6.眼の中の‥妖精?

翌日───


昼休みは、いつものように三人で屋上に集まる。


早速、最新型の『眼』を自慢したいとこだけど、なんとな~く話さない方が良い気がした。

理由はわからないけど、ほんとに、なんとなく、唐突に‥だけど激しく、ナイショにした方が良いと思った。


しかし健太がニヤニヤと何かを期待して聴いてくる。

「昨日、眼科どうだった?リサちゃんと二人で行ったんだろ?」


「ああ、何か、アップデート?とかしてくれて、治ったみたい。調子良くなったよ。」

咄嗟にはぐらかしてしまった。


《♡》


やっぱり、お金払ってないから、変な罪悪感みたいなのがあるのかもな‥ん?

一瞬、♡マークが見えた気がしたけど‥気のせいかな?


話題を変えよう。

「最近、健太たちは何して過ごしてるん?休日とか。」


「んーー‥これといって‥なぁ。」

「そうだねぇ。最初の頃はカラオケとか行ってたけど、最近は健太の家でテレビ観たりしてるのが多くない?」

「あと、イベントに参加したりとかかな。」


「ぁー‥そうなんだ。‥イベント?何の?」


「何のって‥『未来創造フォーラム』とか『視覚革命展示会』とか‥。あと『視覚健康フェスティバル』なんかは毎月やってるだろ?」


え゛‥‥「そうなんだ‥‥た・楽しいのか?それ‥‥」


「楽しいっていうか‥参加するのは義務みたいなもんだろ?お前まさか参加したことないのか?」


「い・や?‥あ・あるよ。行ったことくらい‥」

なんとなく話を合せようと頑張っていると、



《「学生たちが未来の社会についてグループディスカッション」》

《「未来のテクノロジーを体験するワークショップ」》



へ?何か表示された‥。


「ほ・ほら、『未来の社会についてグループディスクッション』?とか‥あとワークショップ?とか‥」


「あれ?あのワークショップ、翔も参加してたんだ?気付かなかったね、健太。」



何だかわからんが『眼』が助けてくれた‥のか?





自宅───



この最新型の『眼』‥どうやら知らない機能があるようだ‥‥。

リサのじいちゃんに訊いてみるのが早いかもだけどー‥どうしたもんかなぁ‥‥。


そう悩んでいると、視界の隅に『イルカ』が現れた。


は?なんで『イルカ』が?



《知りたいことは何ですか?》



‥お前は何なんだ?



《ボクは、AIアシスタントのアイリスです》

《知りたいことは何ですか?》



‥えーっと‥なんだ急に‥‥何ができるの?



《視覚情報の拡張》

《リアルタイム翻訳》

《顔認識と人物情報の提供》

《健康モニタリング》

《スケジュール管理とリマインダー》

《情報検索とナビゲーション》

《エモーショナルサポート》

《データセキュリティとプライバシー保護》

《エンターテイメント機能》

《教育サポート》



視界内にビッシリと文字が表示される。

‥ちょ、待った!待った!



《他に知りたいことはありますか?》



‥なんで突然現れたの?



《マスターとの相性レベルが向上したことにより一部の機能ロックが解除され、可視化できるようになりました》



‥こんな話は聞いたことも見たこともないけど‥最新型の『眼』に備わってる機能なの?



《この『眼』は、ネオオプティクスの次世代型として開発されていたもので通称『プラス』といいます》

《プラスは一般には出回らない型なので、見聞きしたことがなくても不思議ではありません》



‥そうなんだ‥なるほど‥って、いやいや、いやいやいやいや、なんでそんな一般に出回ってない物が、俺に移植されてるの!?それが不思議でしょ!?



《その質問にはお答えできません》



‥はぁ?じゃぁ、やっぱり、リサのじいちゃんに訊くしかないか‥。



《推奨します》



とりあえずー‥リサにメッセージ送っておこう‥。

『あのさ、変なこと言うようだけど‥』‥‥‥途中まで打って、直接会って話した方が良いかな‥と思い直した。



《推奨します》



あ゛‥‥何か腹立つわぁー‥常に俺の思考を読んでやがるのか?



《肯定します》



‥‥ちょっと黙っててくれ。そうだ、俺から回答を求められたときだけ喋って?な?



‥‥わかったら「はい」とか言ってくれ。



《はい》



うっわーーーなんか、無茶苦茶腹立つーーー‥‥


とりあえず、リサにメッセージしなきゃ‥。

『明日の放課後、また会えないかな?』


すぐに既読マークが付いて、返信がきた。

『すごい!あたしも今、同じの送ろうとしてたとこ!』


あはぁ~♡以心伝心ってヤツですね♡





翌日───


ダブルデートのあとに立ち寄った公園で話すことにした。


「眼の調子、どお?」


「うん‥実はそのことなんだけど、さ。」


「何?何?調子悪い?」


リサは俺の顔をホールドして眼を覗き込もうとする。

眼科医の孫だからなのか?すぐ眼を覗き込もうとするのは‥。


「い・いや‥調子は悪くないんだけど、なんかね、変なイルカが‥‥」


「イルカ~?」


詳しく説明した‥。


リサは、今まで見せたことがない神妙な面持ちで俺の話を聞いていた。


そして最後に「そっか‥」と呟いた。



───沈黙の時間───



リサは何か知ってるのかな?


突然顔を上げて大きく深呼吸をすると、リサは何かを覚悟したような真剣な目で言った。


「全部話す。本当のこと。だから、今からおじいちゃんのとこ、行こう?」

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