第44話 後輩は同期に頼る
信号待ちをしていると、
「あ、
おかしいな、普通の言葉なのになんだか嫌な予感しかしないぞ?
「緊急かもしれないから出るね?」
「万が一があるからな。俺もそれがいいと思う」
「もしもし加後ちゃん、どうしたの?」
同島が加後さんと話し始めた。それにしても加後さん、絶妙なタイミング。今俺にできることはなんだろう?
よし、カメラを探せ! きっと別部屋でモニタリングしているに違いない! ……ドライブレコーダーしかないな。
さては後ろの車、加後さんが乗ってるな? ルームミラーで確認だ! ……男じゃねえか!
そうか、ドローンだ! 上空からとはなかなかやるな? ……薄暗くてよく分からん! 確かいろんな条件があるんだっけ。法律違反はいけない。
加後さんがそんなことをするわけがない。そうこうしているうちに信号が青に。俺だけならまだしも、今は同島も乗っている。ここからは運転に集中だ。
「えっ、今? そうだね、車の中にいるよ。大丈夫、私が運転してるわけじゃないからね」
どうやら車の中ということが速攻でバレたらしい。まあ電話越しでも車の中だとすぐ分かるからな。
「えっ、そんなことがあったの!? それでどうなったの? ……うん。うん」
もしかすると本当に緊急の用事なんだろうか?
「それは大変だったね。……えっ、今から?」
なんか無茶なことを言われたっぽいな。
「えーっと、ちょっと待ってもらえるかな?」
同島はそう言うと、通話を保留にしてから俺に相談をしてきた。
「あのね、今日は加後ちゃんが土曜出勤なんだけど、理不尽なクレームのキツいお客さんにあたってしまったみたいでね、今から私と会って話を聞いてほしいんだって。私、加後ちゃんの気持ちすごく分かるから、できれば応じてあげたいんだけど、いいかな?」
これは加後さんのわがままではない。誰にだって、ただ静かに話を聞いてほしい時があるだろう。これは同島が加後さんのことを大切に思っているからこその相談なんだ。
「分かった。それで加後さんの負担が少しでも軽くなるなら、喜んで協力するよ。それじゃ今日はこれで解散だな。俺は同島の可愛い一面が知れただけで満足だ」
「もう! 最後の一言は余計だよね!」
同島はそう言って再びスマホを耳に当てた。俺は目的地を同島が住むマンションへと変更する。
「加後ちゃんお待たせ。いいよ、今から会おうね。……えっ!? さ、さぁ? それは私には分からないよ」
なんだか加後さんが無茶なことを言ってる姿が想像できるなあ。
「うん、分かった。また後でね!」
同島が電話を切った。加後さんが最後に何を言ったのか気になるので、俺が同島に聞こうとすると、先に同島が口を開いた。
「
えぇ……何その予言。なんだか怖い。
「加後ちゃんが桜場にも来てほしいって」
「そう言われても困る」
俺は今日、加後さんからの誘いを先送りにして同島と会っている。なので、誘いに応じるのは不自然だ。
ここで俺のスマホから通知音が鳴る。どうやら加後さんはメッセージにしたらしい。同島の予言は少しはずれたようだ。
信号待ちの間にササッと確認をする。そして俺はメッセージの画面を同島に見せた。
『桜場さん助けてくださーい! 同島さんも来てくれますので、今日は難しいということでしたけど、もう夜だしもしお時間あれば、ここまで来て私のお話聞いてほしいですー』
そんな文章と店の場所とともに、よく分からんキャラクターがお願いしてる、ポップなスタンプが送られてきた。重くならないようにとの配慮だろう。
「助けてと言われてる以上応えたいんだけど、どうだろう?」
「そうだね、それでこそ桜場だもんね。いいと思うよ」
俺と同島は付き合ってはいないけど、俺なりに同島に誠実であるつもりだ。
俺は手早く返信を済ませると、加後さんから『やったぁ』と返ってきた。
俺と同島が同じタイミングで店に着くのは不自然なので、タイミングをずらそうかと考えたが、そこまでするのは加後さんに悪いと思い、俺が途中で同島の家に寄って、同島を乗せて来たということにした。
店の前ではすでに加後さんが待っていた。仕事終わりらしく、黒のスカートスーツ姿だ。
「あれ? お二人は一緒に来たんですか?」
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