鏡の森のアリス

くまんばち

第2話「逆さまバッタ」

 馬車で進んでいくと、逆さまに言葉を話すバッタに出会った。


「すいまわせん、こんばんは!」


「え?こんばんは? まだ昼間ですよ」


「ょうこそいらっ、ですましおはよう!」


「逆さま言葉って、変なの…」


 アリスは混乱しつつ、逆さまバッタの案内で次の場所に進むことになった。彼に導かれて、アリスは奇妙な森にたどり着いた。木々は逆さまに生えていて、空には逆さまの家が浮かんでいる。

「この世界では、みんな逆さまなのね」

 アリスはつぶやいた。

「アリスさん、ここでは考え方も逆さまにしないと、うまく進めませんよ」

 逆さまバッタが言った。

「どういうことですか?」

 アリスは尋ねた。

「例えば、前に進みたいなら、後ろに歩くんです」

 アリスは試しに後ろ向きに歩いてみた。すると、不思議なことに、前に進むことができた。

「わあ、本当に進んでる!」

 アリスは歓声を上げた。


 森の中を進んでいくと、逆さまの小川が流れているのを見つけた。水は上から下へではなく、下から上へ流れている。


「この小川を渡るにはどうしたらいいのかしら?」

 アリスは逆さまバッタに尋ねた。


「簡単です。普通に泳げば、逆さまの流れに乗って渡れますよ」


 アリスは恐る恐る小川に入った。逆さまの流れに逆らうことなく、無事に向こう岸にたどり着いた。


「逆さまの世界も、悪くないわね」

 アリスは笑顔で言った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鏡の森のアリス くまんばち @adtolib

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る