第12話 lastwill
「作戦開始はいつにする。」
「ルルアさんの方の状況次第だけど、明後日か明々後日を目標にして準備しようと思ってる。」
「1日2日で準備できんのか?ルルア。」
「拳銃と手榴弾は軍の武器保管庫から盗んでくればいいし、爆弾は…まぁ知り合いに頼めば間に合うだろ。」
「武器保管庫って…お前見つかったら一発で牢獄行きだろ。」
「私だって一応軍の関係者だぞ。別にいたって不思議じゃないさ。」
「できるだけルルアさんが人目につかないようにしないとね。」
既に夜は深くなっていて、外は静寂に包まれていた。
話し合いの結果、決行は明後日。
武器保管庫へは当日、本部へ乗り込む前に行くことになった。
単身で乗り込むことは2人には猛反対されたが無理を言って通した。
「ルルアさんは今日泊まっていくんですよね。」
ナギももう寝てしまったのか、部屋から物音は聞こえなくなった。
うーん…と少し考え込んだあと、
「2人で話したいこともあるだろうし、私は近所の宿にでも泊まることにするよ。」
「でも…」
「もともとは2人でやるつもりだったんだろう?なら私がここにいる理由はないよ。」
そう言い切るとそそくさと出ていってしまった。
1人取り残されたトウマは物音をたてないようにテーブルの上に散らかった作戦の書かれた紙を片付ける。
「明後日…か。」
明後日になれば遂に指名手配で懸賞金がかけられるのだろうか。
それとも―
死んでいるのだろうか。
自室に戻って机の前に座る。
引き出しから書きかけの紙を取り出し、ペンを手に取る。
「そういえば、兄さんに会わせてくれた人の名前…聞いてなかったな…でも、また会った時に渡せばいいよね。」
あの人は僕という人間を信じてくれた。
お前を信じる―
今まで生きてきたこの人生の中で、その言葉が僕を止める足枷になって縛りついていた。
何も情報を盗まないまま帝国を出ることこそがあの人が味方でいてくれる唯一の条件。
それを僕は裏切ってしまった。
僕はこれまでそうやって人を裏切って、殺してきた。
もう…あとには戻れないんだよ。
1人目を殺してしまったあの瞬間から――
裏切ったことへの謝罪、そして最後にこう綴った。
僕を目の前にしても、どうか…どうか1人の公国軍人として武器を構え、戦ってください―と。
2つ目の手紙はイヴに宛てて書こうと思った。
イヴは…兄さんは、独りぼっちだった僕に手を差し伸べてくれた大切な家族だから。
初めて出会ったときのこと、公国でのこと、ナギやルルアさんのこと…書きたいことは山ほどあった。また顔をあわせて話したいほどだった。
明後日になってしまえばもう兄さんとゆっくり話せる時間は永遠とやってこない。
だから、言いたいこと全てをここで伝えなければならない。
全てを――
「はぁ…。」
ずっと頭を使っていたからか、疲労が溜まっていた。
「そろそろ寝ないと…明日はナギと過ごせる最後の日だから…。」
書き終わった手紙を引き出しにしまってベッドに寝転ぶ。
「まだナギへの手紙…書けてないんだけどなぁ…。」
疲労感に耐えられずに夢の中へと落ちていった。
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