訪問

 アルシノエとの邂逅より。


『細かな話はまた後で。僕はもうのぼせちゃうし……何よりもクレオパトラの元に行かなきゃ行けないから』


 などと話して風呂場から逃げ出してきたオクタヴィウスは今。


「(あぁー!どぉーしよぉ!?叩き潰す算段なんて持ってないけどぉ!)」


 心の中で頭を抱えてしまっていた。


「(完全にやらかした……まず、クレオパトラを倒すのはなしだ。得たいものが得られなくなる。アルシノエと策を弄したところで何処まで行ってもエジプトの官僚止まりな上、自分の立場も不安定なものになる……と、なるとアルシノエを落とす他ないのだが……無理だな)」


 アレクサンドリアの宮殿の廊下を歩いているオクタヴィウスは高速で頭を回転させていく。


「(奴隷が王族をどうこう出来るはずがない……はぁー、実に頭が痛い。どうあっても、策を変える他ないな。これは)」


 そして、オクタヴィウスは自分が持っていたプランを捨て、元々用意していた第二のプランに移ることを決意する。


「んっ」


 そんなことをオクタヴィウスが考えながら道を進んでいたところ、彼はクレオパトラの部屋へと入る扉にたどり着く。


「ふぅー、今はこっち」


 それを受け、オクタヴィウスは頭の痛い悩みを一旦は吐き出して目の前の事象に集中する。


「失礼します、クレオパトラ様」


 オクタヴィウスはノックもせずに堂々たる態度でクレオパトラの部屋の扉を開けて中へと入っていく。


「い、いらっしゃい。遅かったわね。何か、していたのかしら?」


「そうですか?いつもと同じくらいだと思いましたが……もしかしたら少し、無意識のうちに長風呂となってしまっていたかもしれません」


「そうなのね」


 僕はお風呂に入ったことで少し火照っている自分の姿のまま、クレオパトラへと近づいていく。


「遅れてしまい申し訳ありません」


「いえ、気にしないでちょうだい……それじゃあ、今日もよろしくね?」


「承知致しました」


 ベッドに寝転びながら、こちらへと懇願の声を上げるクレオパトラの言葉に僕はゆっくりと頷くのだった

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