交渉
自身最大の秘密であった性別。
それがバレてしまったオクタヴィウスではあるものの、それでも彼は堂々たる態度で交渉を持ち出していく。
「……何?」
「文字通りさ。僕たちは協力関係を構築できると思うんだ」
「……協力関係?私と、貴方が?奴隷と王族である私と貴方が本当に協力関係を出来ると思っているの?」
「もちろん。だってさ、君ってばクレオパトラのことは好きじゃないでしょ?」
「……君?ずいぶんな口調を使うのね」
「僕はここまで自分の美貌だけでここまで成り上がってきた……が、そんな僕にも問題がある。こんな風に自分の性別がバレてしまうことさ」
「……ちょっと、私の言葉は無視?」
「ふふっ……ここまで言えば、もうわかっているでしょ?僕の問題。僕はこれから己が成長していく中で、自分の立場をこの国で確固たるものにするためには自分の最大のパトロンであるクレオパトラを倒すしかないのさ」
「……えぇ、それはわかっているわよ。でも、それに私が協力する必要ないじゃない」
「貴方自身の嫉妬心。それだけで十分でしょう?」
王族であるアルシノエに対して、オクタヴィウスが余裕綽綽な態度で交渉を行っていた理由。
「常に自分の上にいた忌々しい姉……それが無様に敗れるさまはさぞ、心地よいと思わない?」
それはアルシノエの持つどうあっても拭いきることのできない嫉妬心を看破していたからだ。
「っごく」
「自身が愛していた愛人を隣に侍らせた、これまで格下として見下していた妹から自身の立場を追われるクレオパトラは……どんな表情を浮かべるんだろうねぇ?」
そして、オクタヴィウスは他人の心を湧き上がらせるが以上にうまかった。
アルシノエの相貌にそっと手を這わせるオクタヴィウスは彼女の耳元でささやく。
「……策は、何かあるのかしら?」
これまでの人生において、多くの人間の人心掌握を続けてきたオクタヴィウスを前に、ただ嫉妬心に身を焦がれるだけのアルシノエは抵抗し続けることが出来なかったのだった。
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