第9話 魔法講座を受けます。

翌日。オーラさんとの語らいの時間で彼がどんな人物なのかなんとなく分かった気がする。紳士然としているが、アルトに影響されてか、割とやんちゃしていたそうだ。特に魔獣の討伐では、数百体のゴブリン相手に火属性の魔法で燃やし尽くした話を聞いた時は、内心ドン引きした。ゴブリンの巣に向けて、火を放ったらしい。後からアルトにゴブリンを燃やしている時は満面の笑みだったと、指摘されたそうな。ヒャッハー!!だの汚物は消毒だー!!だのと叫んでいたとかいないとか。


後、ウィルとアルトの空気が昨日とは違う。昨日の馬車の中では、重々しい空気だったのに、ずいぶんと打ち解けたようだ。2人で親しげに話している。


「…強…精力剤…飯に…」


「…布団…忍び込…」


「…手足を…に縛り…」


…聞こえてくる単語が不穏な気がしたが、聞こえないふりをした。ウィルが僕を見る目が怖いのもきっと気の所為だ。


◆◇◆

そうこうしていると、次の町に到着した。コルトの町である。学園にいくまでの最後の町だ。今までの村とは違い、やや、大きめな町だ。ここで昼食と小休憩する運びとなった。


「ふむ。ここまでは順調に来ているな」


「まぁ、この辺は治安が良いからね。魔獣だってほとんど出ないらしいし」


「そうは言っても気を抜くんじゃないぞオーラ。昔はこの辺りにBランクのオークが出たらしいじゃないか」


「分かっているさアルト。ただ、この街の自警団が街の巡回をしている。無理に俺達が闘う必要は無いよ」


「そうだな。私達はあくまでシオンとウィルの護衛だ。基本は彼らに任せるさ」


大人組がこれからのことについて話している。僕達入学組はというと近くの広場で簡単な魔法の勉強をしていた。というよりは、ウィルに魔法の使い方を教わっていた。やっぱりというか、ウィルは魔法に詳しい様で、見習いのような僕にもわかりやすく教えてくれている。


「シーくん魔法、魔力はね小さい魔力の粒から出来てるの。その粒は魔粒子って言われてる」


「ふむふむ」


「魔粒子はこの世界の全てを構成するものなの。私やシーくん、動物や植物、海や陸全部だよ。世界そのものと言ってもいいかな」


「魔法はね、この『魔』粒子を操る方『法』として考案されたものなの。だからね、魔法を使うということは、魔粒子を意識することが大事なんだよ」


「魔粒子が世界を作っているなら、今僕は魔粒子の中で生きているってこと?」


ウィルに尋ねる。いつの間にかウィルの授業に惹き込まれていた。


「正解だよシーくん。さっきも言ったけど大事なのは意識すること」


「例えば、今日の朝ご飯はパンと煮豆のスープにサラダ、目玉焼きだったよね。その味が分かるのは味覚があるから」


「シーくんの声が聞こえるのは聴覚があるから」


「シーくんの姿が見えるのは視覚があるから」


「シーくんの香りが分かるのは嗅覚があるから」


「こうやって手を繋いで暖かいと感じるのは触覚があるから」


「小さなことかもしれないけど、でも、これって世界に触れているよね?だって魔粒子は世界を作っている。シーくんに触れていることは、世界に触れていることと同じなんだよ」


「普段意識したことなかったな。当たり前だと思ってた」


「当たり前のように私達は、全身の感覚で世界に、魔粒子に触れている。世界に触れていない人はいない。必ずどこかで繋がっている。その繋がりが魔法を生むんだよ。後はそれに気づくかどうかだよ」


「世界との繋がりか…僕に気づけるかな?」


「シーくんなら大丈夫だよ。そうだ、シーくんの得意な水属性の魔法で考えてみよう。水も魔粒子で出来てる。水には色々な姿がある。寒い時は氷になる。暖かくなると水に戻る。暑い時はどうなるか分かる?」


「確か水蒸気になるんだよね?」


目には見えないが存在する。いや、常に周りにある。普段は意識しないが、確かに触れている。それは魔粒子に触れていることと同じだ。


「正解だよ。シーくんは水が温度によって姿が変わることを知っている。シーくんは無意識だったかもしれないけど、知識や経験によってこの世界の一部に触れていたことに気付いたんだよ」


「なるほど、そう捉えることもできるのか」


「例えば、水魔法で氷の壁を作るとするよ。シーくんはどんな風に作る?」


「地面が凍ったのを思い出して、地面から作っていくかな。霜柱とかを良くイメージとして使うかも」


「それも、正解だよ。ただ、魔粒子は高温で活発に動いて、低温では動きが遅い性質があるって知ってた?」


「水も魔粒子で出来てるからその性質が適応される。この魔粒子の動きが、水の色々な姿を作っている。魔粒子の動きが活発なら水蒸気、逆に動きがなくなると氷になるっていう感じだね」


「今までのを踏まえて、一例だけど氷の壁を作る時は、近くの水の魔粒子の動きがゆっくりになっていって、やがて集まって固まって、壁を作っていくイメージをするのもありかも」


「それも知らなかったな。次からはそうしてみようかな」


「うん。どんどん試してみよう。シーくんならきっと出来るよ」

 

「うん。頑張るよ」


「魔法にとって知識や経験は切っては切り離せないものなんだ。だから、魔法使いは知識を求める。経験を積んでいく。それは、世界に触れることだから。世界に触れるということは、新しい魔法の手掛かりになるかもしれないから」


「つまり、魔法使いは勉強が大切ってこと?」


「うん。そうなっちゃうね」


「魔法使いは大変だなぁ」


「ふへへ〜。一緒に頑張ろうね」



〜〜〜

※魔法の説明が難しいので、編集するかもしれません。ご了承ください。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る