第22話 先輩と後輩から誘われた
俺が昼食をとろうとした時、
先にメッセージをくれたのは加後さんで、昨日の夜中に、一緒に食事する約束を
ただ、嬉しいことに先名さんも誘ってくれているので、そちらにも応えたい。
だからといって三人で、というのは違うだろう。もし三人でということになっても、きっと二人は受け入れてくれるに違いない。
でも、二人とも俺を誘ってくれているんだ。
それならば、思い切って二人とも断るというのはどうだろうか。いや、さすがにそれはヘタレすぎるな。それこそ二人に失礼だ。
それとも、時間を少しずらして昼食を二回とってみるか?
そして俺は今、職場から少し離れたレストランに居る。
「
俺は加後さんと二人で過ごすことにした。やっぱり先約を優先するべきだと思ったからだ。
先名さんには謝罪と誘ってくれて嬉しかったことと、『後日俺からお誘いします』とフォローのメッセージを送った。
先名さんからは、『気にしないで。私こそ急に誘ってごめんなさい。桜場くんからのアプローチを待ってるわね!』と、冗談めかした返信が届いた。俺を気遣ってのことだろう。
それにしても先名さんの誘いを断って、加後さんと会っているだなんて、なんだかイケナイことをしている感覚になる。
そういえば今こうして会っている約束だって、同島の家で同島が眠っている間にしたものだ。俺と加後さんはイケナイ関係なのか?
「加後さん、ずいぶんと急なお誘いだけど、何かあった?」
「いえ、何もありませんよ。一緒にご飯を食べるって約束したじゃないですか」
「それはそうだけど、まさか今日だとは思わなかったよ」
「だって早く桜場さんと二人きりでお話したくって」
「そんな改まらなくても俺と加後さんって、もう結構会ってない?」
「じっくりとはお話していないと思いますよ」
本当にそうだろうか? 加後さんとの出会いから思い出してみよう。
まず初めて会ったのは同島との二人飲み会の時で、同島が勝手に加後さんを呼んでいた。それからしばらくは同島と三人だった。
そして加後さんが泥酔したので、それからはまともに話せなかった。
次に会ったのは職場の自販機の前で花見に誘われた時だ。勤務中だったため、雑談をする時間は無かった。
次は花見の時で、四人だったので加後さんと一対一では話せていない。
そして加後さんが泥酔したので、やはりまともに話せなかった。
直近は同島の家だが、そもそも加後さんの介抱のためだったので、すでに泥酔していた。
回復してからも同島と三人で過ごし、夜中はメッセージのやり取りを少ししただけだ。
(加後さん泥酔してばっかりじゃね?)
「確かに二人きりではあまり話していないかもしれないな」
「ですよね! なので、今日の夜も一緒にご飯を食べましょう!」
「夜も? いくらなんでも急すぎない? また後日にしようか」
「……やだ。今日がいいもん」
「やだって……」
「桜場さん、お願い」
心なしか加後さんは上目遣いで俺を見つめているように見える。本当にさっきの仕事中の毅然とした振る舞いからは想像ができない。
「仮に今日行くとして、どこに行くつもり?」
「居酒屋です!」
「それだけはやめておこう!」
俺の加後さんに対する印象が、初対面の時と比べてずいぶんと変わっていた。
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