第39話 先輩から同期のことを聞いた
俺が
仕事が終わって家に帰り一人で過ごしていると、今日の自分の行動を思い出す。自分で言ったことの責任を取るため先名さんを誘おうとしたけど、強引だった。
そのまま疎遠になってもおかしくないけど、先名さんの大人の対応に助けられた。明日会った時に謝ろう。
次の日の昼休み。俺と先名さんはレストランで一緒に食事をしている。
「来てくれてありがとうございます。それと昨日はすみませんでした」
「先に誘ったのは私だから、
「昨日以外にですか?」
「ほら、初対面の
「確かにあの時も俺、先名さんに謝りましたね」
あれは今考えても意味わからん行動だったと思う。
「それでですね、やっぱり気になってる人がいるのに、別の人と二人で出かけるのは良くないですよね」
「恋人がいなければいいという人もいるし、私はだけどあまり良くないとは思うかな。でもそのあたりの感覚は本当に人それぞれだと思うわね。ちょっとズルい言い方になるけど、時間は有限だからいろんな人と会ってみればいいと思う人も、それは不誠実だと思う人も、どちらも正しいと言えるんじゃないかしら」
こういう時に、やっぱり先名さんは俺よりもずっと大人で、俺はまだまだ経験が足りないと感じる。
「桜場くんが気になってる人って同島さんのこと?」
「はい。本当にここ最近になってなんです。前にみんなで行った花見の時は、それまで通り友達だと思ってたんですけどね」
ここでごまかしたら、真剣に話を聞いてくれている先名さんに申し訳が立たない。
「新入社員研修についてのミーティングが終わった後、同島と話したんですけど、それまでとは少し違った様子で、話しの流れもありましたが『気になってきちゃうよね』って言われました」
「それで桜場くんも同島さんが気になるようになった、そういうことね」
「はい。それで俺から同島と飲みに行く約束をしたんですけど、延期になってる状態です」
「それは絶対に実現させないとね」
「はい、そのつもりです。同島さえよければ今週にでも」
「桜場くん、同島さんって本当にいい子なの。いつも明るくて気さくで、気遣いができて。それなのにちょっぴりヤキモチ焼きで、そこがまた可愛くて。私にできることなら、なんでもしてあげたいなって思うの」
今になって思えば花見の時や、加後さんの介抱のため同島のマンションに行った時に見た『怖い同島』も、俺にヤキモチを焼いてくれているという証拠じゃないか。
「俺は同島から仕事の話をよく聞いてるんですけど、やっぱり大変な仕事なんですか?」
「それはもう大変よ。サービスや製品の使い方などの案内なら問題ないんだけど、やっぱりクレームとなると、並以上の精神力が必要ね」
そうだよな。電話だとチャットと違って、声のトーンや大きさで怒りの感情が伝わってくるから、メンタルへのダメージが大きいだろう。
「同島さん自身も大変なのに、加後さんをはじめとした後輩へのケアも欠かさないし、心配かけまいと弱気なところを見せないようにしてるのが分かるわね」
さすが先名さん、よく見ている。まさにリーダーにふさわしい人だと思う。
「私から言えるのはこのくらいかな。あとは桜場くん次第ね」
「ありがとうございました。それとすみません、せっかくの昼休みなのに仕事と俺の話になってしまって」
「気にしなくていいのよ。私も伝えたいことは大体言えたからね。それにまだ一つ話題が残ってるわよ」
「何ですか?」
「もちろん昨日のことよ」
俺はその後、先名さんから優しくお叱りを受けた。やっぱり先名さんには敵わない。
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