第2話【落雷】
【来客】
俺は、この日に来客があることを七日前から知っていた。
雷魔法の能力が開花し、父親がギルドへ手紙を出してしまったのだ。
この世界は摩訶不思議だがそう思うのは俺だけで、この世界の人にとっては当たり前なのだろう。
【鑑定士】
コンコンと玄関がノックされ、俺は率先してドアを開けた。
ギルド職員の制服を着て、眼鏡をつけて黒髪で短髪の男が立っていた。
俺よりも背が高く、見下ろすようにしている。
「……エンキ氏のご子息はどちらに。」
男は冷静そうで静かな声で、ぶっきらぼうに言った。
「あ、俺です。あなたは?」
俺の言葉に、男は顔を顰めた。
「十七歳と聞いていましたが…予想以上に幼いですね。」
(ぐっ…こいつ、言いやがった!)
俺は男だが、女性みたいな顔つきだったり背が低いせいで召使いや両親からも「かわいい」だのなんだの言われていたが、この男が言うと何故か腹が立つ。
「……お邪魔しますね。」
男は侍女に案内されて応接間のソファに座るが、俺だけが向かいのソファに座っている。
親父!お袋!なんで居ないんだよ!なんか気まずい!!
そう心の中で叫びながら、男を睨む。
「僕の名前はテラ・ニーチェ、鑑定士です。」
テラは紅茶を飲みながら、そうやって自己紹介した。
「まあ普段は狩人組織で仕事しているんですけどね……」
テラはカバンから羊皮紙の巻物を取り出し、机に広げた。
「……イヴァンさんが薪割りをしていた時に雷が落ちたとお父様からお聞きしました。周囲が黒焦げになったらしいので、高度な鑑定魔法を使いましょう。」
そう言いながら、彼は俺に手を差し出した。
「物理的に接触していないと正確な結果が出ません、僕の手を軽く握ってください。」
「あ、ああ。わかった。」
【拮抗】
俺は彼の手を軽く握った。
すると何らかの呪文を唱え始め、周囲に魔法陣が浮かび上がった。
それに拮抗するように俺の髪の毛がバチバチと鳴って、魔法陣に電気がまとわりつく。
羊皮紙に何かの図や文字が浮かび上がり、それらが完全に描かれたところで、テラが俺の手を離した。
「ふむ…」
テラは羊皮紙を手に取って読み始める。
その顔にはうっすらと汗が滲んでおり、いっそう眉間にシワが寄っている。
「……三十年前、約百年は続く現象である"神産み"の兆しが見えた頃です。ですが…その百年間に生まれたとはいえこんな能力、いや羊皮紙に名前が書かれるほどの強いものが開花するのはおかしいです。」
俺は、テラの少し動揺した口調が気になった。
「どういうことですか?」
彼は無言で俺に羊皮紙を手渡した。
「読んでみてください。」
【別れ】
まず一番初めの単語は、「霊雷」だった。
この能力は雷を使う能力らしく、制御が困難。
いちばん望ましい武器は杖か魔導銃。
"神産み"で生まれた子供が持っていることがあるらしい。
テラは説明を続ける。
「ここ十数年、鑑定を受けた人達にこのような名前のある能力を持つ者たちが多いんです。…それは記録でも明らかになっています。」
テラは羊皮紙をカバンにしまう。
「とりあえず、ギルドに来てください。このような逸材を放っておいてはいけません。」
そして、テラは両親と話をした。
俺がとんでもなく強い能力を持っていることや、ギルドに所属した家族を持つ親族は一生かかっても使い切れないほどのお金が渡されることも説明されたのだった。
そして、俺たちは王都まで向かうことになった。
馬車に乗っている間ボーッと、窓を見ていた。
俺の住んでいる場所は、王都に近いので馬車なら半日程度だ。
ギルドの仲間たちはどんな人なのだろうか。
――続く
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