第9話 ポルターガイスト
「一華、
「そう……対象外ね」
「カハハハ、テメェにしちゃぁずいぶん慎重だな!」
「仕事が遅いってか?……まぁ相手が子供だからな」
「ふふふ、大人になったのねアルキ」
「もう充分オッサンだろ?32だぞ!」
「中身よ!な・か・み!」
「……いや言い方……ったく、とにかくターキーは待機でいいぞ」
「へいへい、自分でやるんだろ?」
「お前が出るとややこしいからな」
「うるせぇ!」
一日経つとアルキを取り巻く環境は落ち着いた。生徒達から親しげに声を掛けられることはあるが、質問攻めが無くなっただけマシだと思える
職員室でも同様に視線を感じることも少なくなった。結局みんな他人にはそんなに興味は無いのだ
ただ隣の
「佐倉先生、授業進行はどうですか?」
とりあえず業務に関することで、とっかかりをつかもうとするアルキに対して、クールな佐倉は最小限の返答で返す
「問題ありません」
「何か困ったら相談乗りますよ!」
「
「――!そ……そんなことは……いや、佐倉先生は数学の教師!そして俺は割と数学が得意……これはまさに運命!」
「……私は運命なんて信じてませんよ」
「奇遇ですね、俺もなんですよ!」
「じゃあ俺達が出会ったのはどうでしょう!」
「別に……出会いに意味はないでしょう?」
「意味をつけましょう!そうですね……「運命」でないなら「奇跡」!俺達が出会える「確率」は、さまざまな「選択」から考えると奇跡のような「確率」です!すなわちそれはもう「奇跡論」と呼ぶしかないのではないか!もういっそ「ラプラスの悪魔」然り!俺達は出会うべくして出会った。そう考えるとこれはもう「コペンハーゲン解釈」なんてものでは語れない……奇跡と運命の融合……」
「……あ……あの……何を言っているのか……」
「つまりですね!未来では我々は幸せな家庭を……」
その時だった、悲鳴と絶叫が校内に響きわたる、多数の生徒達の逃げ回る足音と、ガラスの割れる音が聞こえる
「――な!これは?」
「――!な……何の騒ぎですか!七面先生……」
「佐倉先生!生徒達の誘導を!他の先生とお願いします」
「はっはい!」
生徒達が逃げてくる方向に急いで向かうアルキ
辿り着いた現場は「探求科の教室」。通常ならあり得ない光景が目の前に広がる
教室内の机が空を舞うように飛び回り、ぶつかり合う。激しく壁にぶつかり、窓を割り徐々に規則性を保つように飛び始める
割れたガラスの破片で怪我をして、出血している生徒もいるようだ
アルキは飛び回る机を
飛び交う机に怯え中央に取り残された一人の女子生徒の周りを回る机は、どんどん速度を増していく
「アルキ先生!これがポルターガイストです!学校の七不思議の一つです!」
「
アルキの指示通り生徒達を避難させた
「学校の七不思議か……とりあえず「
「アルキ先生!僕はどうしたらいいですか?」
「
|
|
「舞!聞いてくれ!」
机が猛スピードで飛び交う中、
「――聖くん!わたし……どうしたらいいか……」
恐怖で涙を流しながら訴える
「えっと……舞……好きなんだ……お前のこと!」
「――えっ?……えっ……えっ……そ、そ、そんな」
教室内の全ての机は、やがてチカラ無く壁などにぶつかり動きを止めた。まるで、この教室だけが竜巻に飲み込まれたかのような状態だ
「大丈夫か?怪我は無いか?」
「は……はい……ありがとうございます……」
「舞、落ち着いたら後でさっきのことちゃんと話すからここで休んでて!少しアルキ先生と話をして来るからね」
「う……うん……」
告白された
|
|
「さぁ!説明してもらいましょうか!アルキ先生!あんな事を僕に言わせたんですから」
「まぁまぁ……助けられたからいいじゃないか!俺が言うと犯罪になるだろう?」
「……でも……どうしてあんな事で?」
「あんな事ってお前!女子にとっては「
「……そうなんですか?……とりあえず理由は?ポルターガイストが収まった理由」
「ん?
「……」
「あれは「
「――アルキ先生!学校の七不思議です!そういうことにしてもらえませんか!」
「落ち着け
アルキは
「……え?……
「あの現象は定期的に起きていたんだな……そしてお前はあれを
「……そうです……ちょうど奇妙な現象が起きていたから……」
「つまり他の現象はあくまで「学校の七不思議」だと言いたいんだな」
「はい……他に説明のしようがないです」
「う〜ん……分かった、そういう事にしておいてやろう……なんせ「
「……はい……でも
「おお!気付いたな、そう「
「たしかに椅子や教科書とかは飛んでいないのに「机」だけが飛んでいた……「固有振動数」の一致?」
「いいぞ、さすがだ
「じゃあアルキ先生は「机だけ」が飛んでいたから瞬時に「固有振動数の一致」だと気付いた!?」
「まぁな……そしてこの「兎角」の能力は、おそらく対象者の「心の不安や恐怖」の固有振動数と「机」の固有振動数を一致させる「共振」の能力だな……だがここまで激しい「共振」を起こすほどの「固有振動数」を出せるとは……かなり強力な「
「……「心の不安や恐怖」……だから告白?……だったら別の方法でも良かったんじゃ……」
「……まぁまぁ、告白のほうがロマンチックでいいじゃん!」
「アルキ先生〜!」
「ごめんって
「この後どうしてくれるんですか〜?
「「共振」だな……犯人が実験をしていたのかもしれない」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます