それ、CGじゃね?
あのときのほろよん
1.アイドルか天使か、それとも‥オッサンか!?
「観てくれ! 俺の
昼休みの教室で、俺‥
「わぁー、可愛いわね。アイドルみたーい」
まったく興味を示してこないのは、幼馴染の
「それ、CGじゃね?」
ボソリと核心を突くコイツは
な?
これが『幼馴染とのイチャコラストーリー』だとしたら俺は、ただのモブでしかないのだ‥。
家が近所ってこともあって、以前はよく三人で遊んでいた。
玲奈のことを恋愛対象として意識したことが『まったく無かった』と言えばウソになるが、恋していたかと問われると、恋していたほどでは無かった‥と思う。だから、この二人が付き合うと知ったときには、心から祝福することができた。
でも、流石にそれからは、いつも三人で‥というワケにもいかず‥。だけども、俺だって、寂しいもんだから‥。ネットで友達を探してみたりとか、してみたっていいだろ?
「CGなんかじゃねーよ! 多分‥。だって今週末、会う約束したし。CGなら即バレじゃん」
動画の音量を上げた。
『それじゃ翔くん、週末、楽しみにしてるね♪ ばいばぁ~い♪‥‥それじゃ翔くん、週末、楽しみにしてるね♪ ばいばぁ~い♪‥‥それじゃ翔くん、‥‥』
健太が俺のスマホを押しのけながら忠告してくる。
「ハイハイ、リアルで会った時は『眼』のAR機能はONのままにしといた方がいいぞ。」
「ん? なんでだよ。確かめるならARはOFFだろ?」
「だってお前‥天使だと思って会ってみたら、オッサンかもしれねーだろ? ぶふっ」
「‥‥っなワケねーだろ!」
「ねぇねぇ、週末会うってことはぁ、初デート? 初デートだよねぇ? どこ行くの~? どこまでイクのぉ~?」
玲奈め‥俺の弱点を知りつつプレッシャーをかけてきやがる。
そう、俺は未だに、女の子と二人でお出掛けとか‥デ・デートとかをしたことが無い。
「そうだよ‥。初デートなんだよ‥。あー! 今から緊張してきたー‥ぜってー会話とか途切れちゃいそう‥。頼む、助けてくれろ~」
我ながら情けないが、背に腹は代えられない。頼れるのはコイツらしかいないのだ。
「それなら、『デートアシスタントアプリ』を入れて『眼』にリンクしとけよ」
「『デートアシスタントアプリ』?」
「何種類かあったと思うぜー‥評価はマチマチだけど、おススメはコレかな?‥‥シェア送った」
健太がスマホの画面を操作すると、俺のスマホの着信音が鳴る。
「そのアプリを入れて『眼』と繋げとけば、状況をAIが判断して会話のネタとかを視界に提示してくれるってよ」
「そんな便利なアプリが‥‥」
早速インストールすることにした。
───西暦20XX年。
数年前に東ヨーロッパの方で発生した新型ウィルス‥通称『ヴィズ・ウィルス』は、瞬く間に世界中に蔓延した。
風邪とよく似た症状で致死性は低かったが、視力に大きなダメージが残る後遺症が問題となった。
世界中の人々が視力を失っていく中、機械と有機体を融合させる技術を応用し、人工眼球を移植する『ネオオプティクス』が各国で承認された。
高齢者は移植手術に適応できないケースが多かったが、若い世代は99.9%が『ネオオプティクス』により『眼』を移植された。
そこまで普及した『眼』には、様々な付加価値が付けられていた。
まずは、視力の向上。ある程度の夜目も効く。特別にカスタマイズすれば望遠機能を追加することも可能だ。
次に、健康監視機能。自身の健康状態をリアルタイムで監視するセンサーが内蔵されており、血糖値や血圧の変動を早期に警告してくれる。
そして、セキュリティと認証。人類は永年イタチごっこを繰り返してきた『パスワード管理』から、ついに解放された‥。
そして何よりも、拡張現実(AR)機能だ。もはや、現実との区別がつかないほどリアルに眼に見える。まさに拡張現実。美しい写真を見せられたときに「それ、CGじゃね?」と突っ込むのがお約束だ。
他にもー‥目覚まし時計の機能により、確実に目覚めることが出来るようになったり、忘れ物しなくなったり等々‥。
今となっては、この『眼』が無ければ、まともな生活ができいような、そんな時代に俺はいる。
───『チャット・キューピット』のインストールが完了しました。『眼』と接続しますか?
『Yes』っと。
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