チャプター2 折り紙の使い手

 同じクラスの会垣十色の住む街にある、神織神社かむおりじんじゃ


「今日も空が綺麗だ」


 おれ……いや、私の名は神衣かむい 志織しおり。この前の誕生日で10歳を迎えた。好きな事は、折り紙で色々作る事と、ダンスやスポーツとか。しかし私はこの通り、生まれた環境が周りとはちょっと違ってて、幼い頃から厳しい修行を受けて育ってきた。


「この景色に見とれている暇は無い、今日も今日とて舞踊の稽古だ」


 神衣一族に生まれた者は、男女問わず歴史と伝統を護るために生きねばならぬ。それが、生まれてすぐにおれ……、私に告げられた宿命だった。


「あれは……つい、数日前の出来事だった」


 私は誕生日の事を回想した。


   * * * * * * *


 10歳の誕生日。私は母親によって家の奥にある部屋に連れて来られた。


「ここは、普段は立ち入りを禁じている部屋ですよね」

「はい、この歳を迎えたからここに呼べたのです、これをご覧なさい」


 そこで、母は部屋の奥から布のようなものを取り出し、私に見せた。赤、青、緑の輝きがその布から溢れ出していた。


「母さん、これは……?」

「これは、神衣家を受け継ぐ者の証。私も、あなたぐらいの歳にこれを纏って世のため人のためになすべき事をした。今まで厳しい修行に耐えられたあなたなら、これを纏う事が出来ます。さあ受け取りなさい」


 おr、いいや私は、幼い頃から親の言う事は絶対厳守だと思って生きていた。これを手にするのも神衣家の掟だと思い、羽衣を受け取った。


「その羽衣を、肩に掛けてみなさい」

「はい……」


ティロリラティロリラリン♪


 その羽衣を肩に掛けると、羽衣が光り出し、俺の身体を包み始めた。身体中に、何か不思議なチカラが集まってくる感じがする……


「今までに無い感触が肌を包んでいる……!」


 今までに感じた事の無いドキドキが強くなってくる……!……光が収まると、俺の姿は赤、青、緑の極彩色の衣に包まれていた。母が私を見てこう言う。


「な、なんだ……この姿は……!」

「これが神衣家を受け継ぐ者の証。その名も、カムオリノミコト!」

「カムオリの……ミコト……?それで、何が出来るんだ?」


 母は、この姿の説明を始めた。


「この装束は、腕輪から耐水折り紙を放ち、念動力で折って形にする事で意のままに操り使役する事が出来ます」

「こ、こうか!」


バシュ!


 俺は腕を突き出すと、一枚の折り紙が出て来た。耐水素材なので、雨の日でも使えるようだ。


「次はその紙に作りたいものを念じて見て下さい」

「じゃあ、鶴になってくれ!」


 すると、折り紙がひとりでに動き出した。


パタパタッ!


 一秒も経たない内に折り鶴が一羽完成した。


「それはあなたの意思で自由に動かせます!」

「こうか!」


 俺は折り鶴に念を送ると、折り鶴は生きてるかのように飛び回った。


ビュンビュン!


「すごい……!」


 私はしばらく折り鶴を操った……念が途切れると、折り鶴は地面に落ちて動かなくなった。


「このチカラを世のため人のために使う事が、代々受け継がれる使命なのです。さあ、新たなるカムオリノミコトよ!世のため人のために飛び立つのです!」


   * * * * * * *


 それが、この前の誕生日の出来事である。……なんて考えてる内に稽古も仕上げの時間が迫って来た。


「さて、行くか……」


 私は懐から三色の羽衣を取り出して言った。


神衣顕現かむいけんげん!!!』


 私は羽衣を身にまとってカムオリノミコトの姿に変身した。


「折り綴る色彩の調べ、カムオリノミコト!!!」


 私は腕輪から何枚もの折り紙を出して様々な形を念動力で折って作った。


「いざ舞わん!神織神楽!!!」


 私は折り紙達と共に舞を踊り、稽古を締めくくったのであった。これが母から課せられた使命なら……私……いや、やっぱり、『俺は!』カムオリノミコトとして役目を果たすまでだ!!!

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