2.初デートは成功なのか?
土曜日の朝───
強烈な眩しさを感じて目が覚める。
初デート当日の朝だ。
昨夜は興奮して寝つきが悪かったので『目覚まし』をセットしておいて良かった。
ネオオプティクスは強烈な光で起こしてくれる。
お気に入りの青いシャツとジーンズに着替えて、鏡の前でセルフチェック。
普段は気にしないような小さなシワや汚れが、今日はとても気になる。
「よし。これで普段どおりだ」
玲奈のアドバイス『自然体でいるのが何よりも大事だから』オッケー!
念のため、AR機能をOFFにして、もう1度チェックした。
今の時代、基本的にAR機能は常時ONなので、うっかりしているとヤバいことになり兼ねない。
実際、たまにネットで話題になったりもする‥。
「オールOK!」
リサちゃんの動画をリピートする。
『それじゃ翔くん、週末、楽しみにしてるね♪ばいばぁ~い♪‥‥それじゃ翔くん、週末、楽しみにしてるね♪ばいばぁ~い♪‥‥それじゃ翔くん、‥‥』
か・可愛いー♡
もうすぐ実物にお会いできる。そう思うと胸が高鳴る。
《脈拍の異常を検知》
昨夜から何度も見た、ネオオプティクスの警告表示だ‥。
深呼吸して心を落ち着かせる。
(ふ~~~~~~‥‥ふーーーーーーっ)
いざ、出陣!!
◇
駅前───
待ち合わせの時間より10分早く到着。
健太のアドバイス『待ち合わせの5分前には到着するべし』オッケー!
「翔くん?」
突然、背後から声を掛けられて、ビクッ!となったが、振り返ると、そこには‥
天使が舞い降りていたーーー♡
彼女の容姿については、おまいらの想像に任せるとしよう。
最高に可愛いの更に上をいく、それが彼女、リサちゃんだ。
『それ、CGじゃね?』ってツッコミは無しで‥。
「ぁ、お・おはよー‥ございます?翔です!」
「あはは☆なんで敬語なのぉ?えっと、リサです。待たせちゃったかな?」
「えへへへ、待ってない‥っす。お・ぼくも今来たとこ‥」
《血圧・脈拍の異常を検知》
こら!警告表示で視界を塞ぐな!!
みっともないファーストコンタクトではあったが、彼女の笑顔に癒されつつ、このあとは流行りの映画を観に映画館に向かった。
◇
映画を観たあとは、近くの喫茶店へ。
「あたしはー‥アイスティーにしよっかな。翔くんは何にする?」
「ぁ、じゃぁ、アイスコーヒーで‥」
「ふふっ、まだ緊張してるの?でも‥カワイイ☆」
「あは・あはは‥実は、こういうの、は・初めてで‥‥(そうだ『チャット・キューピット』を‥)」
《おすすめの話題》
《相手の趣味について聞いてみましょう。例えば、編み物や盆栽について》
「はぁ?」
「ん?」
「あ!い・いえ‥あの、編み物とか盆栽とか興味ある?」
「え゛‥その二択だったら‥編み物‥かな?あはは‥。昔、おばあちゃんが編み物してるの見てたことあるよ。翔くんは盆栽とか興味あるの?渋いねぇ~」
「ははは、最近少し興味が湧いてきて・て‥‥」
《良い感じに会話が弾んでいますね》
《次の話題を提供しますか?》
『No』で‥‥‥。
「あたし、ちょっとお花摘みに行ってくるね。ニヒッ☆」
「あ・い・いってらっしゃい(え?どこに?なんでお花??)」
そうだ、今のうちにAR機能をOFFにして‥彼女が本物かどうか確かめよう。
(ホントにそんなことしてもいいのかー?それは彼女に対する裏切り行為でもあるんだぞー)
な!?内なる自分が語り掛けてくる!?
しかし確かにそうかもしれない‥。もし彼女が容姿を偽っていたとしても、それは自分のためだけじゃなく、俺を喜ばせようと頑張ってくれているのかもしれない。その努力を俺は受け入れるべきなんだ!
(マジでそんなこと思ってんのか~?AR使ってんだとしたら100パー自分のためだろ。)
え‥そ・そうかな?
そうかもしれない‥。俺を喜ばせたところで、彼女には何のメリットもない‥。お金だってお小遣い程度しか持ってないし‥。
『それ、CGじゃね?』健太の声が頭の中にこだまする‥‥。
そうだ、俺は、彼女が嘘偽りなく天使として存在していることを証明して、玲奈と健太を見返してやりたいんだ!
‥見返す?なんで?‥‥あ゛ーーーーーー!もうなんでもいい!とにかく、
AR機能 OFF !
《只今障害が発生しております。AR機能をOFFにすることができません》
は?なんで??
AR機能 OFF !!
《只今障害が発生しております。AR機能をOFFにすることができません》
こんなことって、起こるもんなの?
今朝は普通にOFFに出来てたのに‥‥。
困惑しているところに、彼女が戻ってきた。
「ただいま~☆どうしたの?コワい顔になってるよ?」
「あ、いや、なんでもないんだ。ごめん。(‥花なんか持ってないじゃん‥摘んだ花はどうしたんだろ?)」
それから先は、どんな会話をしたのか覚えてはいない‥。
◇
駅前───
醜態ばかり晒してしまった‥。もう彼女と会うことは無いかな‥。
「翔くん、今日は楽しかった。ありがとね☆」
「あ、ぼくのほうこそ、た・楽しかったよ」
「ウソ‥。翔くん、緊張しっぱなしで楽しめてなかったでしょ?それに、会話サポートのアプリ、使ってたよね(ニヤニヤ)」
「え!?(バレてた‥)」
「でも、そういう一生懸命な感じ、あたしは嫌いじゃないよ☆」
「え‥‥」
「『また』会いましょう♪これ、社交辞令じゃないから☆じゃ、またね~!」
頭の中は真っ白になって
彼女が改札口を通っていく姿を
ただ黙って見送っていた。
階段の手前で振り向いて大きく手を振る彼女に
俺は小さく手を振り返した。
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