的にスカーレットドラゴンか。中々、大物だな。お前らが狩ってきたのか?」
「そうだ。我らが、というか、この少年と少女が討伐した」
「へぇ、やるじゃねぇか坊っちゃん、嬢ちゃん。気に入った。作ってやるよ。どんなのが好みだ?」
そこでアルトはこちらを振り返る。お前達で決めろという事だろう。
「その、何と言うか、ペアルックが良いなって…」
「ぺあるっく?なんだそりゃ?」
「僕たち2人で付けるものが欲しいんです。だから同じ物がいいかなって…」
「あん?何だお前さんら夫婦か?」
「いえ、恋人です」
「カッカッカ。初々しいな、お前さんら。儂と妻を思い出すな。あの頃の妻は花のように可憐で、儚げで…」
「親父。客が困ってんだろ。悪いね、お客さん。親父の悪い癖が出たみたいだ」
職人の話を遮ったのは、若いドワーフだ。歳は青年といったところ。身長は160cmほどだろうか。赤毛の短髪に小柄ながら、筋肉質な身体。青年は申し訳なさそうにこちらに謝ってきた。
「なんだと〜?良いじゃねぇか。妻の自慢して何が悪いってんだ」
「それで客困らせたら意味ないだろうが。あぁ、悪い。俺の名は、ローグだ。こっちのジジイが、俺の親父で、ローガン。こんなんでも、国一番の鍛冶師だ」
「てめぇ、ローグ。一端の口をきくようになったじゃねぇか。えぇ?」
「親父の惚気話で客が逃げんだよ。いい加減にしろや!」
「んだとコラァ!妻を大切にするのは当たり前だろうが!」
「仕事やってから言えや!この前なんか客に3時間も惚気やがって!そんなんだから万年赤字なんだろうが!」
そのまま言い争うローグさんとローガンさん。仲が悪いと言う感じではなく、一種の家族間のコミュニケーションみたいだ。ウィルも僕の後ろに隠れているが、悪意といったものはないらしく、ひょこっと顔をのぞかせている。
「シーくん、仲いいねあの二人」
「そうかな。そうかも」
喧嘩するほど仲が良い感じだろうか?
それから30分程経った頃、ようやく話が終わった。
「ちょうど予定が空いた所だ。そうだな、2日目には出来ているだろう。その時になったら取りに来てくれ」
「分かりました。後それと」
「ん?まだ何かあんのか?」
「また今度、奥さんの話を聞かせてもらっていいですか?」
「え?お客さん?」
ローグさんが困惑気味にこちらを見る。その目には『コイツ、正気か?』と言う感情が見え隠れしている。
「夫婦関係が末永く続く秘訣が知りたいです。この子とずっと一緒に居たいので、よろしければ教えて頂ければと思いまして。お願い出来ませんか?」
「シーくん…。ふへへへ」
ウィルは顔を真っ赤にしながらも嬉しそうに抱きついてくる。
「ますます気に入った。いいぜ。何時でも話してやる」
ローガンさんは上機嫌に笑う。やったぜ。
こうして僕たちのペアルックのブレスレットが出来る事になった。楽しみだ。
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