1日ひと小説
ANNZY
弁当
私の母の弁当は味が毎日違う。おかずの見た目は同じであっても日ごとに違う顔を見せる。特に卵焼きは全くの別物に感じることがあり、塩辛い日もあれば甘くそっと包み込んでくれるような、だし巻き卵の日もある。昨日の卵の調子が良かったからと云って油断してはいけない、口の中に塩を放り込まれるからだ。地雷のようなその卵焼きは下手すれば本当に自分の体のどこか血管が爆発する時が来るかもしれない。他にもプチトマトが色調要員として入っていることがある。基本的に茶色いおかずの面々の中に紅一点、一つ入っているだけで引き締まるのだが、入っている場所が唐揚げの隣だったりする。そうなると状況は一変、唐揚げに触れている部分は熱で溶け中身が飛び出す凄惨な状態となる。味もまたフレッシュな甘酸っぱさの足を引っ張るように油の重さが際立つ。醤油の唐揚げは嫌いだから塩胡椒の唐揚げを入れて欲しいと言っても否応なく醤油の唐揚げが入っているし、海老の天ぷらに他のおかずのタレが絡まってよくわからない味になることもあるし、3色弁当と言われた弁当は決まって二色であるし、今日はうどんだよと渡された弁当は麺と汁が既に一緒に入っており温くなったそれは口がへの字に曲がり体が受け付けなかったし、弁当の仕切りがアルミホイルで米が取りづらいこともあったし、気分で弁当がなかった日もあったし、文句をつけるとそれなら自分で作れと言われるし、そんな母の弁当だ。味わい尽くした弁当だ。
1日ひと小説 ANNZY @ANNZY
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