政務
女好きのクレオパトラ。
クレオパトラが恋慕の対象として男ではなく、女に向けられているのはかなり前からエジプトどころか、地中海全体に知れわたっている事実である。
その事実に付随するように、最も美しき少女として市井でも語られているオクタヴィウスがクレオパトラの御付きとなることに対して、あまり驚きの意を見せる者も少ないであろう。
だが、その当のオクタヴィウスが政務まで行っていると聞けば驚く人ばかりだろう。
「ここはこれでいいよね?」
エジプト全体の政務を行っている当国の官僚。
彼らが集まって職務を行っている部屋にはオクタヴィウスの姿も当然のようにあった。
「あぁ、それで大丈夫……ったく、借金が多すぎて頭痛くなる。作りすぎん何だよ。我が王は」
とはいえ、まだ朝早いこの時間帯にいるのはオクタヴィウスと、もう一人の官僚しかいなかったが。
「おっと?ファラオへの文句?これは僕が上に密告すればうまいこといくんじゃない?僕がさぁー」
「ふっ。奴隷の言葉を信じる人がどれだけいると?」
「クレオパトラがいるもん」
「おっとぉ?さっきのは聞かなかったことにしてくれ」
オクタヴィウスと官僚は軽口を叩きあいながらエジプトの政務を進めていく。
目下、エジプトにおける政治の最大の問題は現在のエジプトファラオであるプトレマイオス12世が亡命中の生活費と政界工作費による借金が重くのしかかっている現状である。
増税をしようにもそれを行うと民衆が再度、反乱を起こしかねないので難しい。
色々と八方塞がりな現状となっている。
ちなみに、現ファラオは一度、反乱を起こされている。
プトレマイオス12世は即位の際に、ローマから王位を後押ししてもらうために多額の献金をローマのカエサルに対して行っている。
これを増税で賄おうとしたために反乱勃発。
それで一度ローマへとプトレマイオス12世は逃げ帰っている。
そして、プトレマイオス12世はこれまたローマで有力者に多額の献金を行うことでまたまた王位に戻っており……だけど、ここでも献金したので多額の金を使ってしまっている。
ここら辺の動きで出来た借金があまりにも多すぎるのだ。
「……借金はどうあっても頭の痛い問題だけどね」
「……そこらへんはもう頑張るしかないだろう。幸い、うちにはパピルスに、ガラスに、繊維に。売れるものはいくらでもあるのだからな」
「どこに売るのが一番高値つくかねぇー」
王のせいで借金まみれとなっている中、それでも下にいるオクタヴィウスと官僚はせっせと借金を払い終えるために努力していくのだった。
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