鏡の森のアリス

くまんばち

第4話「月の水たまり」

 アリスは美しい花畑を後にし、キャロットが教えてくれた月の水たまりに向かって歩き続けた。道中、いろんな逆さまの風景を楽しみながら進んでいくと、やがて水たまりが見えてきた。水たまりは透明で、空に向かって流れ出しているように見える。アリスはその不思議な光景に目を奪われた。


「ここが月の水たまりなのね」

 アリスはつぶやいた。


 ほとりにたどり着いたアリスが水たまりを覗き込んでいると、水中から大きな泡がポコポコと浮かび上がり、その時、水たまりが突然話し始めた。


「元気出して! あなたのことを応援しているわ!」


 アリスは驚いて後ずさりしたが、その言葉に少し勇気をもらった。すると、近くで頭をひねっているバッタが見えた。彼は良いアイデアが浮かぶと言われ、本当に頭をひねってしまっていた。

「ああ、これで何か良いアイデアが浮かぶはずなんだが…」

「それは違う意味だと思いますよ」

 アリスは笑って答えた。

 その隣でバッタは月を掃除しているようだった。

「月がきれいですね、と言われたから掃除しているんです」

 バッタが説明した。

「そ、それは比喩なんですけど…」

 アリスは困惑しながら答えた。

「ヒュー、うまくいかないな…」

 バッタはため息をついた。

「でも、あなたの努力は素晴らしいと思いますよ」

 アリスはバッタに微笑みかけ、励ました。


「ありがとう! 君もこの世界を楽しんでね」

 バッタは嬉しそうに跳ねて答えた。

 アリスはバッタに別れを告げ、再び月の水たまりを見つめた。



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