#15
「白状致します。私、木之実千秋は、夜な夜な全裸で外を逍遙することを、この上ない悦びとする、どうしようも無い変態であります。公開懺悔室にて伏せさせて頂いた趣味というのがこれであります。
私が『禁断の果実』と呼ばれていることは存じております。私はこれを聞いた時、これ以上私に似合う仇名は無いだろうと思いました。知っておりますか、聖書に於いて『禁断の果実』を食べた人類は、嘘を吐くことを覚えたのです。つまり、汚れてしまったのです。それによって楽園から追放された訳ですけれど、ええ、私の場合追放されるのは社会からでありましょう。しかし、その背徳感がまた、私を公然猥褻へと駆り立てるのでありました。
『禁断の果実』の味を覚えてしまった私は、最早止まりませんでした。元来、そういった気質はあったのだと思います。私の描く絵がその片鱗であります。思えば、絵画とは言えども、己の裸を大衆へ大々的に公開するだなんて狂っております。
ええ、そうです無一様。貴方様の仰っていた全裸の乙女は、まず間違いなく私であります。ごめんなさい、黙っていて。あの時は咄嗟のことに気が動転して直ぐに逃げ出してしまったので、貴方様の顔は全く覚えていなかったのであります。けれど今ならば確信を持って言えます、貴方様が惚れたというその乙女は私です。
それから伊吹さん。あの時は本当にごめんなさい。貴方はこんなどうしようもない私を受け容れようとしてくれたのに、私は貴方を疑ってしまった。ごめんなさいごめんなさい。今更許して欲しいだなんて、虫が良いことは分かっています。だから許されなくても仕方ありません、罰なり何なり甘んじて受け容れます。けれど、もしもそれが終わったら、昔みたいに、私と仲良くしては頂けませんか。昔のように、友達で居てくれませんか」
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