第17話   彼女から受けた導き

 彼女との生活が、こんなにも詰まりなく進むとは。何もかも予想外で、アールベリアは始終びっくりさせられっぱなしだった。


「夕飯、彼女が全て手作りするなんて……」


 多少幽霊に苦手意識を見せる一面はあるものの、ここでの暮らしを受け入れようと積極的な姿勢には、本当に驚かされた。


 数ある自室のうちの一部屋に戻ると、ベッドに腰掛けた。彼女の嬉しそうに笑った顔が、瞼の裏に浮かんでくる。料理の腕前を褒めたときと、十年ぶりの母との会話の代弁のとき……彼はこれで良いのだろうかと、迷う気持ちがあった。


「人はいつか必ず、永遠の別れを経験するものです。だからこそ、会える時に会い、話せるうちに心を通わせる、その一時一時に価値を見いだすのです。僕の仕事は、そんな普遍的な死者と生者の関係性を、冒涜しているのかもしれません」


 エリーゼ母子の関係性を、冒涜しているのかもしれない。


「それでも、貴女は素晴らしいと言ってくれた。この力があるからこそ、貴女を呪われた宿命から外すために挑める。貴女を失いたくありません……」


 壁には、ドライフラワーの、小さな花束が。


「エリーゼさん……貴女からの教えが、何度僕を立ち上がらせ、どんなにか僕の支えになったことでしょうか。たとえ貴女が覚えていなくとも、次は僕が貴女を助ける番です」


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