第2話 人は誰しも二面性を持っている
(ねえねえ、最近さ、やばくない?)
(何の話?あー、あれねヤバいよね!)
(まじでさー、、)
(でも、なんか痛快じゃない?)
(それそれ!)
(最高だよね!カッターチャンネルっ!)
街を歩いていると、ふざけた会話が聞こえた。
いや俺以外からしたらただのまともな会話なのだが、俺からしたらふざけてるようにしか聞こえない。
ふざけてるにも程がある……
自然と気持ち悪い声が漏れた。
思わず笑ってしまったんだ。
イマドキのJKが噂をするほど勢いが炎上系YouTuber、カッターチャンネルの
もう一部の間では、相当話題になっているようだった。
俺はそのままのテンション(厨二病のような、ナルシストのような、躁鬱の躁状態のような)でバイト先に向かう。
いつもはいつ死んでもおかしくない殺虫剤を浴びたゴキブリのような生気を漂わしている俺なのに、傍から見て明らかに違う。
「ちょっ、、桐原お前、何ニヤついてんだよつ気持ち悪い」
バイト先に着いた途端、暴言を吐かれる。
暴言を吐いてきた相手は、俺より4つほどか、年下のギャル女だ。
名前は、甲斐 節子(かい せつこ)。地味な名前とは裏腹に、金髪巻き髪ロングヘアで、声にもハリがある。学生時代絶対陽キャで、俺みたいな陰キャをいじめているスクールカースト上位に属しているタイプだ。つまり、俺は彼女に舐められている。
俺がちょっと女性に弱いからって上から目線で物言いやがって……
これは説教が必要だ。
おい!お前!前々からなんだその態度!それが歳上にとる態度かよ!!いくら、俺よりバイト経験があるからって、女だからって、可愛いギャル陽キャで学生時代スクールカースト上位を張ってきたからってもう許せねえぞ!!!
なんて、言えるわけが無い。
「す、すみませんなんでもないっす」
「なら、さっさと仕事の服に着替える!」
「は、はい……」
俺は言われるままだった。
「はぁ……」
ロッカールームで吐く、いつもの溜め息である。
まあ、無理もない。
俺は超がつくほどのマルチタスクができない人間なのだ。
そしてそのミスの責任は俺の教育係である甲斐に全て行く。いつも、桐原くんが!、困るんだけど!、ちゃんと言っといてくれる!?と店長に怒られているから。
むしろ、いじめっ子ギャルがいじめっ子になるのはいじめられっ子の俺に責任があるということだろう。
「おい、桐原!なにやってんの!!それは違うって言ったでしょ!」
「桐原!それだよ!はやくやらないと仕事終わんないよ!」
「きぃーりぃーはぁぁらぁー?」
「は、はい。すみません!」
分かりやしたよ……姉御、俺はほんとに無能なんだ。だからもう、俺に怒らないでくれ。いっその事呆れてくれよ。
炎上系YouTuberとして売れ始めたばかりで、まだまだバイトのお金は必要だ。でも怒られてばかりのバイト生活は早く辞めたかった。
バイトで年下に怒られまくった、そんな時の気晴らしとして俺は最近VTuberを見るようになった。
雌垣 ァコ。
ざぁこざぁこ♡♡が口癖の、メスガキ系VTuberである。
雌垣 ァコのグッドポインツを語ろうと思ったら、文字数制限を大幅に超えて2、3話分尺を取る事になり、物語として崩壊するだけでなく、主人公としての尊厳をうしないかねないので、それを避けるために敢えて要点だけでまとめるが、とにかく、バニラが口の中で熔けたような甘い可愛いボイスから話す内容が社会の闇だの、なんだのの、ブラックコーヒーを喉に流し込まれる大人の渋さにギャップ萌えするのである(早口)
「てかさー今日、バイトでさぁ、、私より何歳か年上なんだよ?そのバイトがさ、ミスしまくるの、何でもないできて当たり前みたいな簡単な仕事なのにさー!それに全部責任私に行くんだから!もう最悪だったよー!」
面白おかしく雑談するァコの話を酒の肴に笑いながら聞いていた。
そんな無能もいるのかと。でも俺みたいなやつだなって思ってそいつに親近感が湧いた。
さて、気分転換したあとは、配信だ。
「実は、最近、ある男性芸能人Kさんが、一般女性と不倫しているんです!!!」
俺はある裏ルートで調べあげた、一つの不倫事件について、取り上げることにした。
まさかこれが色々な波乱を呼ぶことを、この時の俺は知る由もなかった。
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