それ、CGじゃね?

あのときのほろよん

1.アイドルか天使か、それとも‥オッサンか!?

「観てくれ! 俺のv友ぶいとも、リサちゃん♡」


 昼休みの教室で、俺‥斉藤 翔さいとう しょうは友人たちに、最近ネットで知り合ったv友ぶいともを自慢した。


「わぁー、可愛いわね。アイドルみたーい」


 まったく興味を示してこないのは、幼馴染の藤原 玲奈ふじわら れいな。幼馴染だからといって、コイツとロマンスに発展することは未来永劫ありえない。マジで。


「それ、CGじゃね?」


 ボソリと核心を突くコイツは高橋 健太たかはし けんた。健太も俺の幼馴染で、最近、、、高校に入学した直後くらいに、玲奈と健太は付き合いはじめたのだ。


な?


 これが『幼馴染とのイチャコラストーリー』だとしたら俺は、ただのモブでしかないのだ‥。


 家が近所ってこともあって、以前はよく三人で遊んでいた。

 玲奈のことを恋愛対象として意識したことが『まったく無かった』と言えばウソになるが、恋していたかと問われると、恋していたほどでは無かった‥と思う。だから、この二人が付き合うと知ったときには、心から祝福することができた。


 でも、流石にそれからは、いつも三人で‥というワケにもいかず‥。だけども、俺だって、寂しいもんだから‥。ネットで友達を探してみたりとか、してみたっていいだろ?


「CGなんかじゃねーよ! 多分‥。だって今週末、会う約束したし。CGなら即バレじゃん」


 動画の音量を上げた。


『それじゃ翔くん、週末、楽しみにしてるね♪ ばいばぁ~い♪‥‥それじゃ翔くん、週末、楽しみにしてるね♪ ばいばぁ~い♪‥‥それじゃ翔くん、‥‥』


 健太が俺のスマホを押しのけながら忠告してくる。

「ハイハイ、リアルで会った時は『眼』のAR機能はONのままにしといた方がいいぞ。」


「ん? なんでだよ。確かめるならARはOFFだろ?」


「だってお前‥天使だと思って会ってみたら、オッサンかもしれねーだろ? ぶふっ」


「‥‥っなワケねーだろ!」


「ねぇねぇ、週末会うってことはぁ、初デート? 初デートだよねぇ? どこ行くの~? どこまでイクのぉ~?」


 玲奈め‥俺の弱点を知りつつプレッシャーをかけてきやがる。


 そう、俺は未だに、女の子と二人でお出掛けとか‥デ・デートとかをしたことが無い。


「そうだよ‥。初デートなんだよ‥。あー! 今から緊張してきたー‥ぜってー会話とか途切れちゃいそう‥。頼む、助けてくれろ~」


 我ながら情けないが、背に腹は代えられない。頼れるのはコイツらしかいないのだ。


「それなら、『デートアシスタントアプリ』を入れて『眼』にリンクしとけよ」


「『デートアシスタントアプリ』?」


「何種類かあったと思うぜー‥評価はマチマチだけど、おススメはコレかな?‥‥シェア送った」


 健太がスマホの画面を操作すると、俺のスマホの着信音が鳴る。


「そのアプリを入れて『眼』と繋げとけば、状況をAIが判断して会話のネタとかを視界に提示してくれるってよ」


「そんな便利なアプリが‥‥」


 早速インストールすることにした。




───西暦20XX年。


 数年前に東ヨーロッパの方で発生した新型ウィルス‥通称『ヴィズ・ウィルス』は、瞬く間に世界中に蔓延した。

 風邪とよく似た症状で致死性は低かったが、視力に大きなダメージが残る後遺症が問題となった。


 世界中の人々が視力を失っていく中、機械と有機体を融合させる技術を応用し、人工眼球を移植する『ネオオプティクス』が各国で承認された。


 高齢者は移植手術に適応できないケースが多かったが、若い世代は99.9%が『ネオオプティクス』により『眼』を移植された。


 そこまで普及した『眼』には、様々な付加価値が付けられていた。


 まずは、視力の向上。ある程度の夜目も効く。特別にカスタマイズすれば望遠機能を追加することも可能だ。


 次に、健康監視機能。自身の健康状態をリアルタイムで監視するセンサーが内蔵されており、血糖値や血圧の変動を早期に警告してくれる。


 そして、セキュリティと認証。人類は永年イタチごっこを繰り返してきた『パスワード管理』から、ついに解放された‥。


 そして何よりも、拡張現実(AR)機能だ。もはや、現実との区別がつかないほどリアルに眼に見える。まさに拡張現実。美しい写真を見せられたときに「それ、CGじゃね?」と突っ込むのがお約束だ。


 他にもー‥目覚まし時計の機能により、確実に目覚めることが出来るようになったり、忘れ物しなくなったり等々‥。


 今となっては、この『眼』が無ければ、まともな生活ができいような、そんな時代に俺はいる。





───『チャット・キューピット』のインストールが完了しました。『眼』と接続しますか?


『Yes』っと。

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