第3話 学校の七不思議

アルキが向かった教室に入ると、重苦しい空気を感じる。授業をしていた先生も含めた生徒達は、ほぼ全員が血の気が引いた表情で震えているようだ


「何だこの重圧感!……みんなこの教室から出るんだ!」

 アルキにも感じる教室の違和感、とりあえず生徒達を教室から出るように指示する

 全員が肩に何かを「背負う」ように重い足取りで教室から出ていく


「まただよ……もうやだ怖い……」

「これ……取り憑いてるの……重いんだけど!」

「呪われてるんだよ!絶対!」

 

「「「七不思議だ!」」」


生徒達が声を揃えて言うのは「七不思議」と言う言葉だった。アルキは生徒達が全員教室から出るのを確認すると、授業をしていた女性教諭に話を聞く


「どうしましたか?何があったのですか?」

「七面先生!実はこういった事が今年からよくあるんです……私も怖くて……」

「もう大丈夫ですよ!とりあえず生徒達を外へ連れて行きましょう!風に当たって気分を変えたほうがいい」

「はい!……皆さん落ち着いて外へ行きましょう!」


 アルキは一旦探求科に戻ると、生徒達に自習をしておくように指示をする。先程の教室へ戻ってみるが、すでに違和感を感じることは無かった。誰もいない教室にはこれといった変化も無いようだ


「……これが学校の七不思議の一つか……」


 外へと移動させた生徒達はもう問題なく元気になっている。アルキは被害に遭った男子生徒に話を聞いてみる


「これは悪霊の仕業なんだよ!みんなが噂してるから……あと他にも人が急に消えるんだよ!」

「消える?その生徒はどうなるんだ?」

「それがすぐに現れるんだ!本人も全く自覚がないんだよ!……霊界に連れて行かれてるって言われてる」

「誰がそんなことを言うんだ?」

「ん?……さぁ……噂だから……」


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 学校が終わるとアルキは帰りにantennaアンテナへと寄った


「アルキ、お疲れ様!初日はどうだった?」

「それがいたんだよ、美人教師!」

「バカか!そんなことを聞いてんじゃねぇよ!」

 ターキーは、店内に響くほどの大声でアルキを罵るが、客は一人もいないので問題ないようだ


「はい、お待ちかねのエッグサンドよ!わたしのおごりだから」

 一華は注文を受けていないエッグサンドをアルキの前に出すと、その美しい瞳でウィンクする


「……いや……朝も同じの食べ……」

「で?……どうだった?何か分かったの?」

「ああ、学校の七不思議が起きたぞ!」

 

「――!アルキの見立ては?」

「まだ分からないが、生徒達に聞いたところ「学校の七不思議」はこんなところだ」

 

1.「美術室の黒いリンゴ」


2.「音楽室のピアノを弾くとバッハの額縁だけが落ちる」


3.「二宮金次郎の像が動く」


4.「霊の取り憑き」➖取り憑かれたように身体が重くなる


5.「ポルターガイスト」


6.「霊界への誘い」➖人が消えるがまたすぐに現れる


7.「不特定多数同時デジャヴ」

 

「そして今日はクラス全員が「霊の取り憑き」に遭っている。何かに憑かれていたように重い足取りで震えていた」

「何それ?……ちょっと怖いわね」

 一華はこの手の話が苦手らしく、両肩を抱きしめて一歩引いている


「だが取り憑かれたのも教室にいる時だけだ。外に出ると問題なかった」

「「デジャヴ」って?」

予知夢よちむだな、生徒に聞いたところ一度だけ起こったらしい「不特定多数同時デジャヴ」!一人二人のデジャヴなら分かるが多数同時はすごいよな……それが最初で最後だったらしいけど七不思議はそれで完成したらしい、あと「霊界への誘い」もその少し前に起きていたって!人が消えるやつな」

 

「被害者は大丈夫なの?」

「今までの被害者全員、いのちには別状ないらしいが精神的にな……「探求科」の「伊倉いくらうめ」が不登校になっているんだが……不登校の原因が七不思議にあるのかもしれないな」


「そう……ターキーは今回どうするの?」

「いらんいらん!俺だけで充分だろ」

「ふん、どうせ最後には泣きついてくるんだろ?」

「――!ターキー……俺がいつお前に泣きついた!?」

「あぁん!最後の尻拭いはオレがやってるじゃねぇか?」

「尻拭いをやってるのは俺なんだが!いつも、いつもお前の派手な能力のせいで謝って回ってるんだぞ!」

「あぁそうかよ!もういい、オレは絶対に手伝わん!」


「――ちょっと!二人とも喧嘩しないでよ!」

 一華がそんな二人をなだめる


「「ふん!」」

アルキがタバコを咥えると一華が慣れた手つきで火を付ける。一服して気持ちを落ち着かせるアルキ


 苛立ったアルキの目をじっと見つめる美しい瞳は笑ってはいない。だが彼女の艶やかな唇が笑顔を思わせるようにそっと呟く


「警視庁公安部「フクロウ」兎角課とかくかのエースが、まさかこんな「凸凹でこぼこコンビ」とはねぇ……今回の潜入捜査は単独だと厳しいかもしれないわよ」


「……エースねぇ……まぁなんとかやってみるよ「一華課長」!」


 七面ななおもてあるき32歳独身「修徳高校「探求科」副顧問」。本当の職業は警視庁公安部兎角課「フクロウ」」のエース


世界中で起こる「兎角事件」を秘密裏に捜査する諜報員

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