第8話 愛のメッセージ

暖かい春の午後、陽菜と麻衣は再び公園で会うことにした。桜の花びらが風に舞い、空は澄み渡っていた。陽菜は少し緊張しながらも、麻衣の話に期待を抱いていた。麻衣は亮太が高校で作った未完成の曲「Lemon」を聴かせると言っていた。


二人は公園の一角にある静かなベンチに腰を下ろした。麻衣はバッグから小さなポータブルスピーカーを取り出し、亮太が録音した音源を再生する準備を始めた。周囲には鳥のさえずりと風の音が優しく響き渡り、二人の心を落ち着かせていた。


「亮太君がこの曲を作っているとき、彼の目にはいつも特別な輝きがありました」と、麻衣は語り始めた。「彼はこの曲をお母さんに捧げたいと言っていました。亮太君の最後の愛のメッセージです。」


陽菜は涙を浮かべながら麻衣の言葉に耳を傾けた。麻衣は再生ボタンを押し、スピーカーから流れる音楽が二人の周りを包み込んだ。


曲の最初の音が響くと、陽菜の心には深い感動が広がった。亮太のギターの音色は澄み切っていて、彼の魂が込められているように感じられた。曲は美しいメロディーと共に、彼の愛と感謝が溢れていた。


陽菜は目を閉じて、亮太がこの曲を作っていた瞬間を想像した。彼の指がギターの弦を弾き、心からの思いを音に乗せていたのだろう。曲は次第に感情を高め、クライマックスに向かっていく。


「お母さん、この曲を聴いてほしい。僕の気持ちを込めて作ったんだ」と、亮太の声が心の中で響いたような気がした。陽菜は涙を流しながら、彼の愛が自分に届いていることを感じた。


曲が終わると、陽菜は深く息をついた。彼女の心には、亮太の愛と感謝が確かに届いていた。麻衣も涙を浮かべながら、陽菜の手を優しく握った。


「亮太君の思いが、ちゃんと伝わったんですね」と、麻衣は微笑んだ。陽菜は頷き、息子の愛が永遠に自分の心に残ることを実感した。


「この曲を完成させるために、私たちで頑張りましょう」と、陽菜は決意を新たにした。彼女の心には、亮太の夢を引き継ぐための強い意志が芽生えていた。


公園の桜の花びらが静かに舞い散る中、陽菜と麻衣は亮太の未完成の曲「Lemon」を完成させるための新たな一歩を踏み出した。亮太の愛とメッセージを胸に、彼らの旅は始まったばかりだった。春の風が彼女たちの髪を優しく揺らし、希望に満ちた未来を予感させるように暖かく包み込んでいた。

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