第4話 初めての友達が出来ました。《SIDE:ウィル》
「僕と初めての友達になってください」
シオンくんは手を差し出している。その顔は真剣そのものだった。そこに悪意は欠片もなく、純粋な想いがそこにあった。
私と友達になってくれるの?私と友達でいいの?
嬉しい。凄く嬉しい。私にそんなことを言ってくれる人は初めてだった。いつも周りから怖がられていた私はいつしか、人を避けるようになった。
元々人見知りが激しかったのもあるが、周りからの侮蔑や嫌悪、嘲笑の視線が怖くなり、悪意が分かるようになるとパニックにもなった。
人に何気ない視線を向けられただけで、頭の中が真っ白になる。話しかけられただけで、全身から汗が止まらなくなる。酷い時は、魔法で逃げてしまう。そのせいでシオンくんに迷惑をかけてしまったのに。
「わ、私でいいの…?」
確認の為に問いかける。怖い。でも、知りたい。シオンくんの答えを。
「ウィルがいいんだよ」
シオンくんは微笑を浮かべながら即答してくれた。
「私こんな性格だから…、人付き合いも苦手だし、すぐ逃げる弱虫だし、うまく人と話せないし…。シオンくんに迷惑がかかると思う…。だ、だから私なんかが…友達は…やめておいたほうが…」
自分を責めてしまう。自分の言葉で泣きそうになる。シオンくんと友達になりたい。でも迷惑がかかる。かけてしまう。それで、もしシオンくんに嫌われたらと思うと怖い。だから予防線を張る言葉になってしまった。私は本当に弱虫の卑怯者だ。
でも、シオンくんは首を横に振った。そして、優しい声と瞳で私に言ったんだ。
「ウィルと出会って、数分しか経っていないしウィルのことは知らないことが多いよ。むしろ知らないことばかりだ。だから僕は、ウィルの言葉をまだ否定できない。でも僕はウィルを知りたいんだ。知りたいと思えたんだ」
「私を、知る?」
どういうことだろう?友達のいない私は分からない。
「ウィルの好きなもの、苦手なもの。得意なことや、不得意なこと。今までのことや、これからのこと。いっぱい話したいことがあるんだ」
「話したくないことなら無理に話さなくてもいい。楽しいことや嬉しいこと、話したいことだけでもいいよ。沢山話そう」
「で、でも私おしゃべりは苦手で…」
「僕もそんなにおしゃべりは得意じゃないかな。でも、不思議なんだけどね、ウィルとなら何でも話せる気がしたんだ」
シオンくんの言葉は私の言葉でもある。人と接するのは大の苦手。人見知りをこじらせすぎて、人と話すどころか、目を見ることすらまともに出来ない。でも、シオンくんになら。見ず知らずの私を助けてくれて、話すのが苦手な私のことを嫌がらず、優しく接してくれる彼ならば私は
「でも…、私なんかに…」
弱虫なところがまた、顔を見せる。本当に、こんな私は大嫌いだ…。
「『私なんか』じゃないよ。ウィルだからだよ」
シオンくんが答える。さっきと同じ答え。でも、さっきよりも力強い。
「僕は君と仲良くなりたい。出会って少しだけど、そう思ったんだ」
「これから色々なことが沢山あると思う。ウィルは僕に迷惑がかかるっていうけど、それは、僕も同じだ。世間知らずだし、空気が読めてないってアルト、育ての親にもよく言われてたし、それに魔法や剣術だって半端だ。きっとウィルにも迷惑をかけてしまう」
「そんなこと…ないよ」
シオンくんを迷惑だなんて思わない。彼と一緒ならどんなことも楽しいと思う。どんな困難でも乗り越えられる。そうだ、私はとっくに気付いていた。私の願いは
「でも、ウィルと一緒にやっていきたいんだ。」
「楽しいことを分かち合いたい。辛いことは共に乗り越えたい。どうしようもないことは…まぁ2人で考えよう」
「あ、あぅ」
「もう一度言うよウィル」
「僕と友達になってください」
シオンくんが手を差し伸べてくれる。だから、私は
「うん…うん!!」
「これから、よろしくお願いします!!」
シオンくんの手を取った。
私は弱虫だ。でも、シオンくんがそばにいる。そばにいてくれる。だから私は強くなると決めた。彼と手を繋ぎ、私は私の弱さを乗り越えてみせる。
彼の隣を歩くために。彼と、永遠を歩むために。
この先もずっと一緒だよ。シオンくん。死が二人を分かつまで、ずっと。いや、死んでも一緒がいいな。ふへへ。
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