2.大事な発表

周りの人と話しているとお兄様とハルト陛下が大広間の中央に向かって歩いて来た。少し早く王の座を受け継ぐことになったハルト・ファステナ陛下はお兄様の友人でもある。あまりにも身分が違うのに、ハルト陛下はお兄様を凄く信頼していた。しかも私が熱を出してしまった時には家まで来てくれてお兄様と一緒に看病してくれたのだ。みんなから好かれるのも納得できる。それに私はハルト陛下がお兄様と友達になってほしいと言ったところを実際に目撃してしまった。どうやら友達になりたいと言った理由は、素直に相談出来る相手がお兄様だけだからとのこと。ハルト陛下は親や執事が厳しく接してくるうえに、いつも兄にいじめられてしまうので隙あらば逃げ出すような日々を過ごしていたらしい。だけどある日お兄様の訓練を受ける姿を見てからはカッコいいと思うようになり、お兄様と話すと頑張れたと言っていた。ハルト陛下に気に入られたなんて私のお兄様は本当に凄いな。後にハルト陛下の側近になっちゃったし。それはそうと本当ハルト陛下ってイケメンだなぁ…。おかげで周りにいる女性たちがハルト陛下を見ようと中央に集まって来るよ。結局気が付いたら目の前は女性たちの大群で見えなくなってしまった。しょうがないから遠くから見ることにしよう。

「この度はみんな集まってくれてありがとう。今日は大事な発表があるからぜひ落ち着いて聞いてほしい。それじゃあアイル…頼んだよ。」

「お任せください。」

お!!あんまよく見えないけどついにお兄様が登場!!でもこんなに人がいる大広間でプロポーズするなんて大胆な気がする。パーティーの途中で抜け出してからお庭とかバルコニーでやるのかと思っていたんだけどな。いやまだここでプロポーズすると決まったわけじゃないか。そう思い頭を上げた途端急に体がふらついた。さっきまでは比較的落ち着いていた甘い匂いが突然強くなったのだ。どうしてお兄様が現れた途端に匂いが強くなったのか理解できない。まさかお兄様が魅了魔法を使うとしているの?それならなおさらこの目で見ないと!!悪いことしてたら私が止めてやるんだから。

「みなパーティーを楽しんでいるなか非常に申し訳ない。アリス・パルライトは前に出てきてくれ。」

お兄様がそう言うと周りが驚いた。アリス様も驚いた表情をしながら移動している。

「陛下からの願いで俺から言い渡すことになった。」

ん?言い渡す?言いたいことがあったんじゃなくて?

「お前…聖女様をいじめたらしいな。」

「…え?」

お兄様の低い声が響いた後、周りの人たちがコソコソ話し始めた。

「やっと罰せられるのね。」

「ほんと聖女様に嫉妬していじめたなんて可哀そうな人よね。」

アリス様は震え始め、私と同じく困惑しているみたいだ。

というか待って待っておかしいよ。アリス様が周りから嫌がらせを受けていた話を一緒に聞いたはずのお兄様がまるで断罪しようとしているみたいじゃない!!話を聞いた後だってしばらくお兄様がアリス様と一緒に行動して護衛してたくらいなのに!!いやでも理由を聞いてから判断しなきゃ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る