「……んっ、んん……あっ」


「どうでしょう。気持ちいですか?」


「え、えぇ……気持ちいいわ。んっ、もっとお願い」


「わかりました。お任せを~」


 気持ちよさそうな声を上げるクレオパトラ。

 そんな彼女の頭を膝の上に乗せ、彼女の耳の中を掃除している最中であるオクタヴィウスは変わらず手を動かす。

 

「……んんっ」


 既に陽が完全に落ち、部屋の中を照らすのはオクタヴィウスの光源の魔法だけ、というような状況の中で彼はクレオパトラのお世話を行っていく。

 世界が静まり返る、この、いつもの夜の時間はオクタヴィウスとクレオパトラだけの時間だ。

 この時間においては今のようにオクタヴィウスがクレオパトラの耳かきをしてあげているときもあれば、ただ膝枕で彼女の頭を撫でてあげているだけという時もある。


「はい。これで終わりです。もう綺麗になりました」


「ほ、ほんとう?ありがとうね。今日も」


「いえ、これが自分の仕事ですからお気になさらず」


 オクタヴィウスはクレオパトラの言葉に頷きながら最高級のもので作られた質が良く、豪華な耳かきをしっかりと箱へと仕舞う。


「今日は、どうだったかしら?いつもと変わりないかしら?」


「はい。ございませんでした。いつものように官僚たちと共に働き、多くを学ぶことが出来ました」


「それなら、良かったわ」


「クレオパトラ様は今日、どうでしたか?」


「私は……そうね」


 そして、その耳かきを終えた後。

 オクタヴィウスとクレオパトラは他愛のない、今日あったことについての雑談を始める。


「ふわぁ……」


 しばしの時が流れて。

 かなり多くの時間を雑談に費やした後、既に目つきがだいぶ蕩け、かなり眠そうになっているオクタヴィウスが大きくあくびを浮かべる。


「んっ?もう眠い、かしら?」


「……はい。そうですね。既にもう眠いですかね」


「あら、そうなの……それじゃあ、そろそろ帰る時間ね」


「そうですね……自分はこの辺りで失礼させていただこうかと思います」


「えぇ……」


 帰る。

 そうオクタヴィウスが告げたの確認したクレオパトラは自分の頭を彼の膝の上から持ち上げる。


「それでは」

 

 それによって自由となったオクタヴィウスは迷いなくクレオパトラの部屋から出るための扉の前に立つ。


「それじゃあ、また明日」


「はい。また明日」


 最後の挨拶を交わしたオクタヴィウスはゆっくりと扉を開け、そのまま部屋から出ていく。


「ふぅー」

 

 クレオパトラの部屋から出て一人となったオクタヴィウス。


「帰るか」


 そんな彼の先ほどまでの眠そうな目つきは何処へやら。

 しっかりと意識を覚醒させた目つきを持つオクタヴィウスは静かに周りを見渡しながら自分の家へと帰る帰路につくのだった。

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