Dream

* Dream


 わたしは目を覚ました。そこは、わたしの部屋だった。


(ゲームセンター? R? NT5? ……誰だろう?)


 わたしは周囲を見回した。そこは、たしかにわたしの部屋だった。何ということのない土曜日の、休日のわたしの部屋。さっきまでの光景は、何だったのだろう?


 わたしは、恋人であるRのことを思い出した。リーダーであるNT5のことを思い出した。ベリー・ショートの、でも本当は女らしいKのことを思い出した。


 ゆるゆると起き上がって、顔を洗う。水道の蛇口が、ひどく重く感じられた。そして、水を出しっぱなしのまま、数分放心している……。


 わたしはオーブン・トースターでパンを焼き、マーマレードをつけて食べる。片手には、コラーゲンとミルクを入れたコーヒー。わたしは嘆息を吐く、すべては夢だったのかと。ただ意地で取っている新聞を手に取ると、今日は5月6日だった。……そうか、ゴールデン・ウィークも今日で終わりなんだ……


 午前中は何事もないままに過ぎて行った。


 そして、トントンとドアをノックする音。


「すみませんねえ、この部屋、呼び鈴が壊れていますね?」ドアを開けると、中肉中背の男が言った。


「わたし、こういう者でしてねえ……」

「刑事さん?」


 刑事ドラマのように、警察手帳だけを男が隠すように見せる。


「あの、どんな要件でしょうか?」

「オタクが……つまりあなたが、違法な薬物を使用している、という通報がありましてね? まあ、つまり、型通りの捜査なんです。ご近所様に迷惑がかかってはいけないと」

「よく……分かりません」

「大丈夫です。わたしたちはよく分かっていますよ。では、行きましょうか?」

「待ってください、わたし、何も……」

「おや、あなたはコーヒー派ですか? よく香っていますよ」

「そんなことじゃなく!」


 そう言った途端、わたしは両手をつかまれた。抵抗できない。


 昨夜の夢。……R、NT5、Kの顔が脳裏に浮かんだ。そして、現実と夢とが逆転する。……わたしはこの後、夢を裏返しにしたような地獄を味わうことになる、そう直感した。Rに助けを求めたい、Kに助けを求めたい! でも、わたしを救う者はなかった。この社会のなかで、わたしはすでにぎりぎりに切り刻まれ、“病者”という烙印を押される存在だったからだ。


 視界のはしに、Rによく似た男(警察官)の顔があって、わたしに向かってただひたすらに優しく微笑んでいた……


 そう、すべては「夢」。謎のままだ……

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白石多江 @tae_392465

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