『ポジネガ少年』【第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部】

十晶央

ポジネガ少年

人よりも速い心音てのひらに 今日からきみはぼくの友だち


少年の内で狂獣唸るのを誰も知らない彼自身さえ


魔術師になる術をページの上香箱座りの使い魔に問う


己が首第一ボタン固く締めライカ犬よりましな人生


僕だって冒険が好きだよ 本の内か外かが違うだけでね


本捨てて街出ても義務教育 カッターを向けるべきは自か他か


Unidentified未確認 Flying飛行 Boy少年翼広げ星瞬く間銀河の果て


生まれながら投獄されし脳髄迷宮 君だけが蜘蛛の糸


流星雨浮かべた紅茶飲み干し少年の内に銀河流るる


少年切り開けば薔薇の溢るる芳香に窒息しタナトス


桜色やわらかにる桜色 鏡写しにほころぶ彼等


劇場鏡地獄 愛も憎悪も我が身に跳ね返り乱反射


曹達ソーダすいドロップ舌先で拾えば黄水晶シトリンの鋭き流星ドロップ


あの夜天そらの穴から金の目が覗いているのを大人は月と呼ぶ


あの子は昼間でも星が見えるって きっと瞳の中にあるのさ


凌霄花ノウゼンカズラ巻きつきて夏至 せめて君とは友達でいたかった


僕等いつまでいようか 宇宙の寿命は1400億年


投げ出した内腿の陰潜む青 蝶の刺青しせいは逆さまに飛ぶ


少年は鳥 心赴くままどこまでも高く高く飛び立つ


勝手ながら落丁・乱丁少年はおとりかえいたしかねます。

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