第23話福咲が丘花火大会2

露店の設営を終えた俺たちは、一旦家に戻って着替えてから、乃木珈琲の店の前で集まって、三人で会場の桜晴神社へ行くことにした。


「俺が一番か…」

着替えを終え、一番に外に出てきたのは俺だった。

まあ、女性陣は浴衣に着替えるって言ってたし、時間かかるんだろう。俺はといえば、普通のTシャツ1枚にジーパンと、普段とさして変わらない風貌だった。


「お待たせー」

しばらくして、後ろから声が掛けられた。

声的には多分、さくらさんだろう。

振り返ると予想通り、浴衣姿の桜さんがいた。


「どう?似合ってる??似合ってるよね。よし」

自慢そうな雰囲気のさくらさんは、本人が言うように浴衣がよく似合っていた。淡い桃色の浴衣で、濃いピンク色の桜の模様が所々にあしらわれている。


「うん、似合ってると思うよ」

俺がそう言うと、さくらさんは少し顔を赤くして言う。


「お、おー、なんか言われたら照れるかも…」


「さっきまで自信満々だったのに」


「そ、それはそうなんだけど、なんか…改めて言われたら照れちゃったって言うか…」

さくらさんは珍しく、もじもじと落ち着かない様子を見せた。

そうこうしているうちに、着替えを終えた翔子さんが勝手口から出てきた。

すぐに翔子さんが出てきた事に気づいたさくらさんが翔子さんに駆け寄って飛び付いた。


「翔子ちゃん!すっごく似合ってるよ!」

翔子さんは少し照れくさそうにしている。

そして、こちらに視線を向け、「あの!」と声をかけてきた。


「どうしたの?」


「いや、その…翼くんはどうですか?」

翔子さんがそう言うと、さくらさんが言った。


「"翼くん"ねぇ〜」


「い、いや…うう‥」

さくらさんに冷やかされ、翔子さんは顔を赤くして俯いてしまった。


「ちょっとごめん、桜木くん1回中に戻って待っててくれない?」

さくらさんがそんな事を言ってきた。


「え、いや別に、なにか話があるなら俺も聞くけど…」


「駄目。男子禁制です」

さくらさんはジト目でそう言った。


「まあ…分かったよ」

俺は仕方なく家の中に戻るのだった…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

さくら色フェイトフル・トリップ 真城しろ @mashiro-shiro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ