予知と占い
「は?」
占いで殺人事件を目撃だって?いかがわしい女だとは聞いていたがこれほどとは。
「私達も最初はそう言いましたよ。まあ実際死体が出てるわけですから、話を聞かないわけにもいかない。聞いて見ると占いで見たという一点以外は筋が通っている。なんて言いましたっけ…財…?」
「財田文子さんですか?」
「あぁ、ご存知でしたか、貴方が引っ越してきたばかりだとお聞きしていたので……ここらでは有名人ではあるんですがね。でまあ人殺しってことでキツく聞き直してみると彼女も折れてしまって、偶然に外を見ていたら貴方のように殺人影絵を見たんだと言うわけです」
「無論五月二十日に」
彼は手で狐の顔を作りながらしげしげと眺める。親指を動かしてキツネの口を開閉させるのだが、何故かキツネのイメージは目の前のKに重なるようだった。
混乱してきた。
私の隣に住む占い師が同じように殺人を目撃していただって?
しかも一週間も後に…?
いや、この場合私の目撃が一週間早いということになってしまうわけだが……
私が目撃したのは一体……?
「彼女が占いなら、貴方は予知ですね」
彼はフフっと笑うと何がそんなに面白いのか腹を抱えて笑い始めた。
予知。読んで字の如く、未来に起こる事象を予め知ること。
私は浪漫を大事にするが、そんな超自然現象が「あってもいい」と思うことと「ある」と思うことは全く違う。この男は何を考えているのか。
「あなたも彼女も嘘をついていないとすれば、それしか考えられないではありませんか。違いますか?これを否定するならば、もう一軒全く同じ手順で殺人事件が行われた可能性を信じるよりありませんね」
ゾッとした。彼は今となっては荒唐無稽になってしまった私の体験を馬鹿にするどころか、もう一つ死体を作り出そうとしているのだ。
「あぁ、すいません、お喋りが過ぎましたね。貴方のお話だと警護の一人でもつけた方が良さそうですね。」
そういうと若い刑事を二人呼び寄せてそれぞれに指示を出しているようだった。
「この合田を事件解決まで貴方に付けておきます。勿論交代はさせますが、交代が必要になるまでには解決させますよ。合田君、引っ越してきたばかりだそうだからそれも手伝ってあげなさい」
結局私の警護──どう考えても監視なのだが──には見るからにやる気のない若い刑事が付くことになった。
ただ、解決するといった彼の目にはもう真相が浮かんでいるような気がした。
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