第16話 再開
橋を通り過ぎトウマに腕を引かれながら目的地まで進む。
「…おまえ今からどこ行くかわかってんのか?」
「もちろん。あの子のところでしょ?僕がルルアさんと出会う前に一緒にいた…」
「なんでわかんだよ。」
「だってナギ、ずっと牢獄にいたってことは1人でしょ。そんなとこにいたら知り合いなんて少ないだろうし?」
「んなっ…!おまえー!」
掴んでいた腕を勢いよく振りほどきトウマの頬をつねる。
「ははっ変な顔〜!」
少し腹が立ったのかトウマは口をへの字に曲げ迎え討つ。
俺の手を力ずくで離すとその流れで俺の頬に手がのびる。
「むむむっ…こんのー!」
「あっははは!ナギのほうが変な顔〜!」
そして俺がまた手を伸ばそうとしたとき―
「おーい!おーい!おまえナギか?!」
名前を呼ばれて振り向くとリンヤが大きく手を振りながら走ってくるのが見えた。
「はぁっ…はぁ…はぁ。おまえあの後何の連絡もくれなかったろ。」
そういえばバタバタしてて電報送れてなかったっけか。
「あぁ、悪い。あれから色々あってな…」
「まいいけどさっ!…っておまえの隣にいる人って…」
リンヤの視線がトウマに移る。
「お前公国のぐんじ…んむっ!」
俺は咄嗟にリンヤの口を塞いだ。
ったくリンヤ…おまえって奴は…。
「いいかリンヤ。このことは他言無用で頼む。」
口が塞がれていて声が出せないリンヤは動かせるだけ精一杯頭を上下させて頷いた。
「…っぷはぁ!お前急になにするんだよ!」
「おまえがまずいこと言いかけたからに決まってんだろ…」
俺はハッとしてトウマの方を見ると、トウマはまるで俺たちの保護者のような優しい目つきで見守っていた。
「ふふっ…2人はどんな関係なの?随分と仲いいみたいだけど。」
「あ、あんたこそナギと何の関係があんだよ!」
「あぁ。それはね―」
「いや、俺が言う。」
トウマの言葉を遮るように手をかざす。
「リンヤ、よく聞いてくれ。こいつは悪人じゃない。俺を救ってくれた…恩人だ。」
「恩人…それならおれも…助けられたしおれにとっても恩人…だな。」
目を合わせないようキョロキョロしていて申し訳無さそうなリンヤをみたトウマは、
「君が無事ならよかった。それとリンヤくん、僕のことを善人か悪人か見極めるのは君自身だよ。」
最初はポカンとしていたリンヤだったが、その後コクンと頷いた。
普通に聞くとただの教訓…アドバイスにしか聞こえないようだったが、俺にはどうしても別の意図があるように聞こえてならなかった。
「ま、立ち話はこれくらいにして…っと。2人はなんでわざわざこんな隣町まで来たんだ?」
「ほんとはこっちの街をリンヤに案内してもらおうと思ってたんだけどな。予定変更だ。王宮の間取りを教えてくれ。」
その時既に太陽は3人のちょうど真上まで昇っていて、夜にルルアと落ち合うことも考えると観光するには足りない時間であった。
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