悲報:二人は好みじゃない

「リサです。ミアちゃんのお嫁さんです」


可愛らしくふふっと笑う姿に、ノーツとアルトはぽかんと口を開けた。

リサさんの方が一枚上手ですね。


「そうなんです。綺麗でしょう?しかもお料理がすごく美味しいんです」


何だか呆然としている二人を席に案内して座らせると、たたたっと軽やかな足音がして、何かが腰に抱きついた。


「違うもん!ミア姉のお嫁さんはリヤだもん!」

「そうそう。そうだったね。はあ可愛い!で、二人は何食べます?」


抱きついてきたリヤちゃんを抱きしめつつ、頭を撫でながら注文を取ると、やっと我に返った二人が店の壁に貼ってあるメニューを見る。


「特製ランチの大盛りと、今日の煮込み料理を頼む」

「俺は特製ランチで」


リヤちゃんは注文を聞くと、てきぱきと奥に伝えて、水の入ったカップを二人の前にとん、と置いた。

私は奥に行くと、賄い料理の手伝いをする。

そして、ノーツとアルトの席で御飯を食べる事を伝えた。


「今日は向こうで二人と食べますね」

「ねえねえミア姉は、どっちと付き合ってるの?」


突然の爆弾発言である。

お嬢さんはおマセさんですな。


「えー?私はリヤちゃん一筋だよ?」

「そういうのいいから」


女子ってこういうとこあるよね。

めっちゃ冷たいじゃん?


「どっちでもないよ。二人は先生みたいなもので、今日の依頼にちょっと付き添って貰うだけ。リヤちゃんはどっちがいいとかあるの?」

「うーん、どっちも趣味じゃないかなー」


辛辣すぎぃ。

筋肉と影のある男は駄目、と。

私は心のメモに記した。


「ねーママは?」


おっと、そっちにも聞く??

でも、私も知りたい。

知りたいので、黙って見ていると、リサさんはうーん、と眉を下げる。


「そうねぇ。どっちも違うかなぁ?同じ歳くらいの男性の方が素敵に見えるのよね」


あー年下駄目かぁ!

残念!


私は出来上がった賄い御飯を持って、リヤちゃんはランチを持って、席に戻った。


「お待たせしました」

「向こうで一緒に食べなくていいのか?……その、嫁と」


あれ?本気にしてる?

私は思わず頬をほんのり染めつつ、目を逸らしているノーツを見つめた。


「ええ。アルトさんとノーツさん二人きりにすると喧嘩するかキスしそうなので」

「それはない」


二人の声が重なった。

息はぴったりですな。

でも喧嘩はするよね。

私は二人の間の席に座ると、先程の事を思い出した。

一応伝えないと、いけませんね。


「ここで、非常に残念なお知らせがあります」


私は沈痛な面持ちを作って言うと、二人が真剣な顔になる。

予定が変更になったのか?と思ったのかもしれない。

でも違う。

リヤちゃんが、煮込みスープをノーツの前に置いた。


「リサさんとリヤちゃんは、二人の事は趣味じゃないそうです」

「そういう情報はいらないんだが……?」

「わざわざ言う必要あるか……?」


ノーツとアルトが非常に悲しそうに言うので、私も心を鬼にした。


「だって、二人とも!あんなに!綺麗で!可愛いでしょう?余計な夢を見ないようにという親切です」

「小さな親切大きなお世話って言葉知ってるか?」


アルトが目を眇めながら、フォークで私を指してくる。

私は賄いを食べながら、答えた。


「食器で人の事指すのはお行儀が悪いですよ。ほら食べて食べて。美味しく栄養摂ったら薬草摘みです」

「付いてくる必要なかったかもな……」

「うるさいぞ」


おや?

今更薬草摘みの監視係がつまらないと気づいたのかな?


私はアルトを見て、頷く。


「別にご飯食べたら帰っても大丈夫ですよ?」


私の言葉で、何故かぱあっとノーツが明るい顔になり、逆にアルトが渋い顔になる。


「いや別に。用があるわけじゃねーし、すぐそこだろ?」

「まあ、すぐそこですけど……」


付いてくると分かったからか、ノーツが溜息を吐いてもりもりとご飯を食べ始めた。

何だろう?

ノーツが犬だとすると、アルトは猫かな?

楽しそうにしてると邪魔したい人なのかもしれない。

性格悪い。

でも猫だと思うと可愛いから不思議。

実際は猫じゃないから微妙だけど。


私は賄いを味わいつつ、冒険についての話を二人に聞くことにした。

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