第6話 八神 聖
アルキの歓迎会も兼ねての、「積分コンテスト」の打ち上げが行われた
基本的にこういう飲み会は自由参加で、仕事が残っている者もいるので全員ではない
「
「瑠美先生、酔ったあなたも素敵ですよ!ふむ、まだ夜9時半ですね……この後良かったら二人だけの二次会とかいかがですか?M.I.Tの講義もかねて!」
「えぇ!?私に理解出来るかなぁ……」
「ふふ、理解するまで帰しませんよ」
「もぉ、七面先生ったら!」
二人はもう帰ります、と告げて飲み会を抜け出した。お店を出て並んで歩いているとそっと腕を組もうとする瑠美に、心が躍るアルキ
アルキの腕を取ろうとする瑠美が、触れる時だった
「
「――!」
まだ幼さの残る声で名前を呼ばれて、咄嗟に距離を空けてしまうアルキと瑠美は、おそるおそると振り返る
「今日はありがとうございました!」
「八神君?……こんな時間にどうしたの?」
「
「はい、週一ですけど、いちおう行ってますよ」
「そうか、偉いなお前は……とにかく俺と瑠美先生はこれから用事があるからな!お前も気をつけて……」
「ちょうど良かったです!七面先生に相談したいことがあって!」
「――なっ!……分かった、明日時間をとって……」
「いや〜偶然ってあるんですね〜!」
「――ちょっ!ちょっと待て
「……七面先生、もうあんなに生徒に頼られて……素敵です」
「……
「七面先生、そんなことより、今あそこに並んで歩いている男女を見て、どう思います?」
「そんなことってお前……」
「あれです!」
「男女を見ろって……ん?おぉ!俺好みの美人OLと……同伴?かな……まぁ男のほうは、かなり年上に見えるから彼氏ではないよな」
「やっぱりそう見えますよね」
「……聖は俺に瑠美先生よりあの女性を狙えと……そう言ってるんだな」
「違いますよ!ふざけないで聞いて下さい」
「すまん……」
「あの女性……「探求科」の「
「――は?マジか?……女って、化粧であそこまで変わるんだなぁ」
「それも問題ですが、今一緒にいるあの男は、亜里珠の父親ではないんです!」
「……なるほど、援交だって言いたいのか?」
「最悪、そうですね……ただ僕が知る限り、あの男しか一緒にいるところを見ていないので、「パパ活」ではないかと思うんです」
「パパ活か……だったら違法ではないのか」
「――!そうですけど、何かあってからでは遅くないですか?」
「聖は彼女にパパ活を辞めて欲しいんだな!」
「そうですね、理由があるにしても、他にも解決策はあるでしょうし」
「金銭問題とかってことか?」
「それしかないでしょう?パパ活なんてする人は?」
「……決めつけるのは良くないかもな。
「……なるほど……でも先生だって、けっこう決めつけてません!?」
「俺はもういい歳だからな、でもしっかり分析してから答えを出すよ」
「分かりました、頭に入れておきます」
「ふっ……素直だな!俺がお前の歳くらいの時は、もっと反抗してたなぁ」
「ちょっと!どっちですか?……先生みたいになるには、どうしたらいいんですか!?」
「
「――!」
失敗してもいいなんて言われたことが無い
だが
「いろいろと気にするな!俺がいるから安心しろ!」
ああ……この人の言うことは信頼出来る。ふざけているようなのにしっかりと自分を見てくれている。僕は完璧じゃなくていいんだ
この時……
「アルキ先生!この先のカフェで仲間が一人待ってるんで一緒に来て下さい!」
「おう、いいけどあんまり遅くなると親御さんに俺が怒られるんだが」
「怒られ役は、任せましたよ!」
「あぁ!なんでアンタが一緒にいんの!」
「お前だったか、
「塾よ!」
「塾、行くくらいなら授業に出ろ!」
「こっちにもいろいろあんのよ!」
「ふぅ……よし分かった!お前がいろいろ心配しなくていいように!俺が授業に出れるようにしてやるよ!」
「――!心配しなくていいように?それは……きっと無理よ」
カフェで待っていたのはラフな私服姿の
「杏子、待たせてゴメン。アルキ先生、連れて来たよ」
「――アルキ先生?……
「この人ってお前……失礼だな、だがそうだよな学年の1位と2位が考えてお手上げなんだろう?」
アルキと聖は飲み物を受け取ると、カウンターにいた杏子を連れてテーブルに座る
「アルキ先生、実はまだ、杏子に話を聞いてないんです。
「今日が第一回会議ってことか、じゃ杏子の手腕を拝ませてもらうか」
「何それ?なんか話しづらいじゃん!」
「杏子、とりあえず分かった事を教えて欲しい」
ちょっと不機嫌な杏子に
「亜里珠の
「やっぱり留学のために援助交際をしてるってことかな?」
「う〜ん、さすがに援助交際までは、ないんじゃないかなぁ。パパ活で小遣い貰うくらいじゃない?」
「どう思いますか?アルキ先生」
「
「え〜と……塾の帰りに見かけてたんですけど、月に2、3回くらいですね!初めて見た時は、すぐに
「わたしはパパ活中に見てないから……そんなに大人っぽいの?
「お化粧ってそんなに違うのってくらいだよ!」
「男はいつも同じ男なのか?」
「はい、僕が見た時はあの人だけですね」
「じゃあやっぱり援交じゃないよね!パパ活で小遣い稼ぎくらいだよ」
「だけど……いつ男が求めるか分からないよ!今のうちに辞めさせないと」
「
「あれだけ大人っぽくなってるんだ……男のほうも高校生って知らないんじゃないかなぁ?」
「でも初めは、
「そうだけど……何かあってからじゃ遅いよ!留学だって今では海外用の奨学金もあるし、むしろ日本よりも奨学金制度は充実してるんだ。上手くいけばお金を返さなくてもいいしね」
「……
「僕達は仲間だからね!」
「……うん」
「その男は……彼女が「
「「――?」」
「どういう意味?」
「……そうか!なるほど……さすがアルキ先生!」
「――な?何よ二人だけで!」
「アルキ先生が言ってるのは初めにパパ活としてあの男が会っていた「
「――たしかに!……でもメイクでそんなに違うのかなぁ……わたしはあまりしないから、詳しくないけど。そんなに分かんないものなの?」
「俺はさっき見た時に
「――えっ?……キモ……」
「――な!?キモいは……ツラい」
アルキが杏子の一言で落ち込んでるので、優しい
「アルキ先生!
「……いいぞ
「どういうこと?アンタ達二人……いつの間にか師弟関係みたいになっちゃって……まぁ
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