第11話 狩られる前に狩る
はむっ…
「トウマ!この料理なんて言うんだ?」
ナギは口元を真っ赤にさせていた。
「これはミネストローネって言うんだ。またナギにも作り方教えてあげるね。」
「ん…。」
そうして3人で他愛もない会話をしながら朝食をとった。
気づけば太陽が真上近くまで昇ってしまっていた。
「さぁて…朝ご飯も食べたし喋ったし、街で買い物でもして帰ろうかな。」
そうしてルルアは席をたった。
「おい。」
ナギがそれを止めるように声をあげた。
その声を聞いてルルアは足を止める。
「話があるからわざわざここまで来たんだろ。あからさまに話題そらして、何がしたいんだよ。」
はぁ…と深いため息をつくと真剣な表情でルルアは振り返った。
「君たち2人の今後に関わることなんだよ。」
「今後…ですか?」
「今朝、私たちのところに1つの電報が届いた。本部からだ。」
「トウマ・スピネルは公国軍からの刺客だ。見つけ次第直ちに本部へ連れてくること。だとさ。」
ガタッ!
椅子が勢いよく床に倒れる。
「それどういうことだよルルア…!」
「…ッ!」
ナギはルルアの胸ぐらを掴んで問いただす。
「ちょっ…!ナギ…!」
慌てて仲裁する。
「一旦落ち着いて聞こうよ。電報にもまだ続きがあるだろうし…」
はぁ…とため息をついてナギは胸ぐらから手を離した。
ゴホンッと咳払いをしてルルアはまた話し始めた。
「ただし、この電報が送られたのは軍の中だけだ。帝国全体にはまだ知られていないだろうな。」
「つまり、まだ時間的猶予はある…ってことですか?」
「あぁ。そうなるな。」
「ま、軍だけにしか送ってねぇってことは追うのは軍だけで十分だって舐められてるってことだよな。」
「それにトウマはまだ何も情報を盗んでいない。向こうもまだ不確定な情報を流して国を混乱させたくないんだろ。」
粗方話をし終わったあと、今後についての作戦を練ることになった。
「それで、これからどうするんだ?ここがバレるのも時間の問題だぞ。」
「いっそのこと本部に爆弾でもブチ込んで乗り込めばいいんじゃねぇの?狩られる前に狩る…的な?」
そろそろ覚悟を決める時…か。
「そうしよう、ナギ。」
「なっ…急にどうしたんだトウマ。」
「流石に思い切りが良すぎると思うんだが…」
2人が目を見開いて僕の顔を覗き込む。
「本部に乗り込むっていっても下準備はちゃんとしていくから安心して。」
「トウマ…!お前それがどういうことか分かって…んむっ!」
ルルアがナギの口を塞いで落ち着かせる。
「続けてくれ。」
僕は軽く頷いて再び話を進める。
「ずっと考えてたんだ。このまま何もしなくていいのかなって。」
「もともと、僕が公国軍に入って0部隊…潜入捜査官になったのは世界を見るためなんだよ。」
「世界…?」
コクンと頷く。
「2人は帝国以外の国に行ったことある?前の任務で行った国はすごく綺麗な街だったんだよ。自然豊かで海もすごく綺麗だった。2人にも行ってほしいなぁ…」
言いたいことがあるのか、ナギが暴れ始める。
申し訳無さそうにナギの口を塞いでいた手をルルアが離した。
「2人じゃねぇ、''3人で''だ。それに俺が策を考えるより、お前が考えたほうが上手くいく…ってのは分かってたよ。もう止めねぇよ。」
3人…か。
僕も同じ気持ちだよ…ナギ。
3人で…
平和に生きたいよ…。
こみ上げてくる涙をグッと堪える。
「ありがとう、ナギ。」
ナギは少し顔を赤らめて横を向いた。
「だから、俺らは全力で手助けする。俺らを頼れよ。」
「必要なものはあるか?お前ら2人は''お尋ね者''だろ。私が調達するよ。」
「おい!お尋ね者ってなんだよ…!ルルアッ!」
「まぁまぁ…。ありがとうございます、ルルアさん。」
裏路地まで聞こえてきた人々の声や商店街の賑やかな雰囲気は消え、太陽までもが顔を隠そうとしていた。
「話し合いは出来るうちにしておいたほうが良い。いつまで穏やかにいれるか分からないからな。」
「それじゃあまず、準備するものについてですが…拳銃が2丁、手榴弾は調達できる分全て、爆弾に関しては壁を壊せるくらいの威力のものをお願いします。」
「随分と難しい注文だな。でもそれだけでいいのか?」
「はい…持っていくものはできるだけ軽くしたいので。」
ふふっと少しだけ微笑むとルルアさんも笑い返した。
「そんじゃ…次は動きの確認だな。俺は何をすりゃいい?」
ナギはやる気満々だなぁ…でも―
「ナギは街で騒動の様子を見てて欲しい。」
「どういうことだよ。」
「街にいる軍の人達の動きを監視する役目…かな。増援を呼ばれたら敵わないからね。」
「…わかったよ。監視…な。」
ナギは渋々納得してため息をついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます