『未来の献立』(お題「忘れられた手紙」)

 実家を建て直すことになり、帰省して子供の頃使っていた部屋を整理していた。当時読んでいた漫画やゲーム機などを見つけて、何度も手を止めて懐かしみながら、悲しいかな廃棄用の箱に整理していった。 夕方、あらかた整理が終わったところで一枚の便せんがどこからかひらりと舞い落ちた。宛名には何も書かれていない。文字はかなり雑に書かれており、判読が難しいが、料理メモと題されていて日付と料理の名前がひたすらに並べられているようだった。今日の日付から見ていくと、「6/19 肉じゃが。6/20 カオマンガイ。6/21 筑前煮。6/22 グリーンカレー…」とある。 驚いたことに確かに今日久々に食べた母の手料理は肉じゃがだった。偶然の一致か、未来の献立が書かれている不思議な手紙だったら面白いな、などと子供のようなことを考えて手紙を懐にしまった。  翌日の夕飯はカオマンガイ、その次の日は筑前煮だった。母の料理のレパートリーは300種類以上に及び、偶然というにはあまりにも確率が低い。 「母さん、もしかして明日の献立ってグリーンカレー…?」 尋ねると母は驚いた顔をしていた。 「なんでわかったの…?」 私は例の便せんを母に見せ、そこに日付と献立が書いてあったことを伝えた。 「そう…。このメモ、あなたの部屋にあったのね…。これは若いころ日ごとの献立を記録していたメモなの。私は365日のすべてに献立を割り当てていて、40年間毎年同じ日に同じ料理を作っているの。」

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ChatGPTにお題を出してもらって書いた短編集 バ=モーキ @mimigar_mimigar

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