第47話 後輩に打ち明けた
果たして
全員が席に着いたところで、同島が加後さんに話し始めた。
「加後ちゃん、さっき言ったことなんだけどね、確かに私は今日、スイーツ店めぐりをして映画を観たんだけど、その時は
「それってつまり、デートってことですか?」
「うん、そうだね。嘘ついて本当にごめんね」
「いえ! 同島さんは嘘は言ってないです! それよりも桜場さん!」
「俺!?」
なんだか怒られる予感しかしない。
「それならそうと私が誘った時に言ってくれればいいのに! まったくもう!」
加後さんは怒っている。だけど本気じゃなく、ぷんすかという表現がとても合う。
「いやだって女の子の誘いを断って他の女の子とデートって、ただ断られるだけよりも嫌な気分になるだろうなって思ったから」
「そのお気遣いは嬉しいですけど、同島さんならいいんです!」
「相手が同島だとしても、加後さんに隠しごとしてたことに変わりはないよ」
「ここに入る前の待ち合わせの時、桜場さんと同島さん一緒に来ましたよね? それを見て私、やっぱり桜場さんと同島さんはお似合いだなって思ったんです」
加後さんのぷんすかが終わり、真面目な表情で話し始めた。
「それに同島さんの今日の服装、私と会うだけなら、おしゃれする必要なんてありませんよね。それを見てもしかしたらって思いました」
やはり加後さんは勘づいていたようだ。
「私って悪い子なんです。うすうす分かってはいても、心のどこかで違ってたらいいのにと思って、あんな試すような言い方をしてしまいました。ごめんなさい」
「ううん、加後ちゃんは悪い子じゃないよ。だって自分で反省してきちんと謝れるんだもん。そもそも加後ちゃんは何も悪くないからね。それに私は加後ちゃんからいつも元気をもらっているんだよ。お礼を言うことはあっても、加後ちゃんを責めることなんてあるわけないよ。加後ちゃん、いつもありがとう」
同島からその言葉を聞いた加後さんは、同島に抱きついた。そして少し泣きそうな声を出す。
「同島さぁーん! 私、同島さんも好きなんです! それなのにっ、それなのに、同島さんを困らせちゃった……!」
おそらく加後さんの感情には自己嫌悪も混ざっているのだろう。
「困ってないってば。加後ちゃん、今日は私のおごりだから好きなものを頼んでね!」
「やったあ! お酒ー!」
「えっ!? 加後さん、それ以上飲むといろいろ支障が出るんじゃない?」
「むうぅー、桜場さんはなんでいつもお酒をとめるんですかー」
「泥酔するから」
「むうぅー、大丈夫です! 今までに私がお酒を飲んで迷惑かけたことがありますか!?」
「居酒屋での無意味なお姫様抱っことか、同島が住むマンションのエントランスで歩けなくなってしたお姫様抱っことか、予定外で同島の家に泊まることになったこととか」
「ぐう」
ぐうの音は出たけど反論はできないようだ。
「まあまあ桜場、いいじゃない。今日は加後ちゃんからのお誘いなんだし」
「あ、そうだ桜場さん、私と出かける約束は守ってもらいますよ!」
同島からも約束は守ってあげてと頼まれてるし、俺としてもやっぱり一度約束したことを無かったことにはできない。
「分かった、どこに行こうか?」
「スイーツ店めぐりがいいです!」
「了解、来週に行こうか。同島、悪いけどそれでいい?」
「もちろん! 私としても二人で行ってきてほしいな」
「何言ってるんですかー! 同島さんも一緒に行くんです。三人で行きましょう!」
「加後さんはそれでいいの?」
「もちろんです! ちゃんと私と出かけるんですから!」
加後さんは嬉しそうにそう言うと、注文したお酒を飲み始めた。そして同島がスマホを見たあと、俺に話しかけてきた。
「桜場、もうすぐ着くって」
「誰が?」
「あの人しかいないじゃない」
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