第8話 シンデレラタイム
午後9時半過ぎ、再び集合した三人は、昨日の男が待ち合わせをしているところを見つけた
少し待つと、スタイルのいい綺麗な女性が、笑顔で男のほうに駆け寄って行くのを確認する
「ウソでしょ……あれが
驚愕したのは
「今日の放課後とつい見比べてしまうから余計に差が凄いな……見れば見るほど美人OLって感じだな」
「ちょっと!本当に
「それは間違いないよ……見るたびに色気が増していくような気がするけどね」
「……
「杏子……それは褒め言葉として受け取っておくよ」
「えっ!嬉しいんだ?」
三人はなるべくバレないように距離をとり、
「わたしもメイクしたらあんなに綺麗になるのかなぁ」
「
「「素材は」って何よ……色気ははたしかに無いけど……」
「嫌でも歳は取る。慌てて大人になる必要はないんだ……
「「――?」」
この時、
話をしているようだったが、しばらくすると、二人は別れた。立ち去る男の後ろ姿を見つめる
「――え?七面先生!」
振り返ると目の前にアルキがいることに戸惑いを隠せない亜里珠は、気まずそうに俯いてしまった
「少し時間あるか……30分いくらだ?」
「――えっ?……教師がパパ活を利用していいんですか?」
「ダメだろうな、だがお前が黙っていれば問題ないだろ?同罪ということで」
「……でも」
「あの人じゃないから嫌か?」
「――!いえ……食事一回一万円です!」
「――くっ!時間制とかではないんだな……じゃあこれで」
「はい、たしかに」
「だが食事はもう取ってるんだろう?カフェか公園で話をしようか」
「……はい」
この場に
アルキと亜里珠は、どこで誰に見られるか分からない上に、目立つといけないからと公園へ行き、ベンチに腰掛ける。
「七面先生……話って……」
「俺の話を聞いてくれるか?」
「――?先生の……はい、もちろん」
「俺の目標は「未来の伴侶」を探すことなんだが、なかなか上手くいかずこの歳になってしまった……」
「……先生ってカッコよくて頭いいのにどうしてですかね?」
「そう言ってくれると有り難いが俺にもいろいろあってな……難しいんだこれが……答えのない数式を解いているみたいだ」
「ふふふ、でも佐倉先生とか瑠美先生とは、どうなんですか?」
「二人とも美人だよなぁ。そのために修徳高校の教師になったまである」
「ぷっ!何ですかそれ、生徒に聞かせることじゃないですよ!……でも先生カッコいいから何人も女の子を泣かせてきたんでしょ?」
「いや……だいたいの女性が俺から離れていくんだ」
「へぇ〜先生優しいからそんな風に見えないですけど……やっぱり……「叶わぬ恋」……とかも経験してます?」
「当たり前だろ!むしろほとんど「叶わぬ恋」なんだが……でも結局若い頃の実らなかった「恋」のほうが心に残ってるな……」
「――!そうなんですか!?えっと……聞いてもいいですか?」
「いいぞ!10年以上前だからなぁ……あの頃は俺も若かった!ある事がきっかけで出会った女性に、「恋」したんだ。彼女は年上で……若い俺からしたら、とてつもなく魅力的だった。だが彼女は俺に興味なんてこれっぽっちもない……でもそれで良かった……ただ「恋焦がれ」ているだけだったから……彼女には婚約者がいたからね!もともと知り合った時には知らなかったんだけど。しばらくして、婚約者って紹介されたんだよ……兄貴に」
「「「――!」」」
「……先生……じゃあずっと片思いで?……二人の幸せを見ているんですか?」
「だったら良かったけどね!……死んだんだよ兄貴が……結婚する前にね」
「――!そんな……ごめんなさい……
「ふっ、亜里珠は優しいな」
「……いいえ、わたしは……」
「お前はそのまま、好きでいていいと思うぞ、一線を越えなければ。悩むこともあると思うが……どんなカタチであれ、きっとお前は成長する。だがいいのか?本当の自分じゃなくて!」
「――!」
それを聞いて
「「兎角」なんだろ?……初めてのパパ活で出会った男性に恋をして、幼すぎるお前は高校生である事がバレて断られた。彼も高校生とパパ活なんてしてると、犯罪になりかねないからな……そして恋に悩んだお前は触れたんだな「
「……先生……これって運命なんですか?先はもう決まってるんですか?この時この歳であの人と出会って、恋をして失恋する……そういう未来なんですか?先生だって、10年前に出会った人と、もう少し早く会っていたらとか考えないですか?パラレルワールドだったら、わたしはあの人と同世代なのかな?とか、奥さんより先に出会って、わたしと付き合ってるのかな?とか、わたしはあの人と結婚出来るのかな?……って……そんなふうに思わないですか……?だから……もうどうしていいか分からない!運命に従うしかないんですか!?」
「どうだろうな……お前が言ってる「運命論」って何か超越的なチカラであらかじめ決まっているから、
「わたし……どうしたらいいんですか?」
「「選択」するんだ。俺は辞めろとは言わない。ただ自分を偽って、「大好きな人」に会うのは良くないのかもな、嘘が上塗りしていく」
「ありのままのわたしには会ってくれません!もう会うなって事ですか?」
「今の世の中では「兎角」は認知されている。どうでもいい奴ならいいが、いや良くはないか……好きな人には正直に、「兎角で大人になってます」って言ったほうが悩まないんじゃないか?それでお前が決めるんだ!想いを伝えるか伝えないか、傷付くかもしれないし、彼を困らせるかもしれない」
「もう会えなくなっちゃうかも……」
「かもしれないな……お前の選択であり彼の選択でもある」
「怖い……」
「だが今も怖いんじゃないか?このままでいいのか……もしこの先を求められたら……彼には家庭がある、「心」を求めてもいいのか……そんな不安があるんだろ?とくに今の「シンデレラタイム中」は……お前の「心」もさらに大人になってるから」
「――!先生……なんでも分かっちゃうんだ……」
「まぁいろいろ経験してるからな……」
しばらく沈黙の時間が流れる。亜利珠の気持ちを整理する時間を黙って待つ
側にいるだけ、亜里珠が質問すれば答える。
アルキはただ自分を語り、味方だと、気持ちも分かると、そう言っただけ
これは「運命」ではなく「選択」なのだと
「先生、もっと考えてみる……自分で!杏子にも相談すると思うけど、ちゃんと自分で決める!だってこれは「
「すまんな、本来なら無理やりにでも辞めさせるべきだろうな。お前も誰かに止めて欲しいのかもしれない……だがこれもお前の成長に繋がる!お前はまだ若い、ここで
「アルキ先生も?……心配してくれる?」
「当たり前だ。俺はお前の副顧問だぞ!今のお前の気持ちはすでに経験済みだ!俺とお前の「選択理論」は違うかもしれないが、俺はこうして「大人」になってる!心配するな、間違えてもいい!その時は……軌道修正してやる」
「はい!」
悲しみで浮かんだ涙は、落ちる頃には安堵となり、大人びた表情は影を
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|
「
「だって……うう……切なくて」
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